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大動脈弁形成術を理解し,弁温存を目指す!

大動脈弁形成術のすべて

メカニズムを識る・弁温存を目指す

カバー写真
  • 編集:國原 孝(心臓血管研究所付属病院外科部長)
  • 編集 高梨秀一郎(榊原記念病院外科主任部長)
  • B5判・166頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2341-7
  • 2015年11月13日発行
定価 9,350 円 (本体 8,500円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

本邦ではまだまだ大動脈弁形成術が普及していない.これは本術式に対する経験や知識不足によるものではないだろうか?そんな思いから本術式の理解を深め,手術成績向上のため,心臓血管外科医はもちろんのこと,循環器内科医,心臓麻酔医,臨床工学技士,手術室看護師の皆さんにも読んでいただけるよう,大動脈弁の解剖や病態生理から実際の方法や成績までを解説.その後で実臨床で苦慮すると考えられる症例を徹底解説することで,より理解を深められるよう工夫した.今後,大動脈弁形成術の理解度が上がり,普及,発展していけば手術適応が拡がり,今まで弁置換になっていたケースでも適応可能になるのではないだろうか.“負担を減らす”という大きな福音を患者さんにもたらすための1冊である.
☆図版36点,表組11点,カラー写真123点,モノクロ写真70点
序文
 2012年の日本胸部外科学会の統計によると,我が国の1年間の単独僧帽弁手術中僧帽弁形成術は66%も行われたのに対し,大動脈弁のそれは4%に過ぎなかった.非解離性の単独大動脈基部手術においても,大動脈弁形成術を施したのは23%だけであった.大動脈弁閉鎖不全症だけに限ったわれわれ独自のアンケートにおいても,両者はそれぞれ8 %,30%に過ぎなかった.基部置換を要する症例は拡張病変が大多数と思われ,それに伴う大動脈弁逆流症は弁形成術の良い適応であると推定されるにもかかわらずである.臨床の第一線で活躍している外科医の中にも,温存できそうな弁を置換せざるを得ず,忸怩たる思いをしている者が少なくないのではないだろうか? なぜ僧帽弁と大動脈弁はこうも違うのだろうか?
 そもそも大動脈弁形成術は決して古い術式ではない.1970年代にはすでに一部の外科医によってしきりに試みられてはいたが,その遠隔成績は惨憺たるもので,その後も弁置換術を上回るような成績はしばらく見受けられなかった.しかし1990年代に入り基部を含めた大動脈弁形成術の成績が見直され,2000年代に入り,大動脈弁の形態を客観的に評価する方法が提唱されて以来,大動脈弁形成術が標準化された再現可能な術式と認識されるようになり,近年急速に広まりつつあるのが現状である.
 しかし前述のように,本邦で大動脈弁形成術が普及していないのは,大動脈弁形成術に対する我が国の外科医の経験・知識不足があるといっても過言ではないだろう.また,循環器内科医にとっても,この手術に対する理解度が増せば,手術適応がどんどん拡がり,弁尖の変性や弁輪の拡張が生じる前の早い段階で外科医に紹介されれば,形成の精度が増し,好循環に入っていくはずである.
 大動脈弁形成術が本邦でも普及,発展していき,今まで弁置換になっていたと思われるケースでも形成が可能になれば,患者にとっても大きな福音であると思われ,これが本書企画の趣旨である.
 本書は2013年12月に発足したAortic Valve Academyのメンバーを中心に分担執筆をお願いしているが,手術成績向上のためには大動脈弁の解剖,病態生理,診断は必須であり,循環器内科のエキスパートの先生にも執筆をお願いしている.主な読者対象は心臓血管外科医,循環器内科医であるが,心臓麻酔医,研修医,臨床工学技士,手術室看護師の皆さんにも読んでいただけるよう,できるだけ図を多用したわかりやすい内容を目指したつもりである.これから大動脈弁形成術をスタートさせる心臓外科チームにとって,本書が座右の書になれば,何よりの喜びである.

2015年11月吉日
心臓血管研究所付属病院 國原  孝
榊原記念病院 高梨秀一郎
第I章総論
 1.大動脈弁の解剖,形態学的特徴
 2.大動脈弁のエコー計測
 3.大動脈弁のCT 計測
 4.大動脈弁形成術の適応と禁忌
 [O]valve in valve 時代における大動脈弁形成術の意義
第II章各論
 1.大動脈弁形成術の変遷,方法,成績
  a.2 尖弁
  【Column】川副浩平
  【Column】Hans-Hinrich Sievers
  [O]2尖弁の3尖弁化
  b.3尖弁
  【Column】Gebrine El Khoury
  c.その他-1尖弁と4尖弁-
  [O]大動脈弁形成術におけるMICSの限界と可能性
 2.reimplantation 法の変遷,方法,成績
  【Column】Tirone E. David
 3.remodeling法の変遷,方法,成績
  【Column】Magdi Habib Yacoub
  [O]reimplantation法とremodeling法の比較,実験
 4.annuloplastyの種類,成績
  【Column】Hans Joachim Schäfers
  【Column】Emmanuel Lansac
  [O]その他の大動脈弁温存基部置換術-Florida sleeve手術-
  【Column】D. Craig Miller
  [O]Valsalva graftの功罪
  【Column】Ruggero De Paulis
 5.connective tissue disease に対する弁形成術- vs. 弁置換,基部置換-
  [O]高齢者における大動脈弁形成術の意義
 6.急性A 型大動脈解離に対する弁温存基部置換術
 7.小児に対する弁形成術
  【Column】Axel Haverich
  [O]若年者における大動脈弁形成術の意義
 8.大動脈弁狭窄症に対する自己心膜を用いた大動脈弁再建術-尾崎法-
  [O]自己心膜弁尖の形状の工夫
第III章症例検討-この症例ならどうする?-
 1.geometric heightが低い症例をどうするか?
 2.狭窄のある2 尖弁をどうするか?
 3.Valsalva洞のborderline dilatationに対してどう対処すべきか?
 4.perforation,fenestrationにどう対処するか?
  【Column】伊藤 翼
 5.複合弁膜症における中等度大動脈弁逆流にどう対処するか?
 6.partial remodelingはどのようなときに可能か?
 7.Valsalva洞動脈瘤破裂に伴う大動脈弁逆流に対する弁形成術
 8.心室中隔欠損に伴う大動脈弁逆流に対する弁形成術
 9.感染性心内膜炎に伴う大動脈弁逆流に対する弁形成術
 10.外傷性大動脈弁逆流に対する弁形成術
 11.allograftの大動脈弁逆流にどう対処するか?
おわりに
 循環器内科医が大動脈弁形成術に期待すること
索引

[O]:ONE POINT ADVICE