エキスパートは,リウマチ・膠原病治療薬をこう処方する!基本から,添付文書だけではわからない「さじ加減」まで
リウマチ・膠原病治療薬ハンドブック
エキスパートが教える極意
内容
序文
主要目次
リウマチ・膠原病の治療薬では,近年のバイオテクノロジーの発展により登場した分子標的薬とともに,50年以上前に開発された薬剤である副腎皮質ステロイドやシクロホスファミド,アザチオプリン,メトトレキサート,サラゾスルファピリジン,ヒドロキシクロロキンなども未だ重要な位置を占めており,新旧の薬剤が混在している.従って,新しい薬剤の情報を把握していくだけではなく,長年にわたり使用されてきた薬剤についても,蓄積された使用法や安全性について知識を整理していくことが望まれている.しかし,これら新旧の薬剤について,添付文書だけでは伝わりにくい実際の使用方法について学べる書物は少なかった.そこで,本書は,薬剤の基礎的な作用や臨床試験の結果だけではなく,薬剤使用開始時に必要な事項からインフォームドコンセント,薬剤の増減の仕方など,実臨床で必要な知識が得られることを目的に作られた.例えば,メトトレキサートは関節リウマチにおける主要な薬剤ではあるものの,患者背景や処方量の設定には十分な注意が必要な薬剤であるほか,ブシラミンでは添付文書通りの使用量で用いることは実臨床ではほとんどないなど,実際の処方ではさまざまなピットフォールが存在している.また,薬剤使用に際してのインフォームドコンセントに関しても専門家がどのように行っているか,これまで触れる機会は少なかった.そこで,本書では,TNF製剤では,副作用も似ていることから一つの項にすることもできたが,今回は各薬剤別とし,著者ごとのインフォームドコンセントにおける工夫や要点が伝わるようにしている.
また,本書はリウマチ・膠原病で用いられる薬剤の解説書だが,主に免疫療法に絞った内容となっている.実際には免疫療法以外に,抗血栓療法や感染症対策としてST合剤の内服や潜在性結核の治療を行う場合,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やエンドセリン受容体拮抗薬,PDE5阻害薬などの血管拡張薬を使用すべき病態もある.さらに将来的には抗線維化薬などの使用も行われるかもしれない.このように非免疫療法はもう一つの柱としてリウマチ・膠原病 治療では用いられているが,本書では触れることができなかった.腎機能別の薬剤投与量一覧や図表の使用なども今後の課題としたい.
副腎皮質ステロイド開発の一方で,関節リウマチへ効果が報告されながらも20年近くその評価が遅れたメトトレキサートやサラゾスルファピリジンの歴史は,今ある薬剤に精通し,上手に使用していくことの重要性を示している.本書が,新旧の薬剤が混在しているリウマチ・膠原病治療薬を,効果および安全性,医療経済の観点から,またさまざまな患者背景に応じて適切に使用していくための一助となることを期待する.
2018年4月吉日
聖マリアンナ医科大学内科学(リウマチ・膠原病・アレルギー内科)
川畑 仁人
1.リウマチ・膠原病治療総論
2.患者背景に応じた処方上の注意点
3.服薬・注射指導〜抜糸時・周術期,妊娠希望時・妊婦・授乳,ワクチン接種時の注意点〜
II章.添付文書及びガイドラインに基づく薬剤と疾患の対応表
III章.各論
A.合成抗リウマチ薬(sDMARDs)
1)従来型抗リウマチ薬(csDMARDs)
1.メトトレキサート
2.サラゾスルファピリジン
3.ブシラミン
4.イグラチモド
5.レフルノミド
2)分子標的型抗リウマチ薬(tsDMARDs)
1.トファシチニブ
2.バリシチニブ
B.生物学的製剤
1)TNF 阻害薬
1.インフリキシマブ
2.エタネルセプト
3.アダリムマブ
4.ゴリムマブ
5.セルトリズマブ ペゴル
2)IL-6阻害薬
1.トシリズマブ
2.サリルマブ
3)T細胞選択的共刺激調節剤
1.アバタセプト
4)抗CD20抗体
1.リツキシマブ
5)抗BLyS抗体
1.ベリムマブ
6)抗RANKL抗体
1.デノスマブ
C.免疫抑制薬
1)アルキル化剤
1.シクロホスファミド
2)抗生物質
1.シクロスポリン
2.タクロリムス
3)代謝拮抗薬
1.アザチオプリン
2.ミコフェノール酸モフェチル
3.ミゾリビン
D.ヒドロキシクロロキン
E.グルココルチコイド
F.非ステロイド性抗炎症薬
G.小児リウマチ性疾患における薬剤
■索引