B型肝炎診療の最新知見から研究のフロンティアまで徹底解説
Hepatology Practice 1
B型肝炎の診療を極める(電子版のみ)
基本から最前線まで
内容
序文
主要目次
☆図版108点,表組38点,モノクロ写真8点
【Hepatology Practiceシリーズの概要】
10年後の肝臓病学を見据えて刊行した全5巻のシリーズ.消化器病学を学ぶ若手の医師,研究者が,肝臓病診療の現況とともに,その基盤となる研究成果から将来の展望まで見渡せるよう,ディベート,フロンティア,レクチャーなど様々な切り口から解説した.肝臓病の診療・研究の現状・展望を理解するのに必携のテキスト.
B型肝炎ウイルスが発見されて50年が経過しようとしている.この間,B型肝炎の複雑な病態が解明され検査法や治療法が進歩した.B型肝炎の治療を考えるうえで重要なことは,現状ではどの抗ウイルス薬を用いてもB型肝炎ウイルスを完全に駆除できないことである.このため,治療目標はウイルスの活動性を低下させることとなる.実際に,多くの症例では自然経過や治療により非活動性キャリアとなり肝炎は鎮静化する.しかし,これらの経過は必ずしもわれわれが完全にコントロールできるものではなく,肝発癌の抑止も未だ十分とは言えない.
B型肝炎の診療を適切に行うにはその複雑な病態を理解する必要がある.しかし,その複雑さゆえに敬遠されがちな領域でもある.これまでは専門家に任せておけばよい領域でもあったが,de novo B型肝炎がクローズアップされるとほぼすべての診療科が関連する領域ともなった.B型肝炎と向き合うといろいろな疑問が浮かんでくる.例えば,HBs抗原が消失してもB型肝炎ウイルスが完全に排除されないのはなぜなのか.ウイルス活動性の低下は何を意味するのか,また,これを正確に評価するにはどうしたらよいのか.さらには,B型肝炎はどこまで落ち着いても発癌と縁が切れないのはなぜかなどである.臨床家としてB型肝炎を理解するためには,これらの疑問を解決しながら診療を行うことが重要と考えられる.
数々の問題は残されているが,B型肝炎の抗ウイルス療法が大きく進歩したことも事実である.核酸アナログ製剤を用いることにより活動性の肝炎を鎮静化させ,これを長期に維持することが可能となった.一方ペグインターフェロンは,その抗ウイルス効果に加え宿主の免疫を賦活する作用により,drug freeを目指す治療薬として注目されている.現在は,この2種類の抗ウイルス薬をいかに使い分けるかがB型肝炎治療の要点となっている.
本書はB型肝炎の診療を極めることを目標に作成された.このため,B型肝炎の診療を基礎と臨床の両面から深く掘り下げ,一歩踏み込んだ内容とした.さらに,項目分けは臨床に則した形で行い,レクチャーやフロンティアの項目を加えることにより,より良い理解を追求した.国内のトップクラスの研究者や臨床家に執筆を依頼した本書は,B型肝炎診療の深さを理解しこれを極めるために役立つことを確信している.
平成25年9月
田中榮司
1.HBV遺伝子と関連抗原
2.HBVの複製とcccDNA
3.HBV genotype
4.B型肝炎の感染経路と対策
5.HBV感染症のインパクト
Lecture B型肝炎ウイルス発見の歴史
II.診断編
1.ウイルスマーカーとその意義
2.HBV感染症の病態と診断
A一過性感染
B持続感染
3.B型肝炎の病理
Lecture HBe抗原のセロコンバージョン
III.治療編
1.治療の基本方針
A急性肝炎・劇症肝炎
B慢性肝炎
C肝硬変
D無症候性キャリア
Frontier HBs抗原消失を目指すこと
2.抗ウイルス薬による治療
Aインターフェロン治療
B核酸アナログ製剤による治療
Cシークエンシャル療法
Lecture核酸アナログ製剤の継続と中止
3.肝移植の適応- HBV関連慢性肝不全の適応と成績
4.再活性化
A再活性化の病態とその対策
B化学療法時の再活性化
C免疫抑制療法時の再活性化
Lectureグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)感受性領域
5.肝発癌リスクの評価
6.日常生活と食事
Frontier新しい治療薬
IV.B型肝炎を理解するための基礎研究
1.免疫応答と持続感染
2.HBV感染と肝発癌
3.HBVのゲノミクス
4.HBVの感染実験系
Lecture HBワクチンの歴史と今後の展望
付録
1.B型肝炎診療で用いられる治療薬一覧
2.HBV汚染事故対策(曝露源がHBs抗原陽性の場合)
3.母児間感染防御対策(受動・能動免疫によるHBV母子感染予防のプログラム)