腎機能保護のことを考えずに,循環器薬は選べない!
BEAM(Bunkodo Essential & Advanced Mook)
循環器の基本薬を使いこなす(電子版のみ)増補版
腎機能保護を考慮した選び方・使い方のコツ
内容
序文
主要目次
☆図版48点,表組35点,モノクロ写真2点
▽BEAM(Bunkodo Essential & Advanced Mook)編集委員会
宮地良樹(京都大学皮膚科教授)
上田裕一(名古屋大学心臓血管外科教授)
郡 義明(天理よろづ相談所病院総合診療部長)
服部隆一(市立島田市民病院院長)
人口の高齢化とともに,高血圧に罹患する頻度が増加しています.高血圧に続いて二次的に発症する心不全,虚血性心疾患,不整脈などの循環器疾患も少なくありません.また,糖尿病,高脂血症,メタボリックシンドロームなどの生活習慣病にしばしば循環器疾患が合併します.したがって,皆さんがどの科を専門に選んでも,循環器疾患に遭遇することはまれではなく,ある程度,自分で循環器の基本薬を使いこなすことが求められます.また,入院してきた方が,循環器の薬を内服していることも少なくありません.その薬と病態を理解して,場合によっては,薬の量や薬そのものを変更することが必要となります.時には,中止しなければならないこともあり得ます.これらのことをお手伝いすることが本書の目的です.
本書では,循環器領域の主要な薬剤を取り上げ,その基本的使い方が記載されています.循環器疾患では,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を合併していることが少なくありません.血清クレアチニンを測定すると,自動的に推算GFR(eGFR)まで報告されるようになり,以前より早くCKDの存在に気付く頻度が高くなりました.腎機能低下→薬剤の血中濃度上昇→副作用発現を避けるため,また,CKDを悪化させないためにも,腎臓の機能を意識した薬剤の使い方が必要です.それを理解していただくために,「腎保護を意識した循環器薬の使い方」という項を設けました.そして,取り上げた薬剤と腎不全における使用法を記載した一覧表を巻末に配置しました.CKDにおいては,薬剤の主排泄経路により,用いる薬剤の種類,薬剤の量が大きく変わります.このことを十分に理解して,巻末の一覧表を参照しながら,薬剤を選択し,薬剤量を決定してください.
各執筆者の原稿すべてに眼を通し,わかりにくい箇所については逐一修正をお願いしました.循環器の薬は恐くて使うのをためらってしまう方もいるかもしれません.そのような方でも,理解できる内容になっています.是非とも手にとって読んでいただき,循環器の薬を抵抗なく使えることができるようになっていただければ,編者として望外の喜びです.
平成22年5月
増補版によせて
2010年5月に本書が出版されてから,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)と利尿薬,またはARBとスタチンとの合剤が次々と現れ,さらに従来のワルファリンと異なる新しい拮凝固薬が利用できるようになりました.この機会に,これらの薬剤を追加するとともに,各項目に関しても各執筆者に見直しをお願いしました.
平成25年2月
市立島田市民病院 病院事業管理者
服部隆一
1.降圧薬の選び方・使い方
2.心不全治療薬の選び方・使い方
レクチャー 腎保護を意識した循環器薬の使い方
ミニレクチャー 循環器領域におけるスタチンの位置づけ
II.各論/循環器の基本薬
1. レニン−アンジオテンシン系(RAS)阻害薬〜アンジオテンシン変換酵素(ACE)
阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),直接的レニン阻害薬〜
2.カルシウム拮抗薬
3.β遮断薬,α遮断薬,αβ遮断薬
4.利尿薬
5.硝酸薬,ニコランジル,トラピジル,塩酸ジラゼブ
6.抗不整脈薬(ジギタリスを含む)
7.強心薬とその他の心不全治療薬
8.抗凝固薬,血栓溶解薬,抗血小板薬
9.末梢血管拡張薬,閉塞性動脈硬化症の治療薬
III.降圧薬の合剤
付録:Further Readings
付録:循環器治療薬一覧
索引
● Memo
PDE阻害薬
BNP
GFRの実測とCCr
AngII受容体の2つのサブタイプ
インバースアゴニスト
左室リモデリング
アルドステロンブレイクスルー
アルドステロン拮抗薬
冠攣縮性狭心症
β遮断薬の少量投与とは
高血圧治療の第1選択薬から外されたα遮断薬
頻度依存性の遮断効果とは
ソタコールの左室機能抑制に注意
M2遮断作用の副作用に注意
ジギタリス中毒時の注意
Brugada 症候群と心房細動
リドカインやメキシチールは漫然と使わない
抗不整脈薬がかえって予後を悪化させた
リエントリーの遮断
アデホスⓇの使い方
先天性QT延長症候群のTorsades de pointes
ピモベンダンとβ遮断薬の併用
●コラム
侵襲的処置の際の中止のタイミング(抗凝固薬・血栓溶解薬・抗血小板薬)