「ピコ秒レーザーって何?」「何に効くの?」「どうやって使うの?」素朴な疑問すべてに葛西先生が答えます!
ピコ秒レーザー治療入門
美容皮膚科医・形成外科医のために
内容
序文
主要目次
筆者が関西医科大学形成外科の小川豊教授の下で,日本で初めて輸入された量産型パルス色素レーザーの仕事をさせていただくことになったのが1989年頃のことですから,もう30年ほど前のことです.
それまで治療法がなかった赤アザの患者さんが治療できるようになり,大きな喜びを味わうことができました.出張先の和歌山赤十字病院の手術室に置いてあった炭酸ガスレーザーを使わせていただいて,これが皮膚科・形成外科でも非常に有用であることに気付いたのもこの頃でした.1990年に米国からQスイッチレーザーで刺青が取れたという論文が出て大きな衝撃を受けると同時に,「これは太田母斑に使える」と確信して,大阪市にレーザークリニックを開業したのが1992年です.この頃は,本当の意味で革命的なレーザーが次々と現れました.皮膚科・形成外科領域のレーザーの4大発明は,炭酸ガスレーザー,パルス色素レーザー,Qスイッチレーザー,そして脱毛レーザーであることは現在までずっと変わっていません.
その後,たくさんの医師や業者がこの領域に参入してきました.より多くの患者さんが,このすばらしい新技術の恩恵を受けることができるようになったのは,誠に喜ばしいことです.私も「シミの治療」(文光堂,初版2006,第2版2015),「炭酸ガスレーザー治療入門」(文光堂,2008),「Qスイッチルビーレーザー治療入門」(文光堂,2008)などの出版を通じて,レーザーの普及に多少なりとも貢献できたと自負しております.しかし,2000年以降,最近の15年間は,レーザーの改良や普及は進んだものの,真に革命的な新技術は一つも実用化されず,業者・医師・患者を巻き込んだ,商業主義的な競争ばかりが激化しているような感じがします.業者は多くのレーザーを売り,医師は多くの患者を治療して売上を伸ばし,患者はできるだけ多くの欲望を満たす,まるで野生の王国のような弱肉強食の競争社会になってしまいました.日本レーザー史上最悪の「レーザートーニング事件」が発生したのも,こうした背景が原因となっています.
2013年に発売されたピコ秒レーザーは,この領域に久々に登場したまったく新しい新技術です.本当は,まだ教科書を出版するほど理論的・技術的に完成したところまでは来ていないのですが,この夢の新技術をとにかくできるだけ早く,正しい形で皆様にお届けするのが私の使命であると考え,本書を執筆いたしました.読者の皆様におかれましては,本書の内容はあくまでも現時点での情報と割り切ってお読み下さい.最後に,タイトなスケジュールの中で本書を制作・出版してくれた文光堂の皆様に深謝いたします.
2017年10月
葛西健一郎
1.ピコ秒レーザーの歴史と背景
2.ピコ秒レーザーの理論
3.現在用いられている機械の種類と特徴
4.今後の展望
II ピコ秒レーザーによる刺青治療
1.治療理論
2.麻 酔
3.照射方法と術後処置
4.複数回の繰り返し照射
5.合併症とその対処
6.症例集
7.外傷性刺青
8.アートメイクの除去
III ピコ秒レーザーによるシミ・アザ治療
1.老人性色素斑・ADM
2.太田母斑
3.異所性蒙古斑
4.先天性色素性母斑
IV ピコ秒レーザーによる美容皮膚治療(ノーダウンタイム)
1.本治療の適応(効果の予測と患者への説明)
2.治療の実際
① pico-Alex(PicoSureR)による美容皮膚治療
② pico-Nd:YAG(PicoWayR)による美容皮膚治療
3.合併症とその対処
4.症例集
索 引
コメント
①用語について
②レーザーのパラメーター
③真皮メラノサイトーシスと刺青は治癒機序が異なる?
④濃い刺青は初めが薄くなりにくい
⑤ピコ秒レーザーはPIHが少ないというのはウソ
⑥外傷性色素沈着は肝斑と同じでレーザー禁忌である
⑦真皮メラノサイトーシスに対してピコ秒レーザーはnano-Rubyを上回ることができるか?
⑧それでも最強!ナノ秒Qスイッチルビーレーザー
⑨ピコトーニングは絶対危険!
⑩PicoSureRのfocusハンドピースとPicoWayRのResolveハンドピースはまったく異なる
⑪ピコ秒レーザーは1ヵ月以上あけないとレーザートーニングと同様の危険が増大する
コラム
①部品課金モデル
②これでピコ秒レーザーと呼べるのか?
③口唇アートメイクに苦労した例
④肝斑・PIHにレーザーが禁忌の理由
⑤ピコ秒レーザーによる老人性色素斑治療はナノ秒Qスイッチルビーレーザーより良いか?
⑥老人性色素斑とADMに筆者はナノ秒Qスイッチルビーレーザーを用いるが,ピコ秒レーザーも有力である
⑦先天性色素性母斑の難しさ
⑧レーザーは医師が当てるべきか,看護師や一般職員に当てさせてもよいかという問題について