インスリン療法の実際を網羅した大好評のポケットマニュアル!
インスリン療法マニュアル第5版
内容
序文
主要目次
本書「インスリン療法マニュアル」は平成4年に初版が発行され,約27年の長きにわたって,インスリン療法の基礎を学ぶマニュアルとして多くの医師,医療関係者に愛読されてきた.第4版が発行された平成20年から11年の時が経ち,インスリン療法も大きく様変わりした.例えば速効型より超速効型,中間型より持効型溶解,二相性より配合溶解インスリンを使用することで,より生理的なインスリン分泌に近いインスリン療法が可能になった.経口血糖降下薬に基礎インスリンを併用するいわゆるbasalsupported oral therapy(BOT)が普及し,また注入器等のデバイスが改良されたことによって,小児から高齢者まで広く,より安全かつ簡便にインスリン療法を受けることができるようになった.さらに最近では,持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion;CSII)や持続血糖モニター(リアルタイムcontinuous glucose monitoring;CGM),flash glucose monitoring(FGM)など,インスリン療法に関連する機器等にも大きな進歩があった.第5版の編集にあたっては,これらを踏まえて内容を新しいものにした.カーボカウントやsensor augmented pump(SAP)療法などは,専門の成書による補足が必要になると思われるが,それらの適応や基本的な考え方については初心者にも理解しやすいように配慮した.このような点からも「インスリン療法マニュアル第5版」は,とくにこれからインスリン療法の基礎を学びたい人,糖尿病の最新かつ適切なインスリン療法を実施したい人にとって,広くお役立ていただけると確信する.
初版より本書の編集をされてきた,前富山大学第一内科教授・病院長の小林正先生が平成30年末に逝去された.第5版の編集も小林先生の強い御意志により開始され,富山大学第一内科のスタッフおよびOBを中心に執筆がなされた.小林先生より薄井と戸邉が編集を引き継いだが,第5版発行に対する故人の遺志も併せて引き継いだつもりである.最後に,大変な編集作業に最後までご尽力いただいた,文光堂の佐藤真二氏に深く感謝申し上げる.
令和元年5月
獨協医科大学内分泌代謝内科教授 薄井 勲
富山大学第一内科教授 戸邉一之
A.インスリン療法とその目標
B.血糖コントロールの基準
第2章 インスリン療法の適応と自己管理
A.インスリン療法の絶対的適応
1 1型糖尿病
2 糖尿病昏睡(糖尿病ケトアシドーシス,高浸透圧高血糖状態,乳酸アシドーシス)
3 重症感染症,外傷,中等度以上の外科手術などの急性ストレス時
4 妊娠中,妊娠後および妊娠予定者
5 経静脈栄養時の血糖コントロール
6 経口血糖降下薬の禁忌時
7 重度の肝,腎障害合併時
8 膵疾患
B.インスリン療法の相対的適応
C.インスリン療法における自己管理
1 理想的な自己管理
2 チーム医療の重要性
3 患者教育の重要性
第3章 インスリン製剤の分類
A.インスリン製剤の種類と作用動態
1 持効型溶解インスリンアナログ製剤
2 超速効型インスリンアナログ製剤
3 速効型ヒトインスリン製剤
4 配合溶解インスリンアナログ製剤
5 二相性/混合型インスリンアナログ製剤
6 混合型ヒトインスリン製剤
7 中間型ヒトインスリン製剤
B.インスリン製剤の剤型と特徴
C.インスリンペン型注入器用の注射針
1 インスリンペン型注入器用の注射針
2 注射針を使用する際の注意点
D.インスリン製剤に関する留意点
1 製剤の保存
2 皮下からの吸収に影響を与える因子
3 インスリンの吸着
第4章 インスリン療法の指導
A.自己注射指導のポイント
1 インスリン療法の適応
2 入院で指導するか,外来で指導するか
3 注射パターンの選び方
B.患者の指導とサポート
1 事前の説明と説明内容
2 注射する部位
3 インスリン注射の実際
4 インスリン注射の手順
5 インスリン注射管理上の注意点
6 低血糖への対応
7 血糖自己測定(SMBG)
8 インスリン療法の継続管理
第5章 インスリン注射の選択と実際
A.インスリン注射の選択
B.注射回数の多い注射法(強化インスリン療法を含む)
1 目 的
2 適 応
3 初回注射量と分割,その後の調節
4 強化インスリン療法の主な注射パターン
超速効型毎食前(1日3回)+持効型溶解就寝前(1日1回)
5 強化インスリン療法に準じた主な頻回注射パターン
① 超速効型(あるいは速効型)毎食前(1日3回)
② 配合溶解朝夕食前(1日2回)+超速効型昼食前(1日1回)
③ 超速効型朝昼食前(1日2回)+配合溶解夕食前(1日1回)
C.注射回数の少ない簡便なインスリン療法
1 適 応
2 初回注射量と分割,その後の調節
3 配合溶解インスリン(あるいは混合型インスリン)を用いた簡便な注射パターン
①1日2回法
②1日1回法
4 持効型溶解インスリンを用いた簡便な注射パターン(1日1回法)
D.血糖自己測定(SMBG)
1 簡易血糖測定器と採血器(ランセット)
2 測定の方法,手順
3 基本的な測定のタイミング
4 追加測定の必要なタイミング
5 測定の目安,おおむね順調と考えるひとつの目安
6 食後血糖の考え方
7 測定値の評価と使い方
第6章 持続皮下インスリン注入療法(CSII)
A.CSIIの有用性と適応
1 持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion;CSII)とは
2 CSIIの有用性
3 CSIIの適応
4 CSII導入の条件
5 CSIIの導入法
6 CGM(持続血糖モニター)
7 SAP療法
B.主要製品と主な特徴
C.一般的な使用方法
1 CSIIでの血糖管理目標
2 注入量の決定
3 追加注入のタイミング
4 使用インスリン製剤
5 その他
D.注意すべき有害事象と解決方法
1 ポンプ・チューブ・針のシステム不良,操作ミスなどによるトラブル
2 皮膚や皮下のトラブル
3 低血糖
4 高血糖,ケトーシス,ケトアシドーシス
第7章 さまざまなケースにおけるインスリン療法
A.糖尿病昏睡
1 糖尿病に関連して意識障害,昏睡をきたす病態
2 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖状態(HHS)
3 低血糖症
4 乳酸アシドーシス
B.合併症を有する患者
1 重度の血管合併症を有する場合の血糖コントロールの原則
2 糖尿病網膜症
3 糖尿病腎症
4 糖尿病神経障害
5 肝硬変
C.シックデイ
1 シックデイとは
2 患者教育
3 シックデイのインスリン注射調整
4 シックデイの経口薬の調整
5 シックデイで入院加療の適応
D.妊 娠
1 糖尿病合併妊娠における問題点
2 計画妊娠の必要性
3 妊娠中の管理
4 妊娠糖尿病
E.小児糖尿病
1 1型糖尿病
2 2型糖尿病
F.不安定型糖尿病(1型糖尿病)
G.周術期およびICUでのインスリン使用法
1 術前の血糖コントロール(術前経口摂取可能な場合)
2 全身麻酔で大手術の場合やICUでの管理
3 術後の血糖コントロール
H.ステロイド使用糖尿病
1 ステロイド(グルココルチコイド)と糖代謝の留意点
2 食事療法・内服治療中の糖尿病患者の場合
3 非糖尿病患者における発症の場合
4 インスリン投与中の糖尿病患者の場合
5 ステロイドパルス療法時
I.海外旅行時のインスリン療法
1 海外旅行のための準備・持ち物
2 海外旅行時のインスリン注射について
3 海外旅行時のインスリン調節例
J.経口薬からの切り替え(2型糖尿病)
1 経口薬からの切り替え時の注意
2 切り替えの実際
K.経口薬との併用(2型糖尿病)
1 各種経口薬とインスリンの併用の実際
第8章 低血糖への対応と心得ておきたい副作用
A.低血糖
1 良好な血糖コントロールとは
2 低血糖の定義および原因
3 低血糖時の症状
4 低血糖の診断
5 検 査
6 治 療
7 低血糖の予防
B.インスリンの副作用
1 インスリン注射部位における皮膚症状
2 抗インスリン抗体の出現に伴う異常
3 全身性副作用
4 インスリン浮腫・治療後有痛性神経障害・糖尿病網膜症の悪化など
第9章 GLP-1受容体作動薬の特徴と使用法
A.GLP-1受容体作動薬
1 目 的
2 適 応
3 治療の実際
付 録
糖尿病ならびに生活習慣病関連の診断基準,治療指針,臨床検査基準値等
●空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分と判定基準
●血糖コントロールの指標と評価
●高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)
●代表的な血糖コントロール関連臨床検査
●代表的な膵臓関連検査
●代表的な生化学検査
●代表的な血清脂質関連検査
●成人における血圧値の分類(mmHg)
●診察室血圧に基づいた心血管病リスク層別化
●メタボリックシンドロームの診断基準
●動脈硬化性疾患予防ガイドライン(日本動脈硬化学会2017年)
インスリン製剤に関連した在宅自己注射の保険システム
●院内処方の場合
●院外処方の場合
富山大学第一内科のインスリンポンプ(CSII)初期設定用チェックリスト
インスリン療法関連の主要インターネットサイト
索 引