成人先天性心疾患診療体制のあり方を示す!
成人先天性心疾患パーフェクトガイド(電子版のみ)
内容
序文
主要目次
☆図版57点,カラー写真102点,モノクロ写真175点
先天性心疾患は稀な疾患であり,自分には関係がないと考えている医師が多いのではないでしょうか.しかし,成人先天性心疾患はもはや稀な病気ではありません.先天性心疾患の頻度は100人に約1人と言われています.複雑心奇形に対する外科治療の成績が格段に向上したことによって,続々と成人を迎えるようになってきたのです. 現在, 国内の先天性心疾患患者の半分以上の約50万人が成人となっています.今後も毎年1万人程度のペースで増加していくことが予想されています.この膨大な数の患者を小児循環器科医,小児心臓外科医だけでとても対応しきれるものではありません.循環器内科医への受け渡しが急務となっています.
そして,成人先天性心疾患は全く新たな領域でもあります.その取り組みは小児期とは大きく異なります. 小児期には心臓ポンプ機能を中心に対応するだけで良かったものが,成人期にはそのポンプ機能にも問題が発生する上に全身臓器の機能評価と管理を併せて行う必要があります.今まで小児循環器科医,小児心臓外科医が築き上げた優れた治療成績を成人期になっても維持できるのか,そのためにはどのような管理体制が望ましいのか,課題はとても大きなものがあります.
第一歩として多くの循環器内科医に,先天性心疾患に興味を持ってもらう必要があります.本書は先天性心疾患の解剖と血行動態,そして人の名前がついた手術の特徴をわかりやすく解説し,先天性心疾患に対するアレルギーをなくすことを目的としています.
さらに,チーム医療のシステムを構築することはとても重要です.消化器内科,腎臓内科,産婦人科,精神神経科,さらに看護領域,社会保障など,多くの領域を網羅して総合的なケアを行う必要があります.チーム医療を実践するには幾多の困難がありますが,それを克服するための“明日から実践できる”ノウハウを示しているのも本書の特徴です.
本書はこのように成人先天性心疾患診療の幅広い領域を実践的にカバーできるようにとの期待を持って,パーフェクトガイドと命名しました.本書が皆様のお手元で常に活用され成人先天性心疾患の臨床診断,治療の一助になれば幸いです.
2015年9月
赤木禎治
伊藤 浩
1 これから激増する成人先天性心疾患
2 小児科から循環器内科への橋渡しの重要性と問題点
3 成人先天性心疾患の画像診断
a 経胸壁心エコー図
b 経食道心エコー図
c CT,MRI
4 成人先天性心疾患の血行動態評価─カテーテル検査─
5 チアノーゼ型先天性心疾患における多臓器不全と自然歴(非手術歴)
6 Eisenmenger症候群の管理と治療
7 成人先天性心疾患の遺伝学
II 知っておくべき手術─血行動態,画像診断,遠隔期問題,そして対策─
1 Fontan手術の歴史と遠隔期の問題,再手術
2 Fontan手術後
a 肝臓病変・代謝異常
b 消化管・蛋白漏出性胃腸症
3 Rastelli手術とは─遠隔期の問題と再手術─
4 Senning/Mustard手術とは─遠隔期の問題と再手術─
5 Jatene手術とは─遠隔期の問題と再手術─
6 Norwood手術とは─歴史と今後の問題─
7 ダブルスイッチ手術とは─適応と遠隔期の問題─
8 unifocalizationとは─適応と遠隔期の問題─
9 Fallot四徴術後─遠隔期の問題と再手術─
10 房室中隔欠損症─遠隔期の問題と再手術─
III 未治療の成人先天性心疾患の病態と治療
1 心房中隔欠損症
2 卵円孔開存症
3 心室中隔欠損症,Valsalva洞動脈瘤破裂
4 動脈管開存症
5 Ebstein病
6 修正大血管転位症
7 川崎病性冠動脈瘤
8 大動脈縮窄症
9 Marfan症候群
IV 成人先天性心疾患に対する最新の治療
1 心不全
a 薬物療法
b 運動療法・リハビリテーション
2 不整脈
a 薬物療法
b アブレーション
c デバイス治療
3 肺高血圧症
a 薬物療法
b 肺移植
V 成人先天性心疾患の妊娠・出産
1 妊娠・出産にどのように対応するか?
2 妊娠中の薬物治療のポイントと禁忌薬
3 妊娠・出産時の麻酔管理
4 避妊法と不妊治療
VI 成人先天性心疾患の全身管理
1 感染性心内膜炎
2 成人先天性心疾患と麻酔
3 精神・心理学的アプローチ
4 口腔感染管理
VII 成人先天性心疾患の診療体制と今後
1 国内における診療体制の試み
2 海外における診療体制の試み
索引