肝胆膵領域における生検診断,鑑別診断のエッセンスがこの1冊に凝縮!
非腫瘍性疾患病理アトラス
肝胆膵
内容
序文
主要目次
肝胆膵領域においては多彩な非腫瘍性疾患が知られ,近年さらに,IgG4関連疾患のような新たな疾患概念や疾患の亜型,オーバーラップの存在が明らかになってきた.また,腫瘍類似病変が多いことも肝胆膵領域の非腫瘍性疾患の特徴である.非腫瘍性疾患の病理診断は生検が基本で,肝臓においては従来盲目的針生検が施行されてきた.炎症性肝疾患の病態が解明されて生検の機会は減少したとはいえ,臨床的な鑑別診断にはなかった疾患が診断されることもあり,肝生検の重要性に変化はない.近年,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)や胆道鏡のような,内視鏡を用いた新たな検査モダリティーが登場し,胆膵領域の生検診断はターゲットが広がるとともに,検体数も増加している.もっとも実臨床では狭窄部や腫瘤形成部に対する狙撃生検が主体で,純粋な炎症性病変はいまだ適応とはなりにくいが,腫瘍との鑑別が問題となる場合には生検が行われ,組織採取が可能な穿刺針を用いることで自己免疫性膵炎の生検診断が可能な場合もある.
本アトラスは,肝胆膵領域における非腫瘍性疾患の病理診断,特に生検診断のエッセンスをわかりやすく解説することを目的として編集された.肝臓,胆道,膵臓に分けて,まず総論で正常構造,診断に有用な染色,基本的な組織像や細胞像の見方とともに,臨床的なデータの見方や組織採取法などを解説した.各論では,各臓器での代表的な疾患はもとより,稀少疾患や非定型例の病態,さらに新しい疾患概念および病態について解説し,病理診断がその後の治療方針決定に重大な影響を与える疾患についても網羅した.ご執筆いただいた先生方には,経験が乏しい若手の病理医も対象としたアトラスであることにご配慮いただき,典型的なマクロ写真,組織像を用いて,初めて経験する症例でも診断できるような解説をお願いし,特に実用性の観点から,生検診断,鑑別診断についても言及していただいた.さらに,ご専門である臨床の先生方には,ポイントとなる臨床所見や画像所見について,解説していただいた.非腫瘍性疾患の,特に生検診断においては,臨床および画像所見を踏まえた病理診断が重要であるため,本アトラスを参考に疾患の臨床像,画像所見にもぜひ慣れ親しんでいただきたい.
本アトラスが,肝胆膵領域における非腫瘍性疾患の病理診断に理解を深めていただくきっかけとな
り,さらには日常診断の一助となることを願っている.
2023年5月
原田憲一,能登原憲司
Ⅰ.総論
A 肝臓の基礎
1 肝臓の発生と正常構造
2 組織染色と免疫染
B 臨床データの見方と肝生検の意義
C 肝病理所見と肝生検の見方
Ⅱ.各論
A 栄養障害性肝疾患
1 非アルコール性脂肪性肝疾患
2 アルコール関連肝疾患
B 免疫関連慢性肝疾患
1 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
2 自己免疫性肝炎
3 PBC+AIHのいわゆるオーバーラップ
C 急性肝炎
1 生検組織における急性肝炎の病理診断へのアプローチ
2 薬物性肝障害
3 免疫チェックポイント阻害薬による肝障害
4 急性肝炎期自己免疫性肝炎
D ウイルス性慢性肝炎・肝硬変
E 病態のオーバーラップ
F 血流異常による肝病変
G 囊胞性肝疾患
H 肝移植
I 小児肝疾患─新生児・乳児期の胆汁うっ滞性疾患─
J 代謝性・遺伝性疾患
K 全身性疾患の肝病変
〔COLUMN〕COVID-19の肝病理
第2部 胆 道
Ⅰ.総論
A 胆道の正常構造と化生性変化
B 内視鏡による胆道検査法と病理検体の採取
C 細胞診および生検組織診断
1 胆汁細胞診,擦過細胞診
2 胆管生検
Ⅱ.各論
A 胆道の発生異常
B 胆石症
C 硬化性胆管炎
1 原発性硬化性胆管炎(PSC)
2 IgG4関連硬化性胆管炎
〔COLUMN〕二次性硬化性胆管炎
D その他の胆管炎
〔COLUMN〕免疫チェックポイント阻害薬による胆管炎
〔COLUMN〕重症患者の二次性硬化性胆管炎
E 胆囊炎
F 胆囊・胆管の非腫瘍性ポリープ・隆起性病変
第3部 膵 臓
Ⅰ.総論
A 膵の正常構造
B 膵炎の組織所見
C EUS-FNAによる膵炎症性疾患の生検診断
Ⅱ.各論
A 膵形成異常
B 急性膵炎
1 急性膵炎の概念と臨床診断
2 急性膵炎の病理
〔COLUMN〕薬物性膵炎
C 慢性膵炎
1 慢性膵炎の概念と臨床診断
2 慢性膵炎の病理
〔COLUMN〕遺伝性膵炎
D 自己免疫性膵炎
1 1型自己免疫性膵炎の概念と臨床診断
2 1型自己免疫性膵炎の病理
3 2型自己免疫性膵炎
E その他の膵炎
〔COLUMN〕腫瘤形成性膵炎
F 膵過誤腫
G 非腫瘍性囊胞
H 内分泌組織の異常
索 引