痛み分野を理解するための重要キーワードとそのポイント!
痛みのScience & Practice 5
痛み診療キーポイント
内容
序文
主要目次
☆図版102点,表組43点,カラー写真16点,モノクロ写真27枚
日本では高齢化が進み,寿命を延ばすだけではなく,むしろ健康の質を高め維持する医療が求められるようになりました.国民の大半は腰痛や頭痛など,何らかの痛みを抱えて日常生活を送っていますので,痛みからの解放は医療者の重要な課題です.こうした背景から,近年,痛みの基礎研究は進歩し,新たな鎮痛薬や鎮痛機器も開発されました.そして臨床分野においても,麻酔科,ペインクリニック科だけでなく,整形外科,脳神経外科,神経内科,心療内科,リハビリ科,精神科など多くの臨床領域の医師が痛みの診療に携わるようになりました.また,医師だけでなく,製薬会社などで痛み研究に従事する研究者や,鎮痛薬の治験などのコーディネーター,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,臨床心理士など,痛み診療に関わる多くの職種の方々も増えました.しかし,麻酔科医やペインクリニック医を含め,痛みに関わる多領域の皆さんが,日進月歩の痛みの基礎から臨床まで,すべての領域に精通するのは困難です.日常の多忙な業務のなかで,痛みの基礎から臨床までのup to dateな知識を,短時間で学べる教科書があればと願う方々も多かったのではないでしょうか.
そこで,痛みの診療に必要な知識をキーポイントとして分類し概説する本書─「痛み診療キーポイント」─を企画いたしました.本書では,痛みに興味を持ち,痛み診療に携わる多領域の方々が,一読すると各内容を素早く理解できるように,専門家の皆さんにわかりやすく,コンパクトに解説してもらいました.幸い,痛みの領域でご活躍の第一線の皆様に執筆いただけたため,各項目のページ数は短いものの,図表を中心とした内容で,読者が一目で理解できる教科書に仕上がりました.
本書では,痛みの診療に必要な知識を,キーポイント別のコンパクト内容で学習できますので,日本ペインクリニック学会,日本麻酔科学会,日本整形外科学会など,各種学会の専門医試験対策にも有用な1 冊になると思います.
痛みのScience & Practiceシリーズも5冊目となりました.本書が痛みの診療や研究に携わる多くの領域の皆さんの必携の1冊となることを願っています.
2014年5月
信州大学医学部麻酔科 川真田樹人
A.基礎知識
1 痛み─痛みの理解は難しい
2 ペインマトリックス
3 痛みと情動
4 痛みと破局的思考
5 プラセボ効果
6 痛み刺激による蛋白発現
7 一塩基多型とオピオイド感受性
8 痛みの機序─痒み
9 痛みの機序─電撃痛
10 痛みの研究手法─動物モデル
11 痛みの研究手法─動物実験における痛みの評価
12 痛みの研究手法─パッチクランプ法
13 痛みの研究手法─形態学的手法
14 痛みの研究手法─ノックアウトマウス
15 痛みの研究手法─マイクロダイアライシス
16 痛みの研究手法─遺伝子解析
17 オピオイド受容体
B.末梢神経
1 痛みの受容器─熱刺激
2 痛みの受容器─機械刺激
3 痛みの受容器─化学刺激
4 プロスタグランジン
5 末梢性感作
6 Naチャネル
7 電位依存性Caチャネル
8 サブスタンスP
9 ATPチャネル
10 C線維とAδ線維
11 末梢におけるオピオイド受容体
12 神経性炎症
13 リゾホスファチジン酸
14 先天性無痛症
15 神経成長因子
16 抗NGF抗体
C.脊髄
1 脊髄後角
2 グルタミン酸受容体
3 GABA,グリシン
4 脊髄における感作
5 グリア
6 ゲートコントロール説
7 下行性疼痛調節系
8 カンナビノイド
9 先行鎮痛
10 体性痛
11 内臓痛
12 関連痛
13 Fos蛋白
14 ERK
D.脳
1 視床における侵害情報処理
2 神経可塑性
3 中枢性感作
4 PAG
5 青斑核
6 RVM
7 島皮質および前帯状回における侵害情報処理
8 一次・二次感覚野における侵害情報処理
9 前頭前野
10 運動野
11 扁桃体,側坐核
臨床編
A.診察
1 痛みの症状─痛覚過敏
2 痛みの症状─アロディニア
3 痛みの症状─しびれ感
4 痛みの評価法─VAS,NRS,VRS,FRS
5 痛みの評価法─QOL
6 頚椎疾患の診察法─神経学的所見
7 腰椎疾患の診察法─神経学的所見
8 ドラッグチャレンジテスト
9 サーモグラフィー
10 脳機能画像─fMRI
11 脳機能画像─PET
12 脳機能画像─NIRS
13 脳機能画像─MEG
14 顔面の解剖─顔面の知覚支配
15 上肢の解剖─腕神経叢
16 上肢の解剖─星状神経節
17 下肢の解剖─大腿神経
18 下肢の解剖─坐骨神経
19 下肢の解剖─閉鎖神経
20 下肢の解剖─腰神経叢
B.痛みの疾患,病態
1 痛みの分類─急性痛と慢性痛
2 侵害受容性痛
3 神経障害性痛
4 心因性疼痛
5 炎症痛
6 がん痛
7 中枢性疼痛,視床痛
8 求心路遮断痛
9 CRPS
10 帯状疱疹関連痛
11 帯状疱疹に関連した痒み
12 頭痛の分類
13 群発頭痛
14 片頭痛
15 緊張型頭痛
16 頚原性頭痛
17 脳脊髄液漏出症
18 三叉神経・自律神経性頭痛
19 特発性三叉神経痛
20 非定型顔面痛
21 顔面痙攣
22 大後頭神経三叉神経症候群
23 Ramsay-Hunt症候群
24 Tolosa-Hunt症候群
25 舌痛症
26 顎関節症
27 外傷性頚部症候群
28 肘部管症候群
29 手根管症候群
30 Barre-Lieou syndrome
31 顔面神経麻痺
32 舌咽神経痛
33 Meige syndrome
34 painful legs and moving toes syndrome
35 線維筋痛症
36 リウマチ性多発筋痛症
37 FBSS(腰椎手術後疼痛症候群)
38 腰椎椎間板症
39 腰部脊柱管狭窄症
40 頚椎・腰椎椎間板ヘルニア
41 椎間関節症
42 仙腸関節症
43 梨状筋症候群
44 上殿皮神経痛
45 非特異的腰痛
46 慢性骨盤疼痛症候群
47 会陰部痛
48 有痛性糖尿病性ニューロパチー
49 脊髄損傷後痛
50 幻肢痛
51 遷延性術後痛
52 多汗症
53 がんによる神経障害痛
54 がんによる骨転移痛
55 乳がん術後疼痛症候群
56 悪性腸腰筋症候群
57 放射線治療後の口内炎痛
58 抗腫瘍薬による神経障害痛
59 虚偽性障害─詐病
C.薬物治療
1 NSAIDs
2 アセトアミノフェン
3 オピオイド─モルヒネ
4 オピオイド─オキシコドン
5 オピオイド─フェンタニル
6 オピオイド─コデイン
7 オピオイド─ブプレノルフィン
8 オピオイド─トラマドール
9 オピオイド─タペンタドール
10 オピオイド─ペンタゾシン
11 オピオイド─メサドン
12 オピオイドスイッチング(オピオイドローテーション)
13 α2δカルシウムチャネルブロッカー
14 三環系抗うつ薬
15 SSRI
16 SNRI
17 ケタミン
18 α2作動薬
19 局所麻酔薬
20 局所麻酔薬軟膏・貼付剤
21 カプサイシン塗布剤
22 カルバマゼピン
23 メキシレチン
24 漢方薬
25 ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液
26 ステロイド(グルココルチコイド)
D.神経ブロック
1 星状神経節ブロック
2 トリガーポイントブロック
3 経静脈局所ブロック(局所静脈内ブロック)
4 胸部交感神経節ブロック
5 腰部交感神経節ブロック
6 胸腔鏡下交感神経遮断術
7 内臓神経ブロック,腹腔神経叢ブロック
8 腰内臓神経ブロック,下腸間膜神経叢ブロック
9 上下腹神経叢ブロック
10 不対神経節ブロック
11 硬膜外ブロック
12 腰神経叢ブロック(大腰筋筋溝ブロック)
13 三叉神経ブロック
14 三叉神経末梢枝ブロック
15 浅頚・深頚神経叢ブロック
16 後頭神経ブロック
17 腕神経叢ブロック
18 肩甲上ブロック
19 肩甲背神経ブロック
20 肋間神経ブロック
21 大腿神経ブロック
22 坐骨神経ブロック
23 閉鎖神経ブロック
24 神経根ブロック
25 脊髄くも膜下ブロック
26 椎間関節ブロック
27 脊髄神経後枝内側枝ブロック
28 仙腸関節ブロック
29 ボツリヌス毒素注射
30 ペインクリニックにおける超音波装置を用いた神経ブロック
E.インターベンション治療
1 高周波熱凝固法
2 イオントフォレーシス
3 光線(照射)療法
4 PCA法
5 経皮通電神経刺激法
6 脊髄刺激療法
7 大脳皮質刺激による除痛
8 脳深部刺激療法
9 電気痙攣療法
10 Raczカテーテル
11 硬膜外腔内視鏡
12 経皮的コルドトミー
13 経皮的髄核摘出術
F.その他の治療
1 認知行動療法
2 自律訓練法
3 鏡療法
4 リハビリテーション
G.治療による合併症
1 硬膜外血腫
2 硬膜外膿瘍
3 化膿性脊椎炎
4 硬膜穿刺後頭痛
5 オピオイドによる退薬症状
6 オピオイド誘導性痛覚過敏
7 神経ブロックによる神経障害
索引