エキスパートが教える呼吸器領域におけるIVR手技の実践書
呼吸器領域IVR実践マニュアル(電子版のみ)
内容
序文
主要目次
最初に呼吸器領域のIVRに関する本の編集依頼を文光堂から頂いた際には,巷には多くのIVR関連の書籍がすでにあるのに,またどうして一般病院に勤務している私が編者に選ばれたのだろうと思った.そこで今まで自分が行ってきた胸部領域のIVR手技を振り返ってみると,この手技を行う機会を得られたのは三井記念病院・呼吸器外科の故羽田圓城先生のおかげであったことに改めて気付いた.
羽田先生は胸骨正中経路によるアプローチで徹底的にリンパ節郭清を行うことで肺癌手術の根治性を追求されていた.術前に肺癌の診断が確定していれば,外科医は術中に癌の切除とリンパ節郭清のみに集中することができる.1993年にMD Anderson CCから戻った私が経皮肺生検(ただし吸引針生検)の経験を積んだことから,羽田先生からCTガイド下針生検目的で多くの患者さんを放射線科に紹介していただいた.ただし確定診断のためには「組織」を採取するというのが条件であった.
初期は吸引型生検針を用いていたが,半自動生検針を導入したことで組織が確実に採取できるようになった.こうして始まった三井記念病院のCTガイド下肺生検は,撮影法の改良や準備などに関する放射線科技師の努力と放射線科看護師の綿密な患者管理に支えられ,肺を含むすべてのCTガイド下生検は25年間で2018年3月末までに2,800件を超えた.
25年前と比べて生検針こそ大きな変革はないが,血管造影に関する道具は飛躍的な進歩を遂げた.またラジオ波焼灼術・凍結療法など新しい治療技術や肺動脈塞栓症の治療薬の開発,さらにエビデンスをもとに診断や治療のガイドライン作成などが行われるようになった.
こう考えてみると,確かに色々な治療法を最新の情報をもとに各専門家の先生に整理していただき一冊にまとめることは良いかもしれないと考えるようになった.そこで症例数が多い施設の先生,医学雑誌のIVR特集などに執筆されている先生,IVR関連学会で教育講演をされた先生を中心に著者を選出させていただいた(「第III章 病理」をご執筆頂いた野口雅之先生のように高校の先輩という先生もいらっしゃるが).また気管支内視鏡の現況を知らずに呼吸器領域治療は語れないので,内視鏡医師の立場からも気管支IVR手技を解説していただくことにした.画像や図を多く取り入れることや,ガイドラインの明示,患者に説明する際の同意書を作りやすいようにと意図したが完遂できたかどうか,今後の読者の批判を仰ぎたいと考えている次第である.
最後に編集の労をとっていただいた文光堂の末冨聡さん・畑創太郎さんにお礼を述べて巻頭言としたい.
2019年5月
衣袋健司
日本大学医学部放射線医学系放射線医学分野
1.気管支動脈塞栓術
Column 気管支動脈解剖について
2.気管支動脈化学動注療法
3.肺動脈塞栓術
(1)PAVM(肺動静脈瘻)
(2)外傷(Swan-Ganzカテーテル後)/Rasmussen動脈瘤
4.肺動脈血栓溶解療法
Column 下大静脈フィルター
II.非血管系
1.CTガイド下肺生検
(1)通常の生検
(2)CT透視下穿刺
2.胸腔鏡下肺切除術のためのVATSマーカー留置術
3.気道ステント
4.胸腔ドレナージ
5.気管支鏡下肺生検
6.肺腫瘍に対する経皮的治療
(1)RFA(ラジオ波焼灼療法)
(2)凍結療法
7.胸管塞栓術
III.病理
生検標本について
索引