エキスパートの臨床思考を可視化.この一冊で統合解釈ができるようになる!
問題解決モデルで見える理学療法臨床思考
臨床実習・レポートにも役立つ統合解釈テクニック
内容
序文
主要目次
本書は理学療法学生をはじめとして,新人理学療法士および新しい領域にチャレンジしていく現職の理学療法士を対象としています.これまで,経験を積まないとわからないとされてきた理学療法の臨床思考,いわゆる統合解釈を1人で行えるようにサポートすることを目的としています.筆者の学生時代を思い起こすと,養成校での講義や臨床実習において,統合解釈で苦労した記憶があります.当時は明確な答えが示されないまま,何となくわかったような状態のまま過ぎていきました.新人として臨床現場で働くようになった際も,思考の展開の仕方はわからないまま先輩方に考えを聞きつつ,見よう見真似で行っていました.多くの研修会に参加しても,テクニックなどは学べましたが,それらを活用するための臨床思考は明確化していませんでした.試行錯誤を繰り返しながら診療を重ね,おぼろげながら考えを進めていく方向性が見えてきたことを覚えています.
学生が臨床実習で受ける指摘事項として,「統合解釈ができない」は変わらず上位にきており,筆者が学生時代だった20年以上も前と変わらない印象です.近年は現職の理学療法士の臨床思考を可視化した書籍が散見されるようになってきました.しかし,臨床思考そのものが十分確立されたとは言い難い状況だと感じています.EBMの浸透により,各種ガイドラインなどの整備が進められ,日本理学療法士協会においても領域ごとの学術向上を目指して,12領域が法人学会として,10領域が研究会として独立しました.他の医療職と同様,科学としての理学療法確立に向けて動いています.しかし現状同じ症例を担当しても,確立された臨床思考がないため目標設定や理学療法プランにかなりの幅がある状況と感じています.
本書では従来アートとして扱われ,ブラックボックスとなっている臨床思考に焦点を当てました.日本は国民皆保険制度の国であり,全国どこにいても同質の医療が受けられる世界に誇るシステムが確立しています.その医療の一翼を担う理学療法士も,経験年数に関係なく適切な理学療法を提供できるようにすべきだと思います.そのため,臨床思考の精度を高め続ける専門職としての倫理観は持ちつつも,なるべく短時間でエキスパートに近い臨床思考ができるようにしていく必要性を強く感じます.エキスパートの臨床思考を見える化した本書が,多くの学生や理学療法士にとって,少しでも早く日本国民の健康に貢献できる一助となることを心より願っています.
最後になりますが,本書を完成させるにあたり幸運にも多くの方々のサポートに恵まれました.このような書籍を執筆させていただく機会を与えてくださいました看護リハビリ新潟保健医療専門学校の有馬慶美先生,執筆に不慣れでご迷惑をおかけしたにもかかわらず辛抱強くサポートしてくださった文光堂の奈須野剛弘様,各臨床思考モデルをご執筆いただいたエキスパートの先生方,教育について考える機会をいつも与えてくれる学生諸君に心から感謝申し上げます.
2022年3月
加藤研太郎
1 理学療法士に求められていること
2 理学療法が対症とする生活とは
第2章 障害構造を把握する方法
1 問題解決の構造的理解
2 問題解決モデルの基本構造
3 対象疾患と病期
4 具体的な記載上のルール
第3章 解決すべき課題の目標と介入方法を立案する方法
1 問題の定義づけ
2 目標の設定
3 介入方法の立案
4 介入に対する制約条件の設定
第4章 問題解決モデルを用いた統合解釈の基本的手順
1 問題解決思考の基本的手順
2 参加ユニットの思考手順
3 活動ユニットの思考手順
4 機能・構造ユニットの思考手順
5 全ユニットの包括的な意思決定
第5章 疾患別の問題解決思考
1.骨関節疾患
1 大腿骨頚部骨折(γネイル:回復期)
2 変形性膝関節症(TKA:急性期)
3 変形性膝関節症(保存:生活期)
4 変形性股関節症(THA:回復期)
2.神経障害
1 被殻出血(血腫除去術:急性期)
2 脳梗塞(薬物療法:回復期)
3 Parkinson病(薬物療法:中度障害期)
4 多系統萎縮症(薬物療法:生活期)
3.内部障害
1 慢性閉塞性肺疾患(保存:回復期)
2 心筋梗塞(PCI:急性期)
3 糖尿病足病変(予防期)
4 慢性腎不全(透析:回復期)
索引