卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌の病理診断における座右の書!新知見を盛り込んだ改訂版!!
腫瘍病理鑑別診断アトラス
卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌改訂・改題第2版
内容
序文
主要目次
腫瘍病理鑑別診断アトラス「卵巣腫瘍」初版が発行されてから10年以上が経過した.この間,世界保健機関World Health Organization(WHO)による女性生殖器腫瘍の分類は2014年(WHO 分類第4版)と2020年(WHO分類第5版)の2回にわたって改訂された.わが国の「卵巣腫瘍取扱い規約」は,「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約」と名称を変え,WHO分類第4版に準拠した「病理編第1版」が2016年7月に,WHO分類第5版に準拠した「病理編第2版」(現行の取扱い規約)が2022年12月に発刊された.本書は腫瘍病理鑑別診断アトラス「卵巣腫瘍」の第2版として位置づけられるが,取扱い規約に足並みを揃えて名称を「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌」に変更し,病理医が日常的に遭遇する頻度の高い腫瘍を取り上げて,現行の取扱い規約およびWHO分類第4版とWHO分類第5版における分類と概念の異同,改変の背景や議論などを分かりやすく解説することを意図して企画した.書名の改変により卵管腫瘍および腹膜腫瘍についても項目を設け,頻度の高い腫瘍を中心に診断のポイントと鑑別のすすめ方を述べる.
WHO分類第5版はWHO分類第4版を概ね踏襲しているが,いくつかの変更点がある.分類における代表的な変更点は,最も頻度の高い上皮性腫瘍に含まれる漿液性腫瘍と漿液粘液性腫瘍に関する事項である.特に漿液性腫瘍については原発巣に関する新たな考え方を含めて本書では紙面の多くを割いて解説する.
性索間質性腫瘍と胚細胞腫瘍については,組織像の多様性と希少性ゆえに病理医が診断に苦慮することが少なくないことから,診断の補助となる免疫組織化学の効果的な併用の仕方についても解説する.
卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌の診断においては,詳細な肉眼観察と適切な組織サンプリングが重要で,病理医をしばしば悩ませる術中迅速診断もこれを抜きにして語ることはできない.また,婦人科医や放射線科医との情報共有,最適な病理診断報告書の作成も,診療において必要不可欠である.特にゲノム医療が本格的にはじまり,病理医は分子標的治療およびコンパニオン診断にも精通し,婦人科医に情報提供と助言を適切に行うことが求められる機会が増えることが予想される.これらの基本についても独立した項目を設けて概説する.
本書の執筆は,婦人科腫瘍の診療に豊富な経験を有する病理医と婦人科医にお願いした.本書を通じて,卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌への理解が深まり,病理診断の精度の向上と最適な診療へ寄与することができれば幸いである.
令和6年1月
清川 貴子
三上 芳喜
この「腫瘍病理鑑別診断アトラスシリーズ」は日本病理学会の編集協力のもと,刊行委員会を設置し,本シリーズが日本の病理学の標準的なガイドラインとなるよう,各巻ごとの編集者選定をはじめ取りまとめを行っています.
腫瘍病理鑑別診断アトラス刊行委員会
小田義直,坂元亨宇,都築豊徳,深山正久,松野吉宏,森谷卓也
Ⅰ.卵巣腫瘍の分類と分子病理
Ⅱ.検体の扱い方
第2部 組織型と診断の実際
Ⅰ.卵巣腫瘍および腫瘍様病変
A 上皮性腫瘍
(1)漿液性腫瘍
(2)粘液性腫瘍
(3)明細胞腫瘍
(4)子宮内膜症と類内膜腫瘍
(5)漿液粘液性腫瘍
(6)Brenner腫瘍およびその他の癌
B 性索間質性腫瘍
(1)線維腫および莢膜細胞腫
(2)顆粒膜細胞腫
(3)Sertoli-Leydig細胞腫
(4)その他の性索間質性腫瘍
C 胚細胞腫瘍
(1)未分化胚細胞腫
(2)卵黄嚢腫瘍
(3)奇形腫(成熟・未熟)
(4)その他の胚細胞腫瘍
D その他の原発性腫瘍
(1)性腺芽腫
(2)高カルシウム血症型小細胞癌
(3)間葉系腫瘍
(4)造血細胞腫瘍
E 転移性腫瘍
F 腫瘍様病変
Ⅱ.卵管・傍卵管の腫瘍および腫瘍様病変
Ⅲ.腹膜の腫瘍および腫瘍様病変
Ⅳ.家族性腫瘍
第3部 鑑別ポイント
Ⅰ.上皮性腫瘍の異型のとらえ方とグレード評価
Ⅱ.上皮性腫瘍の細胞分化の見方
Ⅲ.マクロ所見からのアプローチ
Ⅳ.卵巣腫瘍の鑑別診断と免疫組織化学
第4部 臨床との連携
Ⅰ.診断に必要な臨床情報
Ⅱ.卵巣腫瘍の術中迅速診断
Ⅲ.報告様式
Ⅳ.進行期分類と治療の概略
索引