これから美容皮膚科を始めようと考えている皮膚科開業医必携!美容皮膚科の入門書
美容皮膚科はじめの一歩
生粋の皮膚科医によるまじめな美容皮膚科
内容
序文
主要目次
「皮膚科医の皮膚科医による皮膚科医のための美容皮膚科の本」
有名な「人民の人民による人民のための政治」とは,民主主義政治の原則を端的に表した有名な演説であるが,この本は,真面目な生粋の皮膚科医が,患者のために施行する美容皮膚科の原則を説明するとこうなる,という良著である.
著者の川端康浩先生は私が東京大学皮膚科に入局したころ,皮膚外科のチーフであられた.皮膚外科は皮膚科の中でも,患者侵襲度が高く,悪性腫瘍も扱うため,予期せぬアクシデントに見舞われやすく,リスクマネジメントが難しい.そんな難しい分野で,本当に1例1例を大切に,真摯に対処されていたのが川端先生であった.常に患者の安全を確保したうえで,目の前の患者のための最善の治療を目指す川端先生は,自身の豊富な経験があっても,症例,疾患ごとの最新の情報収集を怠らなかった.そして,そこにご自身の考えを加えて,さらに発展させておられた.加えて,診療の現場では,患者とその家族,医師,コメディカルといった「人」に,広く,そして細かく注意を払い,さまざまな難問を独自の手法で解決されていた.その数々の「事件解決」の現場に居合わせた私は,「医は仁術」とはまさにこのこと,と心から尊敬し,川端先生のような皮膚科医を目指して,専門外来,手術,そして当直時の病棟回診にまでついて回り,川端先生の一言一言を熱心に聞き,一挙一動を注視し,教科書には載っていないコツやリスクマネジメントをたくさん学んだ.
現在は炎症性皮膚疾患が専門の私であるが,今でも患者を取り巻く課題に直面した時には「川端先生なら,どうやって解決されるだろうか」と考え,対処している.それほど,川端先生の「ものの考え方」は重要である.川端先生の専門外来は「皮膚外科外来」だったが,アトピー性皮膚炎,蕁麻疹など,皮膚外科以外の患者も信頼を寄せ数多く通われていた.驚く私に「僕の専門は手術じゃないよ.皮膚科だよ.だから,アトピーでも乾癬でも,なんでも診るよ」と笑顔でおっしゃっていた.その川端先生が2002年に開業された.訪れる患者一人ひとりに真面目に向き合われる中で,美容皮膚科というツールを使う必
要性がおそらく多く発生したのだと思う.
スキンケア,痤瘡については,第一人者の野村有子先生が丁寧に解説されており,実践的な内容となっている.
自分を頼ってきてくれた患者を自分の手で幸せにしてあげたい,そういう皮膚科医こそが,まさに必要とする一冊である.
2019年4月
多田 弥生
帝京大学医学部皮膚科学講座
1 美容皮膚科興隆の社会的背景
1.日本国民の美容への価値観の変化/2.美容医療が富裕層から中間層まで普及/3.美容医療の大衆化/4.科学的根拠の蓄積/5.皮膚科診療の行き詰まり
2 私が美容皮膚科をはじめたわけ
1.開業にあたっての私の初心/2.どのように美容皮膚科を取り入れるか/3.「美容皮膚科には必然性あり」/4.当院での美容皮膚科診療/5.「美容皮膚科は恐れて腰をひくほどのものでもない」
II 美容皮膚科をはじめようとする先生へ~これまで受けてきた質問にお答えします
1 「美容皮膚科はもうかりますか?」
1.収益と自由診療特有の問題(煩わしさ)とのバランス/2.美容皮膚科を行おうと思った理由(日臨皮アンケート調査)/3.美容皮膚科は収益の上がる“打ち出の小槌”?/4.私の答え
2 「美容皮膚科中心のクリニック開業を考えています.立地条件,治療メニュー,導入機器など教えて
ください」
1.都心型と郊外型の美容皮膚科/2.美容皮膚科中心のクリニックであれば都心型/3.開業当初は人間関係が生きてくる/4.都心型クリニックの治療メニュー・機器/5.美容医療機器の価格に見合う効果(日臨皮アンケート調査)
3 「皮膚科クリニックを開業予定/一般皮膚科開業10年目ですが,美容皮膚科もある程度取り入れたいと考えています.どんなことに注意すればいいでしょう?」
1.混合診療の問題/2.混合診療禁止の根拠/3.当院の実際
4 「ホームページ作成の注意点を教えてください」
1.クリニックは何で知る?どうやって選ぶ?/2.ホームページ作成の注意点
5 「美容皮膚科をはじめ,自由診療の価格設定に悩んでいます」
1.保険診療はシンプル/2.自由診療の煩わしさ(やりがい?)/3.高い料金設定にしにくい理由/4.価格の感じ方は患者によって違う
6 「美容皮膚科に関する知識・技術の習得はどのようにしていますか?」
1.美容関連の情報収集/2.美容皮膚科の技術の習得
7 リスクマネジメント~最も確実で効果のあるリスクマネジメントは患者と良好な人間関係を構築することです~
1.美容皮膚科診療における患者からの苦情(日臨皮アンケート)とリスクマネジメント/2.患者とのトラブル回避のために私が心掛けていること/3.医師の応召義務(医師法第19条第1項)
8 インフォームド・コンセントの上手な取り方
1.医師-患者関係は対等?/2.インフォームド・コンセントで注意すること/3.各手技のインフォームド・コンセントで欠かせない文言/4.事前にどんなに説明しても…
9 「美容皮膚科診療において,『こんな人は危ない』と患者を見分けるポイントがあったら教えてください」
1.診察室入室の第一印象は大きな判断材料/2.問診票から得られる情報/3.前医への苦情を述べる患者/4.電話の応対も重要
III ケミカルピーリング
1 ケミカルピーリングとは
1.ケミカルピーリングの普及/2.日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン/3.痤瘡の治療に用いられるようになった
2 ケミカルピーリングの剝離深度による分類と使用薬剤
1.ケミカルピーリングの剝離深度/2.各種ピーリング剤から何を採用するか/3.ピーリング剤は自家調合?製品を購入?
3 ケミカルピーリングの適応疾患と至適剝離深度
1.痤瘡/2.肝斑,炎症後色素沈着,雀卵斑/3.日光性黒子(老人性色素斑)/4.小じわ/5.「何となく肌をきれいにしたい」,「化粧ののりをよくしたい」,「くすみの改善」,「毛穴の開きが気になる」
4 当院での実際の手技~ごく簡単なマニュアルを作成しています~
1.洗顔/2.診察/3.セッティング,プレトリートメント/4.ピーリング剤の塗布/5.ピーリング剤の除去/6.クーリング/ 7.術後処置,保湿
5 ケミカルピーリング禁忌・不適の患者とはどんな人でしょう?
1.禁忌/ 2.不適
6 「ケミカルピーリングは医師の負担を増やさずに収益増につながる」と言われました.本当でしょうか?
1.初期投資(器材・人件費)/2.すべてスタッフに任せきりにしない/3.混合診療禁止に抵触/4.治療パターンをいくつか持つことは重要
7 実際にケミカルピーリングで困ったケースを教えてください
1.小学生がケミカルピーリングを希望してきた場合/2.定期的に来院できない患者に対する施術,指導/3.ケミカルピーリング直後に顔面が赤くなったと訴える患者/4.ケミカルピーリングを数回行ったが肌質が変わらないと言う患者
8 ビタミンC のイオン導入の理論と手技
1.ドラッグデリバリーシステムとしてのイオン導入/2.ビタミンC,各種ビタミンC誘導体について/3.イオン導入の手技
IV ボツリヌス毒素による表情じわの治療
1 しわの種類と治療法
1.小じわ/2.真皮性のしわ(大じわ)/3.表情筋の収縮による表情じわ/4.重力,筋力の低下によるたるみ
2 ボツリヌス毒素によるしわ治療の理論
1.作用機序/2.使用薬剤/3.表情じわへの応用
3 ボツリヌス毒素によるしわ治療の基本手技
1.薬剤の調整/2.注射時の一般的注意事項/3.眉間の縦じわ/4.外眼角~下眼瞼,カラスの足あと(crow’s feet)/5.前額の横じわ/6.鼻部の横じわ/7.重度腋窩多汗症
4 ボツリヌス毒素によるしわ治療の際に患者から受ける質問・クレームとその対応
1.「眉毛の両外側がつり上がって,きつい顔になってしまいました」/2.「両眉毛が下がって,まぶたが重くなりました」/3.「効果が3~4ヵ月しか持続しないのであれば,治療の意味はないのではありませんか?」/4.「施術後の皮下出血が消えません」
V レーザーによるシミの治療
1 シミのレーザー治療の理論~理論を理解すると患者への説明の説得力が増します~
1.レーザーの原理/2.レーザー治療の基礎理論
2 シミの種類と使用するレーザー~どのシミにどのレーザーを使う? 「皮膚のどこに色素が存在するか」に着目します~
1.真皮に色素が存在する色素性病変/2.表皮に色素が存在する色素性病変/3.レーザー治療が適応とならないシミ
3 肝斑に対するレーザー治療~肝斑があるからレーザーが照射できないということはありません~
1.肝斑と日光性黒子の合併例の治療/2.肝斑単独に対するレーザー治療~レーザートーニング
4 Qスイッチレーザーのしわ取り効果とその限界~1例のADMの治療経験から読み解く患者心理~
1.症例:62歳 女性/2.しわ取り効果の機序と患者心理/3.この症例から学んだこと
5 レーザー治療の実際・私の工夫
1.照射前の準備・確認・患者への配慮/2.照射時の注意・コツ・患者への配慮
6 レーザー治療後のアフターケアの指導~アフターケアをしっかり指導することは皮膚科医としての責任です~
1.美白剤の外用/2.日焼け止め指導/3.知っておきたい紫外線の基礎知識
7 レーザー脱毛について~シミのレーザー治療の理論の延長上にあります~
1.レーザー脱毛の理論と実際/2.レーザー脱毛後のトラブル対策
8 レーザー治療,こんな患者にどう対応する?~一筋縄ではいかないいろいろな患者さんがいらっしゃいます~
1.一通りレーザー治療の説明を終了した後に,「それで,私のシミは消えますか?」と尋ねる患者/2.治療1週間以内に「全然効果がない」と来院する患者/3.やたらと治療費を値切る患者/4.他の皮膚疾患で通院中の患者に太田母斑があった時
VI 炭酸ガスレーザーによる顔面の小腫瘍の治療
1 顔面の小腫瘍の治療上の問題点
1.美容皮膚科では治療結果に重点がおかれる/2.美容皮膚科といえども,臨床診断が非常に重要
2 顔面の小腫瘍(隆起性病変)の鑑別~炭酸ガスレーザーの蒸散術の適応になるもの・ならないもの~
1.炭酸ガスレーザーの蒸散術の適応になる小腫瘍/2.炭酸ガスレーザーの適応にならない小腫瘍
3 基底細胞癌とその他の腫瘍との鑑別~顔面の小腫瘍の診療で最も重要なことは基底細胞癌を見逃さないことです~
1.常に基底細胞癌を念頭に/2.脂漏性角化症/3.母斑細胞母斑/4.病歴の聴取・ダーモスコピーの活用/5.悪性疾患を見逃さない
4 炭酸ガスレーザーによる蒸散術の実際
1.炭酸ガスレーザー/2.脂漏性角化症(老人性疣贅)/3.母斑細胞母斑/4.汗管腫/5.血管拡張性肉芽腫(ボトリオミコーゼ)/6.眼瞼黄色腫/7.脂腺増殖症/8.老人性血管腫
VII にきびの治療
1 にきびの原因とメカニズム
1.にきびの原因/2.にきびのメカニズム/3.にきびの統計から見るにきび患者の本音
2 本邦におけるにきび治療の変遷
1.1980年代のにきび治療/2.2000年代前半までの主なにきび治療/3.にきび治療の転換期から成熟期へ~「尋常性痤瘡治療ガイドライン」を活用して~
3 私のにきび治療方針①~大切な問診・触診・視診~
1.問診/2.触診/3.視診
4 私のにきび治療方針②~外用薬の使い方~
1.外用薬の種類/2.外用薬の使い方の実際/3.アダパレンと過酸化ベンゾイルを使いこなすコツ/方法①チョンのせ法/方法②塗り拡げ法/方法③量の調整法/方法④ショート・コンタクト・セラピー
5 私のにきび治療方針③~内服薬の使い方~
1.抗菌薬/2.ビタミン剤/3.漢方薬/4.症例報告(20代,男性)
COLUMN 私のにきび治療方針-面皰圧出を積極的にやっています-
6 にきび患者へのスキンケア指導
1.にきび患者のスキンケア方法の実態/2.スキンケア指導/3.朝のスキンケア方法/4.夜のスキンケア方法/5.化粧直しのコツ
7 にきび患者への生活指導
1.睡眠/2.食事/3.触り癖と皮膚に触れるもの対策/4.ストレス
8 にきび治療,こんな患者にどう対応する?
症例1:30代,女性「どこの病院に行っても,何をしても,全くにきびが治らない.外にも出たくない……」/症例2:20代,女性「ベピオⓇゲルを使用したら,急に赤くなってヒリヒリした」/電話での問い合わせの対応法
VIII 化粧品・スキンケア用品の指導・販売,美白剤などの処方
1 皮膚科クリニックでのスキンケア指導の実際~私はこうしています~
1.スキンケア指導の流れ/2.お肌のお手入れ方法/3.ヘアケアアドバイスカード/4.敏感肌用アドバイスカード/5.美肌用アドバイスカード
2 スキンケア教室での指導の実際~私はこうしています~
1.スキンケア教室を予約/2.スキンケア教室の流れ/3.スキンケア教室終了
COLUMN 男性医による化粧指導
3 皮膚科クリニックでの化粧品・スキンケア用品の販売~私はこうしています~
1.スキンケア用品の販売のきっかけ/2.販売方式について/3.販売するにあたって/4.SRCで取り扱っている商品
4 スキンケア指導のトラブル,化粧品・スキンケア用品販売のトラブル
「勝手に塗られて,お金取るんですか?」/「サンプル,もっとください」/「購入して使っているうちに,肌がかゆくなってきた」「購入して使ったら,赤くなった」/まとめ
5 化粧品・スキンケア用品を院内販売するための基礎知識
1.化粧品と医薬部外品/2.医療機関での化粧品販売/3.クリニックオリジナル化粧品を製造・販売する時の注意
6 美白剤の種類と作用機序
1.ハイドロキノン/2.レチノイン酸
7 美白剤によるシミ治療の実際
巻末付録
索引