胎児の正常と異常のふるい分けに役立つ,超音波スクリーニング現場必携の一冊!
正常がわかる胎児超音波検査
内容
序文
主要目次
胎児形態異常の出生前診断のための超音波スクリーニング検査に関しては,日本産科婦人科学会編集発行「産婦人科研修の必修知識」の2011年版以降に記載され,「産婦人科診療ガイドライン産科編2014」にも記載されている.しかし,いまだスクリーニング検査を行っていない施設も少なくない.そこで,日本産科婦人科学会の周産期委員会では,2014年度に「超音波による胎児評価に関する小委員会」を立ち上げ,スクリーニング検査を実施していない施設でも実施できるよう簡便な方法として「妊娠18〜20週における胎児超音波検査の推奨チェック項目」の提言を行った.
2015年4月に,これらのスクリーニング検査の具体的方法や対象疾患の超音波像などを中心にまとめた『超音波胎児形態異常スクリーニング─産婦人科医・助産師・臨床検査技師のために─』(以後,前書)が文光堂から出版され,多くの方々に読んでいただいている.しかし,胎児超音波検査に慣れていないスクリーニング現場では,明らかに異常が疑われる場合は精密検査のために紹介するという判断が容易にできるが,紹介する必要がある異常なのか正常範囲内なのかの判断に迷うことも少なくないとのご意見が寄せられるようになった.そこで,今回,「産婦人科研修の必修知識2013」に書かれているチェック項目(レベル2)を基に,そのような微妙な所見,あるいは正常なのに異常と間違って判断されてしまうような所見を中心に,スクリーニング現場でのふるい分けの判断に役立つものとして本書を企画した.
本書は,前書の姉妹書として,お互いの内容を補完するものとなっているが,本書だけを読まれても理解しやすいように,スクリーニング方法(検査者の技量に応じて分類されたレベル1,レベル2,レベル2+α)については,前書のサマリーという形で第1章にまとめた.また,第2章以降には前書で触れられていなかったような異常所見も加えた.さらに,2015年度に日本産科婦人科学会周産期委員会「超音波による胎児評価に関する小委員会」が提言した妊娠初期(10〜13週)と妊娠後期(28〜31週)のスクリーニング法(レベル1)についても紹介している.
本書の出版にあたり,文光堂編集企画部の嵩恭子氏,清水俊哉氏には,企画の段階から大変お世話になったが,より良いものにするための修正依頼に対して出版直前ぎりぎりまで真摯に対応いただき,たいへん感謝している.
本書が,出生前診断がなされないままに分娩に臨み,不幸な転帰をとるような児が一人でも減ることに役立つならば幸いである.
2016年4月吉日
馬場 一憲
市塚 清健
1.総論
a.スクリーニング検査と精密検査
b.スクリーニング検査の時期
c.スクリーニング検査でどこまでチェックするか
d.胎児形態異常スクリーニング検査におけるレベル分類
e.胎児形態異常スクリーニング検査実施上の留意点
2.「レベル1」スクリーニング検査法
a.全身
b.頭部
c.胸部
d.腹部
e.背部・殿部
f.四肢
g.羊水
3.「レベル2」スクリーニング検査法
a.頭部
b.上唇
c.胸部
d.大血管(胸部)
e.腹部
f.脊柱・殿部
g.四肢
h.羊水
4.「レベル2+α」スクリーニング検査法
第2章 妊娠初期
A.妊娠13週までの正常胎児の正常像
a.妊娠5週で胎児心拍が徐脈にみえた場合
b.妊娠8週前後で胎児の頭に嚢胞がみえた場合
c.妊娠10週前後で臍帯の胎児付着部が太くみえた場合
d.妊娠10週前後で頸部が厚くみえた場合
e.妊娠12週以降でBPDが測定できない場合
f.胎児に異常な隆起があるようにみえた場合
第3章 妊娠中期後期
A.全身
a.全身の皮膚が厚くみえる場合
b.後頸部の肥厚がめだつ場合
B.頭部
■ 代表的な断面の正常像
1.頭蓋内は左右対称で異常像を認めない
a.左右非対称にみえた場合
b.側脳室が拡大しているようにみえた場合
c.側脳室以外に嚢胞(黒くみえる部分)があるようにみえた場合
d.小脳の後ろが異常に広く空いているようにみえた場合
e.頭蓋内に高輝度(真っ白にみえる)部分があるようにみえた場合
2.頭蓋に突出する異常像を認めない
a.頭蓋の外に何かがみえた場合
C.顔
■ 正常像
1.口唇裂を認めない
a.口唇裂があるようにみえた場合
2.その他
a.目が一つしかないようにみえた場合
b.左右の目の距離が近いとみえた場合
c.眼球内部に何かみえた場合
D.胸部
■ 正常像
1.心臓の位置と軸は左に寄っている
a.心臓の位置が正常よりも右に寄っているようにみえた場合
b.心臓の位置が正常よりも左,または正中に寄っているようにみえた場合
2.左右心房心室の大きさのバランスがよい
a.心臓全体が異常に大きいようにみえた場合
b.四腔断面がきれいに描出できない場合
c.心房中隔に欠損部位があるようにみえた場合
d.心室中隔に欠損部位があるようにみえた場合
e.左右心房心室のどれかが異常に大きいようにみえた場合
f.三尖弁,または僧帽弁が動いていないようにみえた場合
g.心臓の周囲に液体が貯留しているようにみえた場合
3.胸腔内に異常な像を認めない
a.胸郭と肺の間に液体が貯留しているようにみえた場合
b.肺の中に嚢胞のようなものがみえた場合
c.肺の中に輝度の高い部分がみえた場合
d.3VV断面で両側の肺の間に肺の輝度とは異なる腫瘤様の像がみえた場合
4.大動脈と肺動脈がらせん状に走行
a.大動脈と肺動脈が確認できない場合
b.大動脈と肺動脈が平行に走行しているようにみえた場合
5.大動脈と肺動脈の太さがほぼ同じ
a.肺動脈が太くみえた場合
b.大動脈が太くみえた場合
E.腹部
■ 正常像
1.胃胞は左側
a.胃胞が左側にみえない場合
b.胃胞が右側にみえた場合
c.胃胞が異常に小さくみえた場合
d.胃胞内にsludge様エコーがみえた場合
2.胃,膀胱,胆嚢以外に嚢胞を認めない
a.胃,膀胱,胆嚢以外に嚢胞のようなものがみえた場合
b.胆嚢がみえない場合,胆嚢が異常に大きくみえた場合
c.腸が異常に拡張しているようにみえた場合
d.腎臓にたくさんの嚢胞があるようにみえた場合
e.腎盂が拡張しているようにみえた場合
f.腎臓周囲に腫瘤性病変がみえた場合
3.腹壁(臍部)から臓器の脱出を認めない
a.腹壁から何か飛び出しているようにみえた場合
4.その他
a.腸の一部が拡張してみえた場合
b.微量の腹水があるようにみえた場合(pseudo ascites)
c.肝臓の一部が他の部分より白くみえた場合
F.脊柱・殿部
■ 正常像
1.脊髄髄膜瘤
2.仙尾部奇形腫
3.その他の疾患における脊椎の評価
G.四肢
■ 概要
1.十分な長さの四肢を確認
a.2本の腕と2本の足が確認できない場合
b.大腿骨が異常に短いようにみえた場合
c.大腿骨が異常に長く観察された場合
d.大腿骨が曲がっているようにみえた場合
e.手首が異常に曲がっているようにみえた場合
f.5本の指の並びが不自然にみえた場合
g.内反足のようにみえた場合
H.外性器
1.男児の正常像
2.女児の正常像
3.尿道下裂
4.精査を考慮する所見
5.性別がわかりにくい場合
I.羊水─羊水量の評価─
1.羊水過多も過少も認めない
a.羊水過多・過少があるようにみえた場合
b.羊水中に異常に浮遊物が多いようにみえた場合
第4章 胎児計測
A.妊娠週数の確認・修正のための妊娠初期の正しい胎児計測法
a.CRL,BPDが妊娠週数と合っていない場合
b.妊娠中期以降に軽度の胎児発育不全が疑われた場合
B.推定児体重算出のための正しい胎児計測法(BPD,FL,AC)
a.推定体重が標準域から外れた場合
b.BPDだけが標準域から外れた場合
c.ACだけが標準域から外れた場合
d.FLだけが標準域から外れた場合
索引