この病理診断,治療にどうつながる?診断に迷ったらこれを開こう!
病理と臨床 2021年臨時増刊号(39巻)
治療方針を変える病理所見
診療ガイドラインと治療戦略
内容
序文
主要目次
治療方針を変える病理所見 診療ガイドラインと治療戦略
発刊にあたって
腫瘍の病理診断では質的診断と量的診断との要素が求められ,それらは場合によって単独のこともあれば,どちらかに比重が偏ることもある.すなわちその腫瘍がどのようなカテゴリーに属する腫瘍なのかによって腫瘍の悪性度や臨床経過の推測が可能となり,決定された腫瘍の中で組織学的グレードや腫瘍の広がりを診断していくことになる.また,生検では広がりまでを診断することはできないが,切除標本では両者を求められることが普通である.これらの中には治療方法を大きく変える病理所見が存在するが,臓器ごとに治療法が発展してきたことから,その所見は臓器特異的なことが少なくない.そこで,この増刊号では,臓器ごとに存在する治療方針を変えるような臨床に密接に関連した病理所見を網羅的に集め,日常臨床に役立つハンドブックとしてまとめることを企画した.
治療方針を変える病理診断は,腫瘍そのものの診断が主体ではあるが,それはそれぞれの特集号でカバーされており,むしろそれ以外の形態学に重きをおいたTips的な要素を集めることにした.そのため,各臓器で用いられている診療ガイドライン(NCCNおよび本邦の学会・研究会)に記載されている病理所見についてのコメントが主になる臓器もあろう.また,複数の診療ガイドラインが存在する臓器では,病理診断に関連するところを抜き出して病理診断医用にまとめていただいた.これら診療ガイドラインを理解することで,迅速診断に提出される理由も理解できるようになろう.中には,診療ガイドラインがない臓器もあるが,その場合はエキスパートとして臨床医とのやりとりの中で診療に重要と考えられる病理所見を中心に,日々の臨床に役に立つ内容を記述いただいた.なお,コンパニオン診断に代表される分子標的薬の効果予測も大きく治療方針に反映されるが,2020年の38 巻臨時増刊号「免疫組織化学 実践的な診断・治療方針決定のために」で詳細に記載されているので参照されたい.
治療方法は日進月歩となることが望まれ,また,実際に変遷していることから,これらのアップデートについては各診断者に委ねられる.しかしながら,ある時点での参考書として一冊の本としてまとめることは意義があると思っている.本臨時増刊号が,読者の日常診療に役立つことを願ってやまない.
「病理と臨床」編集委員会
1.神 経
2.口 腔
3.頭頸部
4.唾液腺
5.皮膚(melanotic)
6.皮膚(non-melanotic)
7.肺
8.胸膜(悪性中皮腫)
9.縦 隔
10.食 道
11.胃
12.大 腸
13.肝 臓
14.胆 道
15.膵 臓
16.乳 腺
17.甲状腺・副甲状腺
18.副腎皮質・下垂体
19.腎
20.膀 胱
21.骨
22.関 節
23.軟 部
24.リンパ節
25.骨 髄
26.脾
27.子宮頸部
28.子宮体部
29.卵 巣
30.前立腺
31.精 巣
第2部 全身疾患
1.膠原病・血管炎
2.蓄積病・アミロイドーシス
3.移 植
4.IgG4関連疾患
5.遺伝性腫瘍
6.小児腫瘍
7.原発不明がん
8.GIST
索引