わかりやすいイラストで,小児診療の現場で必要な手技をマスターできる!
カラーイラストですぐにわかる
小児科診療 基本手技・処置スタンダード
内容
序文
主要目次
本書は若手の小児科医・初期研修医・小児診療に関わり始めた総合診療・救急・外科などの医師・看護師を主な読者対象に,小児診療における基本手技・処置を,イラストを多く用いることにより目で見て理解できるようにしているのが特徴である.本書の内容は,いわゆる“教科書的”ではなく実際の診療に基づく“泥臭い”部分もある.本書の方法と異なる場合,各施設,各指導医の方法を否定するものではなく,それぞれの方法を相対化し,よりよい診療に繋がるよう学び取っていただければ幸いである.
昨今,YouTubeなどの動画サイトで診察手技や処置についての質の高い動画を見て学ぶことができる.イラストより動画のほうが良いように感じるかもしれない.しかし,イラストにはイラストの良いところがある.一連の手技の中で重要なポイント・時間を切り取ることで,手技の中で特に注意すべき点に注目し,熟練者の視点を再現することができる.
項目は初期研修の際に必ず経験するものだけではなく,経験しないかもしれないが重要な手技も入れている.項目ごとに参考として「必要度」,「難易度」,「頻度」,「患者負担度」をつけている.手技・処置の背景である「はじめに」から始まり,「適応」,「禁忌」,「準備物品」,「手技・処置」と時間軸に沿って進む.また,「保護者への説明」については,手技・処置を行うにあたって伝えるエッセンスを記載している.手技・処置にあたり,患者さん,保護者の心配は強い.いきなり手技・処置に入るのではなく,まずは患者さん,保護者の心配を受け入れ,説明し,心配をできる限り解消して手技・処置に移る.それにより協力を得ることもでき,手技・処置自体もよりスムーズに進むはずである.ベテランからのコツも随所に記載しており,手技・処置をひとまず身に着けたと感じた方にも,さらなる手技・処置の向上に役立つと考えている.
小児を診療するにあたり,すべての小児で評価すべきABCDEの評価方法についても記載している.小児の患者さんはほぼ軽症であり,重症である割合は極めて少ない.しかし,一見軽症に見える重症小児は少なからず存在し,重症のサインを“見つけにいこう”としない限り見逃しにつながり,不幸な転帰をたどることがある.あまり聞くことがなかったかもしれないが,“ABCDEをすべての小児患者で”評価してほしい.
最後に,“優しさ”について.小児診療においては“優しさ”が大事である.小児診療における優しさとは,泣くような手技・処置をしないこと,静脈路確保を細い針で行うこと,ではない.患者さん,保護者の身体・心の痛みを受け入れ,必要がある手技・処置はやるが最小限の回数にする,必要な針の太さで静脈路を確保する,不要な検査・処方など必要のないことはやらない,というように,“あたりまえの診療をあたりまえにやること”である.
私にとっても,優しい小児科医への道はまだ遠い.
すべての患者さんとご家族のHAPPYを願って.
2021年2月吉日
鉄原健一
1 酸素投与
2 用手的気道確保とエアウェイ
3 人工呼吸(バッグマスク換気)
4 心肺蘇生
5 ABCDEアプローチで緊急度の評価をしよう
〈Ⅱ 基本手技〉
6 静脈採血・迅速血糖測定
7 末梢静脈路確保
8 毛細管採血
9 筋肉注射
10 予防接種手技
11 耳 鏡
12 浣 腸
13 カテーテル尿採取
14 吸入手技
〈Ⅲ 初期研修では必須ではないが重要な手技〉
15 腰椎穿刺
16 臍肉芽腫の処置
17 肘内障整復
18 鼻出血に対する圧迫止血
19 鼻腔異物除去
20 胃管挿入
21 腸重積整復
22 鼻吸引手技
23 鼠径ヘルニア嵌頓の整復
24 超音波検査
索引
[コラム]
患児に合わせた酸素投与器具の選択を
小児用鼻咽頭エアウェイがない場合
バッグマスク換気が効果的に行えない場合の対処法
小児救急と本書で取り扱う手技・処置
CPR中の保護者のケア
保護者付き添いの意義
LEDライトを使用して血管を探る際の注意点
穿刺後の出血が少なかった場合
エピペン®の処方
痛くない皮下接種を行うには?
耳垢で鼓膜が見えない場合には
吸入治療に反応が悪い場合に疑うべき病態
その他の臍肉芽腫の処置法について
肘内障の鑑別に鎖骨骨折を
胃管挿入における合併症
手術を行う時期
成人のPOCUSと小児のPOCUSでの相違点と注意点