病理診断を導くための切り出し法と肉眼診断のエッセンスがこの1冊に!
病理診断に直結する切り出しのキモ
内容
序文
主要目次
『病理と臨床』好評連載の単行本化.連載掲載の18臓器に加え,新たに7臓器の「切り出し」と,「固定」「撮影」「脱脂・脱灰」の“キモ”を書き下ろし.
改めて述べるまでもなく,切り出し業務は病理診断の要です.診断のキーとなる所見をプレパラート上に描出できるか,数々の診断項目を漏れなく記録できる所見を得ることができるか,は切り出しの巧拙にかかっています.さらに,病理医としては切り出し時の肉眼所見で,ある程度診断をつけられる能力を身に付けたいものです.新人のうちから,肉眼的につけた診断を顕微鏡で確認する,という習慣をつけましょう.
切り出し法につきましては各臓器の癌取扱い規約や正書にマニュアルとなる一般的な事項が記載してありますが,本書ではより実践的な内容を目指しました.まず,切り出しに工夫が必要だと思われる臓器をピックアップしました.これらにつきまして,各臓器を専門にしている病理医の先生方に,以下のような注文を付けて執筆いただいています.
①切り出しを病理医が行うことには意味があります.組織像を予想し,診断書作成に必要十分な切り出しをする能力が求められます.肉眼診断の要点と,疾患ごとの切り出し法の解説をお願いします.場合によってはイラストも使ってください.
②経験の少ない病理医は,肉眼所見がとれないため兎角数多くの標本を作製する傾向にあります.年々,病理検体数は増加傾向にあり,我々の検鏡時間のみならず標本を作製する技師の負担を増やさない(職場の人間関係を良好に保つ)ためにも,できるだけ切片を増やさない工夫が必要です.
③見やすいプレパラートを作成するための固定法,切る方向,軟らかい組織のスライス法,カセットに入れるサイズ・向き,どんな場合に石灰化した部分を脱灰してまで標本とするか,切り出し時にあらかじめ依頼しておくべき特染,理想的な撮影法などにつき,各施設で伝承的に受け継がれてきたローカルルールも含め,特に癌取扱い規約に記載されていない内容を中心にご教示ください.
④各臓器を専門にしている方は,研究目的で全割に近い標本を作製しているかもしれません.記載内容は,その臓器を専門にしていない病理医を対象に,一般的な規模の病院で実践可能な内容にしてください.
この本では,月刊誌『病理と臨床』に1年半にわたり連載された内容に,新たに7つの臓器の切り出し方を追加しました.「肝に銘じる!」では簡潔にポイントが列挙してあります.また,第2部としまして「固定」,「撮影」,「脱脂・脱灰」のキモを加え,さらに実践に役立つ内容としています.
連載および書籍化にあたりまして,『病理と臨床』編集室の鈴木貴成氏(「肝に銘じる!」のアイデアをいただきました.イラストは私の似顔絵のようです),松本夏美氏(ポジティブなコメントに常に励まされます),佐藤真二氏(編集室の安定感を醸成しています),浅井麻紀社長(空気が引き締まります),ともに編集委員を務めました谷田部恭,長嶋洋治,宇於崎宏の各先生,編集委員長の北川昌伸先生には長期間にわたりご指導と多大なご協力をいただきました.この本はみなさまとの協同作業の賜物です.ここに深く感謝いたします.
この本が若手の病理医仲間の日々の業務に役立つことを願っています.
2022年8月
亀山香織
1.脳
2.口腔・顎顔面
3.頭頸部~咽頭
4.唾液腺
5.甲状腺
6.肺
7.縦隔
8.乳腺
9.肝臓
10.胆・膵
11.食道
12.胃
13.腸
14.子宮
15.卵巣
16.胎盤
17.精巣
18.前立腺
19.腎臓
20.尿管・膀胱
21.心臓(虚血性心疾患,伝導路)
22.大血管
23.皮膚
24.骨
25.軟部組織
第2部 私はこうする―切り出しに関連する工程のキモ
1.固定
2.撮影
3.脱脂・脱灰