日本肝臓学会編集の好評『NASH・NAFLDの診療ガイド』が6年ぶりの大改訂!
NASH・NAFLDの診療ガイド2021
内容
序文
主要目次
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,最も頻度の高い肝疾患です.世界の各地域からの報告により差はありますが,現代人の約20%がNAFLDに罹患しており,その中の約10%,即ち全人口の約2%が病理学的に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と診断される進行性の肝疾患を有していると推計されています.勿論,全ての患者さんに肝生検を実施するわけにはいきませんから,その実態は不明です.
同じく進行性の肝疾患であるウイルス性肝炎は,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルスの感染により引き起こされますが,ウイルス肝炎マーカーの測定により,その診断は比較的容易です.ウイルス性肝炎もNASHも肝癌のハイリスク群ですが,前者の場合は,ウイルス肝炎マーカー陽性者をリスク群とすることにより,効率的なサーベイランスが可能です.一方,NAFLDは頻度が高く,その中からNASHや肝癌のハイリスク群を拾いあげることは難しいのが現状です.
治療に関しても,NASHとウイルス性肝炎のおかれている状況は著しく異なります.ウイルス性肝炎の場合は,C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)やB型肝炎に対する核酸アナログのように,特異的な治療薬があります.しかし,NASHの場合は診断されても,有効な薬物治療法が確立していないことが問題です.
このように,NAFLD・NASHの診療に関してはバイオマーカーの開発などの新しいブレークスルーが必要であり,同時に新規の治療薬の開発が期待されています.
NAFLD・NASHは肝臓学の研究,臨床において現在最重要のテーマの一つになっています.本書は,前著である「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」を6年ぶりに大幅に改訂したものです.本疾患の現在おかれている状況を的確に纏め,今後進むべき方向を示す書籍として,多くの先生方に利用されることを期待しています.
2021年3月
一般社団法人日本肝臓学会理事長
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
竹原徹郎
1.非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDとは
2.疾患概念の変遷と臨床現場での認識の変化
3.NAFLDの定義(診療ガイドラインに準拠した定義)
第2章 NAFLDの疫学
1.NASH・NAFLDの有病率
1 有病率と性別・年齢・地域との関連
2 有病率とBMIとの関連
3 線維化への進展
2.NAFLDにおける生活習慣病の頻度
3.非肥満患者におけるNASH・NAFLDの有病率
[memo]アジア人における非肥満NAFLD
4.小児におけるNASH・NAFLDの有病率
[memo]B, C型慢性肝炎治療後の脂肪肝
第3章 NAFLDの病因・病態
1.NAFLDの基本的病因・病態
1 肥満
[memo]メタボリックシンドローム
[memo]アディポサイトカイン
2 インスリン抵抗性
2.NAFLDの発症機序
1 遺伝的素因
1)PNPLA3 遺伝子
2)NAFLD病態に関与するその他の遺伝子多型
a.TM6SF2
b.CKR
c.MBOAT7
d.DYSF
e.PEMT
2 脂肪肝形成にかかわる脂質代謝
1)脂肪酸およびTG合成系
[memo]adenosine monophosphate(AMP)activated protein kinase(AMPK)
2)肝細胞での脂肪酸酸化
3)肝細胞からのTGの血中放出
3.脂肪肝に伴う肝細胞傷害の機序
1 酸化ストレス
[memo]活性酸素種(ROS)とROS消去系
1)ミトコンドリアの異常
2)ミクロソームおよびペルオキシソームの関与
2 脂肪毒性
3 腸内細菌叢の変化と自然免疫系
4 NAFLD病態形成に関与するその他の要因
第4章 NAFLDの検査所見
1.肝脂肪化診断に有用な画像検査
1 腹部エコー検査
2 VCTE
3 MR spectroscopy(MRS)
2.肝線維化診断に有用な血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステム
1 肝線維化マーカー
2 スコアリングシステム
3.肝線維化診断に有用な画像検査
4.肝生検の適応症例
5.肥満・2型糖尿病患者におけるスクリーニング
第5章 NAFLDの病理所見
1.はじめに
2.病理所見
1 ballooningの評価
2 マロリー・デンク体の評価
3 脂肪化の評価
4 線維化の評価
3.所見の記載と総合評価
4.参考資料
5.まとめ
第6章 NAFLDの治療
1.はじめに
2.NAFLDの治療方針
3.食事療法・運動療法
4.薬物療法
1 糖尿病治療薬
1)チアゾリジン薬
2)SGLT2阻害薬
3)GLP-1 受容体作動薬
4)ビグアナイド薬(メトホルミン)
2 脂質異常症治療薬
1)スタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
2)フィブラート系薬剤
3)エゼチミブ
3 降圧薬
1)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),ACE阻害薬
4 抗酸化療法
1)ビタミンE
2)ペントキシフィリン
3)ベタイン
4)瀉血療法
5 肝臓用薬
1)ウルソデオキシコール酸
2)強力ネオミノファーゲンシー®
6 現在開発中の薬剤
5.外科療法
1 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術,腹腔鏡下胃バイパス術
2 肝移植
第7章 NAFLDの予後
1.はじめに
2.NAFLDの予後
3.NAFLの予後
4.NASHの予後
5.NASH肝硬変
6.NASH肝細胞癌の特徴