ビジュアル解説で最先端の超音波画像の評価・活用を突き詰める!
運動器理学療法超音波フロンティア Vol.2
内容
序文
主要目次
例えば,整形外科領域では関節鏡の開発・導入が病態理解や手術手技の大きな進歩をもたらしました.運動器理学療法領域では昨今の超音波診断装置の発展がまさにこれに当たります.画質の良い超音波画像は,我々理学療法士が“こうなっているであろう”と思っていた皮下組織の状態を明らかにできるものであり,新しい知見の発見や思い込みによる間違いの解消につながる重要なツールです.
一方で,目に見えるものを拡大解釈することは正しい答えに辿り着かないことも近年わかってきました.典型的なものとしては,MRI画像で構造的な異常が見つかっても,それがイコール痛みの原因ではないことがよく知られています.無症状の人でも画像上の異常が見つかることは珍しくありません.これは超音波画像においても同じことがいえます.
超音波診断装置が理学療法においても身近になってきている今こそ,運動器理学療法においてどのように用いるかを再考すべきであると感じています.臨床能力が優れている先生方は,患者さんに対面してプローブを当てるまでに,問診や触診といった情報収集とそこから考えられる仮説を立てています.その仮説を検証するために超音波画像を大きな武器としています.また,その武器を最大限に活かすために,超音波によって見えているものが何なのかをよく理解しています.
今回,小生が大会長を務めさせていただいた第2回日本運動器理学療法超音波フォーラムでは「運動器理学療法における超音波評価」をテーマとさせていただきました.「エラストグラフィー」,「動態,滑走」,「輝度,血流,ハイドロリリース」の3つのシンポジウムにおいて,運動器超音波の最前線を行く14名の講師の先生方にご登壇いただいています.講師の皆様にはこれまでの超音波評価の振り返りや正しい解釈,留意点について提示していただくとともに,最先端の超音波評価について紹介していただきました.運動器超音波がより質の高い理学療法をもたらすための一助となるようなフォーラムであったと感じています.
国際的にみて運動器超音波は理学療法先進国といわれるアメリカ合衆国やイギリス,オーストラリアにおいても,診療報酬が取れないことが大きな壁となり,まだまだ十分に普及していないようです.しかしながら,運動器超音波が必要な評価と正しい使用を突き詰めることにより,その壁を取り除くことが可能ではないかと,本書に寄せられた原稿を目にして思わずにはいられません.ご寄稿いただいた先生方に心より感謝いたします.最後に,本書の企画,編集,出版に当たり多大なご尽力をいただいた文光堂編集企画部の中村晴彦氏に深謝いたします.
2022年5月
第2回日本運動器理学療法超音波フォーラム大会長
東北大学病院リハビリテーション部 村木孝行
Introduction
1 エラストグラフィの基礎と評価への応用
2 大腿直筋に加わる力学ストレスに筋内部位差は存在するか?
3 肩後方タイトネスと肩関節運動時における上腕骨頭の変位方向
4 上腕三頭筋長頭周辺の組織弾性と肩関節可動域との関係
5 超音波エラストグラフィによる膝窩筋腱の伸長量評価
CHAPTER 2 超音波を用いた最新の動態・滑走評価とその工夫
Introduction
1 超音波を用いた動態評価の今そしてこれから
2 超音波診断装置を用いた足部腱滑走距離計測の定量評価法の確立―Thiel法固定遺体,生体を用いた検証―
3 野球肘に対する肘外反動揺性の定量評価と肘装具の制動効果―超音波診断装置を用いた検証―
4 超音波診断装置を用いた妊産婦に対する骨盤底筋群評価
5 ランニング時の大腿部皮膚の挙動について
CHAPTER 3 超音波評価における輝度・血流の診かたとhydroreleaseの応用
Introduction
1 超音波による血流評価の基礎と臨床応用
2 超音波エコー輝度を用いた筋質評価とその応用
3 投球障害肩を超音波とhydroreleaseで評価する―可動域制限に着目して―
4 肩腱板断裂修復術後症例の超音波血流評価
動画一覧とURL
索引