腰痛治療に必要な腰痛・腰下肢痛の科学と臨床の最新知識!
痛みのScience & Practice 4
腰痛のサイエンス
内容
序文
主要目次
☆図版76点,表組31点,カラー写真33点,モノクロ写真37枚
タイトルを「腰痛のサイエンス」としていますが,今回は腰下肢痛を含めた腰痛を取り上げています.腰痛・腰下肢痛は,日常診療で経験する痛み患者の多くの部分を占めている頻度の高い痛みの疾患です.しかしながら残念なことに,腰痛・腰下肢痛の生じる機序解明は十分には進んでおらず,「痛みの科学」としては不十分な点が多く存在します.一番多い腰痛は,腰痛の原因が明らかでない非特異的腰痛です.さらに慢性の腰痛は,心理面を含め多くの要因が関与しています.
腰痛・腰下肢痛のなかで,神経圧迫などによる神経障害性痛・炎症による痛みは,理解しやすい病態です.また原因がはっきりしている腰痛は治療戦略も立てやすくなります.しかしながら画像や血液検査などで異常所見がみられない(すなわち,器質的変化のない)非特異的腰痛は,治療にあたってはさまざまなアプローチが必要になることも少なくないものと思います.必要となる治療法には,薬物療法・リハビリテーション・神経ブロック・認知行動療法などさまざまな手法があります.これらの方法を単独で用いても効果が得られない場合はその方法を変更したり,また他の方法と併用したりします.それでも十分な治療効果が得られない患者が多く存在します.
今回の企画では,腰痛をできる限り科学的なものの見方で理解できるように構成しました.まず第1に腰痛が発症するメカニズムを理解するための解剖を解説頂き,さらに椎間板ヘルニアなどの代表的な腰痛を発症する病態や痛みを発症するメカニズムを解説して頂きました.次にこれらの腰痛の病態のScienceに基づいて,腰痛のracticeを解説して頂きました.診断・治療について整形外科・麻酔科の先生方にその専門分野について述べて頂いた上で,治療法の選択に関する考え方を述べて頂きました.さらには,腰痛に対する心理療法・認知行動療法の有用性・適応などを述べて頂きました.本書は,現在の腰痛治療のすべてを網羅しているものと考えています.
以上のように,本書は1冊で腰痛・腰下肢痛の基礎と臨床を余すところなく理解できるように企画しています.本書が,日本における腰痛治療の向上の一助となるように期待しております.
2014年5月
熊本大学医学部麻酔科 山本達郎
腰痛とは?
解説
Ⅰ.腰痛のサイエンス
1 腰痛を理解するための臨床解剖
2 腰痛の疫学
1)グローバルな現状
2)わが国における最近の知見
O. 腰痛と遺伝子多型
3 腰痛を起こす病態の生理
1)病変部位と病態
2)腰椎椎間板ヘルニア
3)脊柱管狭窄症
4)骨粗鬆症性椎体骨折
5)骨転移
6)腰椎変性側弯症
7)椎間関節と仙腸関節の痛み
8)failed back syndrome
9)非特異的腰痛:急性腰痛
O. 急性腰痛に安静は必要か
10)非特異的腰痛:慢性腰痛
II.腰痛のプラクティス
1 腰痛診断
1)総論
2)腰痛の随伴症状からの診断
3)症状からみた障害部位の推定
4)症状による検査の選び方:画像診断
5)症状による検査の選び方:診断的ブロック
6)症状による検査の選び方:電気生理学的診断
7)腰痛患者の心理的問題
8)ペインクリニック医からみたブロックのための腰痛診断
9)腰痛の評価法
O. 腰痛診療ガイドラインからみた腰痛診断
O. 心理的問題の評価法
2 腰痛の病態の違いによる治療選択の考え方
- NTT東日本関東病院での診断・治療-
3 腰痛の薬物治療
O. 漢方薬の可能性
4 神経ブロック療法
1)トリガーポイントブロック
2)硬膜外ブロック
3)神経根ブロック
4)椎間関節ブロック,脊髄後枝内側枝ブロック
5)経皮的椎間板の切除
6)脊髄電気的刺激法
5 外科治療
1)固定術の適応と実際
2)腰椎除圧術の適応と実際
3)椎間板切除術の適応と実際
O. エピドラスコピー
O. 経皮的椎体形成術
6 物理療法・装具療法・運動療法
1)選択の基本方針
2)物理療法の実際
3)装具療法の実際
4)運動療法の実際
O. 鍼灸治療の可能性
O. 腰痛予防
7 心身医学的治療
1)心身医学的治療の基本方針
2)カウンセリング
3)認知行動療法
8 腰痛治療の選択
1)整形外科(脊椎脊髄専門医) へ紹介するタイミング
2)心療内科への紹介のタイミング
3)集学的なアプローチ
索引