改訂版が7年ぶりに完成!非がん性慢性疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の有効かつ適切な使用のためのスタンダード
非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版
内容
序文
主要目次
オピオイド鎮痛薬は,オピオイド受容体に結合することで鎮痛作用が得られる薬物であり,国内外で様々な疾患に対する疼痛緩和や検査・手術時の鎮痛に使用されています.オピオイド鎮痛薬の使用に関しては,使用目的や病態により,用量や用法,投与期間などに関して,異なるスタンスで治療にあたることが望まれます.
特に,非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方に関しては,生命予後の比較的良好である有痛患者が対象の大部分を占め,長期使用や高用量使用などの問題が憂慮されるため,本邦において適正使用を推進するために,広く共有できるガイドラインが必要とされています.また,米国を中心とした欧米諸国では,医療用麻薬の依存や乱用が社会的な問題となって長期化していることもあり,本邦では医療者と患者,そして社会全体がオピオイド鎮痛薬に対する正しい理解を深めることで,依存や乱用の予防につながることが期待されます.
このような観点から,日本ペインクリニック学会では,2012年に「非がん性慢性[疼]痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」(第1版)を発行し,2017年に改訂第2版を発行しております.第1版発行時には,本邦における非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用経験が不十分な状況であったことから,BQやCQを設けずに教科書的な内容のガイドラインとしてまとめられています.その後の改訂第2版では,CQを設けてエビデンスと推奨を提示しています.今回の改訂第3版に関してもCQ形式に統一し,すべてにSummary Statementを作成し,Mindsに基づいてシステマティックレビューや複数のRCTにより有効性が立証されたものだけにエビデンスと推奨を記載しています.さらに本ガイドラインの新規性は,患者への副作用を最低限に留めて生活の質(QOL)の改善薬としてオピオイド鎮痛薬を有効に活用するために,処方期間や用量,減薬・中止,副作用とその対策なども詳細に記載しており,疾患別有効性や特殊な状況に対する使用留意点などをまとめているところにあります.そして,非がん性慢性疼痛に対して使用できるオピオイド鎮痛薬が剤型も含めて多種となっていることから,知識を整理するためにも,各薬剤に関して薬理学的に解説しております.そのうえで,第1版から改訂第3版まで,
1)オピオイド鎮痛薬に関する社会の秩序を守る
2)オピオイド鎮痛薬の乱用・依存から患者を守る
3)オピオイド鎮痛薬を用いて患者のQOL を改善する
とした3段階式のポリシーは揺らぐことはありません.
本ガイドラインは,多くの医療従事者の方々に参考にしていただくことを目的として,ワーキンググループが精魂こめて作成致しましたので,どうぞご活用頂ければ幸いです.
最後に,多くの御尽力をいただきましたワーキンググループメンバー・協力者の皆さま,コアメンバーの皆さま,事務局の皆さまにも,この場をお借りして心よりお礼申し上げます.
令和6年5月吉日
一般社団法人日本ペインクリニック学会 代表理事
非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン作成ワーキンググループ長
井関 雅子
発行にあたって
目次
作成メンバー
利益相反(COI)
はじめに
本ガイドラインの作成方法
Ⅰ.オピオイドとは
CQ1‒1:オピオイドとは?
CQ1‒2:オピオイド受容体とは?
CQ1‒3:オピオイド鎮痛薬とは?
CQ1‒4:強オピオイド鎮痛薬,弱オピオイド鎮痛薬とは?
CQ1‒5:医療用麻薬とは?
Ⅱ.オピオイド鎮痛薬各論
CQ2‒1:コデインリン酸塩とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
CQ2‒2:トラマドール製剤とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
CQ2‒3:ブプレノルフィン貼付剤とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
CQ2‒4:モルヒネ塩酸塩とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
CQ2‒5:フェンタニル貼付剤とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
CQ2‒6:オキシコドン塩酸塩とはどのようなオピオイド鎮痛薬か?
Ⅲ.オピオイド鎮痛薬による治療
CQ3‒1:非がん性慢性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬は有用か?
CQ3‒2:どのような非がん性慢性疼痛患者にオピオイド鎮痛薬は有用か?
CQ3‒3:非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬による治療の目的は?
CQ3‒4:本邦において非がん性慢性疼痛患者に処方可能なオピオイド鎮痛薬は?
CQ3‒5:非がん性慢性疼痛に対してどのようなオピオイド鎮痛薬の製剤・剤型が適しているか?
CQ3‒6:非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬による治療が適応となる症例(条件)は?
CQ3‒7:オピオイド鎮痛薬による治療を避けるべき非がん性慢性疼痛患者の特徴は?
CQ3‒8:突然増強する非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使用をどのように考えるか?
CQ3‒9:非がん性慢性疼痛に対するオピオイドスイッチングは有用か?
Ⅳ.オピオイド鎮痛薬による治療の開始
CQ4‒1:オピオイド鎮痛薬による治療を開始する際に必要な患者評価は?
CQ4‒2:オピオイド鎮痛薬による治療を開始する際に確認しなければならないことは?
CQ4‒3:オピオイド鎮痛薬による適切な治療を行うにあたり,書面による説明・同意は有用か?
CQ4‒4:オピオイド鎮痛薬の最適な投与開始量とは?
CQ4‒5:オピオイド鎮痛薬の至適用量(適切な用量調節と投与量)の決定をどのように行うか?
CQ4‒6:オピオイド鎮痛薬治療中の適切な通院間隔は?
CQ4‒7:オピオイド鎮痛薬の投与量はどれくらいが最適か?
CQ4‒8:オピオイド鎮痛薬は治療期間を設定して使用を制限すべきか?
Ⅴ.オピオイド鎮痛薬による治療の副作用
CQ5‒1:オピオイド鎮痛薬による治療中に注意することは?
CQ5‒2:オピオイド鎮痛薬にはどのような副作用があるのか?
CQ5‒3:オピオイド鎮痛薬による悪心・嘔吐をどのように管理するのか?
CQ5‒4:オピオイド鎮痛薬誘発性便秘をどのように管理するのか?
CQ5‒5:オピオイド鎮痛薬誘発性便秘に末梢性μオピオイド受容体拮抗薬は有効か?
CQ5‒6:オピオイド鎮痛薬による眠気をどのように管理するのか?
CQ5‒7:オピオイド鎮痛薬の長期使用で注意しなければならない有害事象は?
Ⅵ.オピオイド鎮痛薬による治療の中止
CQ6‒1:オピオイド鎮痛薬による治療中止のタイミングは?
CQ6‒2:オピオイド鎮痛薬はどのように減量・中止したらよいか?
CQ6‒3:オピオイド鎮痛薬による治療が長期化,高用量化する可能性の高い患者の特徴は?
CQ6‒4:オピオイド鎮痛薬による治療が長期化,高用量化した患者への対応は?
Ⅶ.オピオイド鎮痛薬の不適切使用
CQ7‒1:オピオイド鎮痛薬の乱用とはどのようなものか?
CQ7‒2:オピオイド鎮痛薬の身体依存とはどのようなものか?
CQ7‒3:オピオイド鎮痛薬の精神依存とはどのようなものか?
CQ7‒4:オピオイド鎮痛薬の退薬症候とはどのようなものか?
CQ7‒5:オピオイド鎮痛薬の不適切使用に陥りやすい患者の特徴は?
CQ7‒6:オピオイド鎮痛薬の不適切使用をどのように評価したらよいのか?
CQ7‒7:オピオイド鎮痛薬の不適切使用に陥った患者への対処は?
CQ7‒8:オピオイド鎮痛薬の過量投与(呼吸抑制)とその対応は?
Ⅷ.オピオイド鎮痛薬による治療の適応疾患
CQ8‒1:オピオイド鎮痛薬による治療は慢性腰痛に対して有効か?
CQ8‒2:オピオイド鎮痛薬による治療は変形性関節症に対して有効か?
CQ8‒3:オピオイド鎮痛薬による治療は圧迫骨折の痛みに対して有効か?
CQ8‒4:オピオイド鎮痛薬による治療は帯状疱疹関連痛に対して有効か?
CQ8‒4‒1:トラマドールは帯状疱疹後神経痛に対して有効か?
CQ8‒4‒2:強オピオイド鎮痛薬は帯状疱疹後神経痛に対して有効か?
CQ8‒5:オピオイド鎮痛薬による治療は有痛性糖尿病性神経障害に対して有効か?
CQ8‒6:オピオイド鎮痛薬による治療は慢性術後痛に対して有効か?
CQ8‒7:オピオイド鎮痛薬による治療は脊髄損傷後疼痛に対して有効か?
CQ8‒8:オピオイド鎮痛薬による治療は幻肢痛に対して有効か?
CQ8‒9:オピオイド鎮痛薬による治療は複合性局所疼痛症候群の痛みに対して有効か?
CQ8‒10:オピオイド鎮痛薬による治療は視床痛に対して有効か?
CQ8‒11:オピオイド鎮痛薬による治療は化学療法誘発性末梢神経障害の痛みに対して有効か?
CQ8‒12:原則としてオピオイド鎮痛薬が推奨されない病態は?
Ⅸ.特殊な状況でのオピオイド鎮痛薬処方
CQ9‒1:妊娠中の患者に対するオピオイド鎮痛薬処方をどのように考えるか?
CQ9‒2:高齢の患者に対するオピオイド鎮痛薬処方の留意点は?
CQ9‒3:腎機能障害患者に対するオピオイド鎮痛薬処方の留意点は?
CQ9‒4:肝機能障害患者に対するオピオイド鎮痛薬処方の留意点は?
CQ9‒5:睡眠時無呼吸症候群患者に対するオピオイド鎮痛薬処方の留意点は?
CQ9‒6:労働災害患者に対するオピオイド鎮痛薬処方をどのように考えるか?
CQ9‒7:AYA世代患者に対するオピオイド鎮痛薬処方をどのように考えるか?
Ⅹ.その他
CQ10‒1:オピオイド鎮痛薬と鎮痛補助薬の併用は有効か?
CQ10‒2:オピオイド鎮痛薬による治療中の自動車運転をどう考えるか?
CQ10‒3:オピオイド鎮痛薬による治療中の海外渡航で留意するポイントは何か?
CQ10‒4:非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方のガイドラインにはどのような限界があるか?
付記:本邦における非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方の医療保険制度上の留意点
Appendix
索引