医学生,レジデントに必要な血液疾患診療の知識が網羅された実践的な1冊
Principles and Practice 血液・造血器・リンパ系(電子版のみ)
医学生・レジデントのための必修エッセンス
内容
序文
主要目次
☆図版130点,表組117点,カラー写真60点,モノクロ写真100点,イラスト・線画18点
本書は,クリニカル・クラークシップ実習を行う医学生,および血液学の知識をレビューしたい初期研修医,という異なる読者をあえて意識して編集するよう企画された.このため,医学部医学科のモデル・コア・カリキュラムを参考に,執筆者には血液学の基礎領域と臨床領域の内容をバランスよく配したテキストになるよう記述していただいた.
医学生が勉強しなければならない範囲と量は膨大である.現在書店に並んでいる教科書の中には,国家試験のために勉強しなければならない内容を,イラストとともにコンパクトにまとめたような,非常に合理的なものも散見され,学生が効率よく勉強できるようになっていると実感する.このことは歓迎すべきであろう.分厚い教科書から必死で要点を読み取ろうとしていた時代とは,隔世の感がある.一方,全ての領域とはいわずとも,一部の領域については必要最小限のレベルを超えて勉強して欲しいとも思う.
本書編集に当たっては,合理性,手頃な分量と価格,知識の欲求の充足,というポイントをなるべく1冊にまとめる,という欲張った目的が込められた.そのため,企画段階では筑波大学医学生の石川隆昭君に意見を求め,その意見をなるべく取り入れるよう努力した.例えば,各項のはじめにその項のまとめをできるだけイラストを取り入れて記載し,さらに小見出しごとに要約文を簡潔にまとめてある.また,知識を標準レベル,上級レベルの2段階に分け,上級レベルの知識についてはMemoとして記載してある.ここに記述してあることの多くは,学生レベルでは必ずしも必要ではないことかもしれないが,知識の欲求に応じて,読んでみていただければと思う.さらに,各著者が優良サイトとして勧めるweb サイトを掲載している.これも,関心に応じて利用していただきたい.
編集段階では,原稿が上記の目的にできるだけ合致するよう,編集部から執筆者にさまざまなお願いをさせていただいた.一部の著者には,無理難題をお願いすることにもなった.この場をお借りしてお詫び申し上げたい.編者のわがままを我慢しておつきあいいただき,浅学を補い修正いただいた執筆者の諸先生方に,深甚の感謝を申し上げる.
本書の意図がどこまで読者に伝わるかは,実際に勉強した学生や研修医の声を待つしかない.少しでも有用と感じる読者がいれば,望外の喜びである.
最後に,本書の完成まで粘り強く編者と意見交換してくださった文光堂編集企画部の末冨聡氏および浅井麻紀氏に,心から御礼を申し上げる.
2015年10月
千葉 滋
1.血液の構成成分
2.赤血球の形態・構造と機能
3.ヘモグロビンの産生と鉄代謝
4.白血球の種類・構造・機能(顆粒球・単球)
5.リンパ球の種類と機能,免疫グロブリンの産生
6.血小板の構造と機能
7.凝固・抗凝固と線溶
8.骨髄の構造
9.胸腺・脾臓・リンパ節の構造と機能
10.造血幹細胞から各血球への分化
2章 病態と症候,鑑別診断
1.貧 血
2.出血傾向
3.リンパ節腫大・脾腫大
4.血 栓
3章 診断と検査の基本
1.血算の基準値
2.骨髄穿刺吸引・骨髄生検
3.リンパ節生検
4.抗原同定(フローサイトメトリー)
5.染色体検査
6.遺伝子検査
7.ヒト白血球抗原(HLA)
8.血液疾患の画像検査
4章 治療総論
A.腫瘍そのものに対する治療
1.抗腫瘍薬(分子標的治療薬を除く)
2.分子標的治療薬
3.造血幹細胞移植
B.ステロイドと免疫抑制薬
C.欠乏の補充療法
D.血球減少と免疫不全に対する支持療法
1.輸 血 ─血球と血漿の減少に対する補充療法─
2.サイトカイン療法─好中球減少と貧血に対する支持療法
3.感染症対策─好中球減少と免疫不全に対する支持療法─
5章 疾患の病因,病態,診断と治療
A.貧 血
1.鉄欠乏性貧血
2.巨赤芽球性貧血
3.溶血性貧血
4.赤血球膜の異常もしくは代謝異常に伴う貧血
5.ヘモグロビン産生異常
6.再生不良性貧血
B.白血病と類縁疾患
1.急性骨髄性白血病
2.急性リンパ性白血病
3.慢性骨髄性白血病
4.慢性リンパ性白血病
5.骨髄異形成症候群
6.骨髄増殖性腫瘍
C.リンパ腫と骨髄腫
1.ホジキンリンパ腫
2.非ホジキンリンパ腫
3.成人T細胞白血病
4.多発性骨髄腫
5.マクログロブリン血症
6.原発性アミロイドーシス
D.出血性疾患
1.血管性出血傾向
2.特発性血小板減少性紫斑病
3.血小板機能障害
4.凝固因子障害
5.播種性血管内凝固
E.血栓性疾患
1.血栓性血小板減少性紫斑病,溶血性尿毒症症候群
2.先天性アンチトロンビン,先天性プロテインS,先天性プロテインC欠損症
付録
●索引