炎症性皮膚疾患の組織パターンによる診断過程を示した実践書!
皮膚病理のすべてⅡ 炎症性皮膚疾患
内容
序文
主要目次
3巻シリーズの「皮膚病理のすべて」の,「第Ⅱ巻 炎症性皮膚疾患」をお送りいたします.このシリーズは,パターン分類を基に,病理標本よりえられる所見から,どのように皮膚病理診断をしていくのか,その思考過程を説明した本です.
皮膚は,他臓器に比べると,圧倒的に炎症性疾患の種類が多いと思われます.おそらく外界と接していて多種多様な外的刺激を受けやすいこと,種々の部位で環境がことなること,簡単に病変が目視でき,形態的相違が容易に認識できることなどがその原因と考えます.その多様性のため,炎症性皮膚疾患の病理診断は,非常に難しく,なかなか疾患特異的な診断ができず,所見記載的な診断にならざるをえないと考えている方も多いと思われます.しかし,本書をお読み頂ければ,そうではないことがお判り頂けると思います.
パターン分析を用いた診断法は,Ackermanが提唱した方法で,最初に臨床情報を得ずに標本観察から出発して病理診断を考える方法です.もちろんこの方法であっても,最終的には臨床情報とのすりあわせを行って,診断を確定することが必要です.従来の,臨床診断(情報)をみてから病理診断を考える方法では,臨床診断でよいのかどうかの診断,つまり,「○○として矛盾しない」という診断になりがちなところ,この診断法では,疾患の見落としが少なく,より特異的な診断が行えるようになると考えています.皮膚科臨床では,臨床所見や臨床診断を知った上で病理標本の検鏡を行うことが多いのですが,その場合でも,常に先入観を持たず標本の観察から出発して,できるだけ多くの鑑別疾患を想定しながら病理診断を考えるという姿勢を持つべきだということがお判り頂けると思います.
臨床症状と病理所見は表裏一体のものであり,「臨床をみて病理を考え,病理をみて臨床を想像する」ことが重要です.このことが,臨床診断能力および病理診断能力の両方を向上させるコツだと思います.それを助けるため,本書では,臨床病理相関という項を設けて肉眼的臨床症状と病理組織所見の対応を記載してあります.
本書では,皮膚病理のベテランから若手まで,多くのエキスパートの先生方にご執筆頂きました.各先生方が,日頃実際に病理標本と向き合ったときにどのように診断を確定していくのかの過程を示して頂きました.多くの先生方が,このパターン分析を用いて,臨床症状と病理所見を関連付けながら診断を考えているということがお判り頂けると思います.
最後,本書の編集にあたり,編者としてお迎え下さった宮地良樹先生,真鍋俊明先生,そして,制作にご尽力下さった文光堂編集企画部の皆様に深謝いたします.
本書が,炎症性皮膚疾患の病理診断におけるバイブルとなることを確信しています.では皆様,炎症性皮膚疾患の皮膚病理診断の世界をぜひお楽しみ下さい!
2020年9月 COVID-19の第2波が終息しつつある中
編者を代表して
安齋 眞一
日本医科大学医学部皮膚科学教授
はじめに
第Ⅱ章 症例解析──病理診断へのアプローチ
[症例1]Superfi cial perivascular dermatitis, perivascular mostly
[症例2]Superfi cial perivascular dermatitis, perivascular and interstitial
[症例3]Interface dermatitis, superfi cial, vacuolar(Vacuolar dermatitis)
[症例4]Interface dermatitis, superfi cial, lichenoid(Lichenoid dermatitis)
[症例5]Spongiotic dermatitis, superfi cial, spongiotic only
[症例6]Psoriasiform dermatitis, superfi cial, psoriasiform only
[症例7]Superfi cial and deep perivascular dermatitis, perivascular only
[症例8]Interface dermatitis, superfi cial and deep, vacuolar(Vacuolar dermatitis, superfi cial and deep)
[症例9]Interface dermatitis, superfi cial and deep, lichenoid(Lichenoid dermatitis, superfi cial and deep)
[症例10]Spongiotic dermatitis, superfi cial and deep, spongiotic only
[症例11]Psoriasiform dermatitis, superfi cial and deep, lichenoid
[症例12]Vasculitis, small vessel, neutrophils prominent
[症例13]Nodular dermatitis, histiocytes prominent(granulomatous)
[症例14]Diff use dermatitis, neutrophils predominate
[症例15]Spongiotic vesicular dermatitis, spongiosis with lymphocytes, superfi coal
[症例16]Ballooning vesicular dermatitis, superfi cial and deep
[症例17]Acantholytic vesicular dermatitis, subcorneal
[症例18]Spongiform pustular dermatitis
[症例19]Pustular dermatitis, subepidermal, eosinophils prominent
[症例20]Perifolliculitis, lymphocytic and lymphoplasmacytic
[症例21]Folliculitis, eosinophils prominent
[症例22]Sweat duct and gland dermatitis, apocrine
[症例23]Fibrosing dermatitis, collagenous
[症例24]Septal panniculitis without vasculitis
[症例25]Lobular panniculitis without vasculitis
[症例26]Lobular panniculitis with vasculitis
付 録 参考資料
付録1 炎症性皮膚疾患におけるパターン分類
付録2 参考・推薦図書
索 引