透析について話し合うための準備を1時間でしよう!
透析の話をする・聞く前に読む本(電子版のみ)
内容
序文
主要目次
☆図版37点,モノクロ写真42点
「腎臓が悪いから透析が必要になる」といわれました.担当の医師や看護師が丁寧に説明してくれたのですが,何しろ長いので,最初の方はわかっていたんですけど,最後のほうは疲れたしもうわからなくなったので『はい』っていっちゃいました.もう1回か2回聞きたいんだけど,先生はお忙しそうだし……」.
「研修で腎臓の患者さんを担当したんです.指導の先生が患者さんに説明するのに同席したんですけど,よくわからなくて.患者さんやご家族に何か聞かれたらどうしよう.わからないのは格好悪いけど,医者向けの透析の本ってなんだか分厚くて,難しくて読み通せないんです」.
この本は患者さんと医療スタッフの距離を近づけるためにほとんど専門用語を使わずに書きました.私が患者さんや学生さん,研修医の方などに説明するときのお話をほぼそのまま文章にしてありますから,読み通しても1時間くらいしかかからないはずです.腎臓や透析の細かい話は省いてありますから医療スタッフにとっては物足りないかもしれませんが,患者さんに説明するときの参考にしてください.
腎臓病や透析について一番大事なことは何でしょう.それは患者さんに安心して生活してもらうために,患者さんやそのご家族透析の話を聴く/する1時間前に読む本と医療スタッフがお互いに信頼することです.そして信頼するためには同じ言葉で話をして,お互いがどんなことを考えているかを知るのがとても大切です.
病気のことを勉強してくださる患者さんもいますが,同じ言葉を使うならば医療者が専門用語を普通の言葉に替えたほうがお互いにわかりやすいようです.細かい話はできなくなるかもしれませんが,大切なこと,本当に必要なことをしっかり理解することが大切です.そして医療者の方ではその患者さんがどのくらい理解しているかを知ることで,よりよい医療を提供できます.患者さんと医療スタッフが同じ場所に立って腎臓病に向き合うための地図にこの本がなってくれれば,本当に嬉しく思います.
本当にエッセンスのみに絞った内容ですが,それでも本を一冊書き上げるためにはこれまでの私の経験が役に立っているのだと思います.その経験を支えてくださったすべての医療スタッフの方々,患者さんとそのご家族に心より感謝申し上げます.
平成27年1月吉日
東京医科大学腎臓内科学分野教授
菅野義彦
II章 腎臓のしくみと腎不全
Chapter 1 腎臓の働きは尿の生成により身体から老廃物や余分な水分を捨てること
Chapter 2 腎臓が働いているかどうかの判断
Chapter 3 慢性腎臓病(CKD)
Chapter 4 腎臓病の特徴
Chapter 5 腎臓が悪くなる3つのしくみ
III章 透析療法とはどんなもの?
Chapter 1 腎不全の治療─透析療法
Chapter 2 透析療法の本質
Chapter 3 血液透析のものすごい効果
Chapter 4 導入の基準~透析をいつ始めるか?~
Chapter 5 血液透析療法の実際
Chapter 6 血液透析の細かい話(シャントとダイアライザー,透析液,モニタリング)
Chapter 7 ドライウェイト
Chapter 8 検査値のみかた
Chapter 9 栄養管理について
Chapter 10 感染管理
Chapter 11 合併症
Chapter 12 薬の飲み方
Chapter 13 血液透析の弱点
Chapter 14 透析導入後の腎臓
Chapter 15 血液透析のメリット
Chapter 16 透析医療とチーム医療
Chapter 17 血液透析以外の治療法(腎代替療法)
Chapter 18 再生医療について
IV章 緊急透析
Chapter 1 緊急透析の適応
Chapter 2 それでも緊急透析をやらないとき
Chapter 3 透析の代わり
V章 歴史・社会
Chapter 1 透析療法の歴史
Chapter 2 社会保障
VI章 透析の未来
索引