学生・若手PT必読の脳卒中に対する標準的理学療法介入の定番テキスト,待望の大改訂!
脳卒中に対する標準的理学療法介入第2版
何を考え,どう進めるか?
内容
序文
主要目次
第2版の発行に寄せて
現在,脳卒中(脳血管疾患)は,わが国の死因の第4位を占め,その患者数は平成26年の厚生労働省による調査では117万9,000人に達しています.後遺症に悩む患者や家族が多く,寝たきりの高齢者の3割,要介護者の2割を脳卒中患者が占めており,社会的負担の極めて大きな疾患となっています.こうした状況から,脳卒中に対する理学療法の重要性は,今後もますます高くなっていくものと推測されます.
本書が2007年に発行されて以来,早いもので10年の歳月が流れました.この間,脳卒中理学療法に関連する数多くの新しいエビデンスが明らかにされてきました.
幸いなことに,本書(第1版)が多くの読者に受け入れられたことは,編集者としてこの上なく嬉しいことです.しかしながら,10年の経過とともに,内容的に古くなった知見や,現状にマッチしない項目などが見受けられるようになりました.そこで,今回の改訂では,項目の入れ替えと,それに伴い新たに執筆者を加え,より充実した内容にリファインしました.特に,第1版と異なる点は,イラストよりも写真を多用することでリアリティを高めたこと,また重要な語句や文(節)を太字にするなど強調することで,より理解しやすくなるよう工夫したことです.さらに,臨床で活躍されている理学療法士はもちろんのこと,理学療法士を目指す学生にも理解できるよう,全体を通じてわかりやすい記述を心がけています.
わが国では,理学療法士養成施設数が比較的短期間に増大したこともあり,理学療法士は量的には充足されたものの,質的にまだ十分とは言い難い状況にあります.多様な社会的要請に応え,より適正かつ質の高い医療を提供していくためには,理学療法士一人ひとりの日々の研鑽が不可欠であることは言うまでもありません.第1版でも述べたように,本書の目的は,脳卒中に対する標準的理学療法の指針を示し,国民に対する適正な理学療法の提供に資することにあります.そのため,広く読者の皆様からの忌憚のないご意見をいただき,ご要望にお応えしながら,今後も改善を重ねていきたいと考えています.
2017年4月
帝京科学大学教授
潮見 泰藏
1 脳卒中に対する標準的理学療法介入の必要性
脳卒中理学療法の新しいパラダイム
1 脳卒中に対する標準的理学療法介入の必要性
2 理学療法モデルにおけるパラダイムの転換
3 脳卒中に対する理学療法モデルのプロセス
4 理学療法評価との整合性をもつ課題指向型トレーニングの展開
5 運動学習に基づいた脳卒中理学療法の展開
6 機能的トレーニングをどのように進めるか?
2 脳卒中の病態と診断
1 脳卒中の診断をつける
2 脳梗塞急性期の病態を理解する
3 脳画像の基本,画像情報の活かし方
1 画像の基礎知識
2 代表的な脳卒中画像の特徴と確認すべきポイント
3 リハビリテーションへ画像を活かすためのシステマティックな画像の読影手順例
4 画像の活用とその限界
4 脳卒中に対する標準治療
1 脳卒中標準治療はガイドラインに沿って行う
2 脳障害後の回復過程
5 脳卒中後の回復メカニズム
1 脳傷害後の回復メカニズムを考える
2 有力視される回復モデルをみてみよう
6 効果判定,予後予測
1 介入効果の判定:帰結評価
2 予後予測
3 臨床評価指標の活用
7 臨床理学療法評価の進め方
1 脳卒中理学療法の概念と評価
2 脳卒中片麻痺者の障害構造の捉え方
3 片麻痺の姿勢や動作を理解するための概念
4 評価の視点
5 運動パターンを予測する姿勢の捉え方
6 クリニカルリーズニングとは
7 急性期の呼吸と姿勢管理が及ぼす姿勢筋緊張への影響
8 観念運動失行に対するアフォーダンスの応用
9 歩容改善へのチャレンジ
10 職場でできるクリニカルリーズニングトレーニング
8 動作分析の進め方
1 脳卒中患者に対する臨床意思決定過程における動作分析
2 課題指向型アプローチにおける動作分析
9 エビデンスの活用
1 エビデンスとは何か
2 質の高いエビデンスとは何か
3 エビデンスの探し方
4 エビデンスの活用例
10 脳卒中理学療法の背景理論とその臨床応用
1 脳卒中理学療法における背景理論
2 理学療法と運動学習の接点
3 Challenge Point Framework(CPF)
4 CPFの臨床応用
実 践 編
1 脳卒中患者に対する介入方略
1 脳卒中患者の障害をどう捉えるか?
2 症例に特有の問題を把握することが重要!
3 脳卒中に対する理学療法介入はこう考える!
4「 課題指向型アプローチ」とは?
5 理学療法アプローチの実際を考えてみよう!
6 運動スキルとパフォーマンスの向上をどう考えるか?
2 半側空間無視に対する対応
1 半側空間無視の評価と病態メカニズム
2 半側無視に対する治療アプローチ
3 半側無視症例への具体的理学療法アプローチの実際
3 Pusher症候群に対する対応
1 Pusher現象とは
2 Pusher現象の評価法と治療原則
3 具体的介入の実際
4 装具の選択基準と適応
1 AFOの機能とは何か?
2 AFOが歩行に及ぼす影響
3 効果判定の実際
4 AFOの作製時期における注意
5 嚥下障害に対する対応
1 摂食・嚥下を一連の活動の流れとして捉えよう
2 どうして困るのか?
3 まずメカニズムを知ろう
4 嚥下運動に影響を与える要因について知っておこう
5 評価のポイントは?
6 介入の考え方とポイントは?
6 バランスの評価とトレーニング
1 バランスの捉え方を考える
2 脳血管障害者のバランス機能
3 バランス機能向上のための介入方法とエビデンス(Randomized Control Trialに
よる)
7 上肢機能に対する対応
1 上肢と下肢の役割の違い
2 上肢機能に対する介入
3 活動と動作,心身機能の分析
4 関節可動域に対する介入
5 疼痛に対する介入
6 滞空運動
7 課題指向型トレーニング
8 基本動作獲得のポイント
1 基本動作とは
2 基本動作獲得のためのポイント
3 起居動作を獲得するための基本的な考え方
4 ベッドからの起き上がり動作における運動戦略
5 起き上がり動作における生体力学的メカニズム
6 立ち上がり動作における生体力学的特徴
7 臨床で陥りやすい誤った指導方法
8 起き上がり動作における初期の対応
9 体幹機能に対する対応
1 体幹機能とその制御
2 体幹制御機能の障害
3 脳卒中片麻痺患者の体幹機能の特徴
4 体幹機能の評価
5 脳卒中患者における体幹制御機能の障害
6 筋緊張の異常が体幹機能に与える影響
7 非麻痺側上肢側方リーチ時の構成要素
8 体幹機能と歩行との関係
9 体幹の制御機能を改善するためのトレーニング
10 体幹機能向上に向けたアプローチの有効性
10 歩行の準備と歩行トレーニング
1 歩行障害の原因と理学療法的対策
2 歩行獲得に必要な準備
3 歩行の自立,自動化に向けた介入方略
4 症例紹介
11 ADLの獲得に向けたトレーニング
1 日常生活活動(動作)とは
2 脳卒中理学療法のプロセス
3 ADL獲得のために
4 退院後に向けての調整
12 在宅生活における訪問理学療法の実践的介入
1 在宅における脳卒中理学療法とは
2 地域システムを理解しよう
3 訪問理学療法の前に
4 動作能力別の理学療法
5 在宅生活における理学療法の専門性
13 筋緊張異常に対する対応
1 筋緊張の異常の種類とメカニズム
2 筋緊張異常の評価方法は?
3 具体的介入方法:治療方略の考え方と具体的手段を知る
14 感覚障害に対する対応
1 体性感覚障害の特徴と運動機能との関係
2 体性感覚の神経機構とその障害
3 体性感覚障害への対応,介入方法
15 筋力の評価とトレーニング
1 脳卒中片麻痺者の下肢筋力を考える
2 脳卒中片麻痺者の下肢筋力は,歩行能力と密接に関係する
3 脳卒中片麻痺者の下肢筋力測定方法
4 下肢筋力トレーニング方法
5 具体的介入方法―自験例の紹介―
16 廃用症候群の予防
1 寝たきりプロセスとは?
2 廃用症候群―みつけやすい症候とみつけにくい症候―
3 常識の罠
4 寝たきりプロセスに陥らないために
5 老年症候群―寝たきり化のもう1つの原因―
6 寝たきりプロセスからの脱出
17 心肺フィットネスに対する対応
1 麻痺患者の体力をどう評価するか
2 体力医学的アプローチの実際
3 トレーニング効果の判定
18 運動失調に対する対応
1 小脳の機能は?
2 運動失調とは?
3 脳血管障害による運動失調の特徴は?
4 運動失調に対するアプローチの考え方
5 運動失調に対するアプローチの実際(症例を通して)
19 認知障害に対する対応
1 認知障害の臨床像
2 病態の理解と評価の実際
3 治療介入の実際
20 ハンドリングの実際
1 ハンドリングの目的と適応
2 誘導と介助
3 用手接触と生体の反応
4 誘導時の理学療法士の構えとポジション
5 全身的な反応と筋活動
6 促通と抑制の考え方と基本的手技
7 誘導の実際
21 リスク管理
1 リスクとは何か?
2 急性期の脳循環と血圧
3 いつから座位をはじめるのか?
4 座位トレーニングの手順を知る
5 心電図異常では何が要注意?
6 医療機器にも注意が必要?
7 回復期・維持期に必要なリスク管理を知る
索 引