外来で活かす!プライマリ・ケア医のための超音波検査
外来での疾患別プライマリ・エコー(電子版のみ)
プライマリ・ケアにおける超音波検査実践活用術
内容
序文
主要目次
“プライマリ・ケア”,すなわち診療所・クリニックや病院内の総合診療科・一般内科における診療の現場では,画像検査のツールとして超音波検査は欠かすことはできない.検査の目的としては「腹痛」,「肝機能障害」,「術後の転移検索」などのスクリーニング・精査や慢性肝炎の定期フォローのために施行するなど,腹部領域(肝臓・胆囊・膵臓・腎臓・脾臓など)の観察や診断に利用していることが多いと思われる.しかしながら,プライマリ・ケアの診療で対象になりうる疾患や病態はそれだけではなく,本書に示すようにきわめて多くの領域で超音波検査を活用することが可能である.たとえば内科領域であれば高血圧,動脈硬化,糖尿病,肝機能障害,慢性肝炎,腎機能障害,甲状腺疾患など多くの疾患が検査対象であり,その他,皮膚・皮下組織,血管の病変や運動器領域,腎・泌尿器,女性生殖器などさまざまな部位や疾患が超音波検査の対象であり,有用な情報を得ることができる.
すでに超音波画像を供覧した症例集や超音波診断のためのテキストは数多く存在するが,それは病院の超音波検査室で検査を担当する専属の医師や技師が利用することを念頭に書かれたものである.プライマリ・ケアの現場では超音波診断装置は検査室にとどまらず,今では外来の診察室に常設されることも多い.ポータブルの装置も数多くラインナップされており,その用途はベッドサイド,訪問診療など多種多様であり,また,依頼医師自らが探触子を握り,検査・診断していることも少なくなく,これらの状況を認識していなければならない.従来の超音波関連テキストは,超音波画像・診断に精通した超音波検査士・専門医がその立場から一方向的に解説し,記述したものである.しかし外来診療の主体はプライマリ・ケアに係わる臨床医であり,その視点からさまざまな領域に関連したニーズに応える超音波テキストが必要とされていたが,残念ながらそのようなテキストは見当たらなかった.
そこで今回,この要望に応えるべく本書を企画したが,その特徴は,①超音波検査が有用で診断可能な疾患,②疾患別・領域別超音波検査の活用法,③超音波読影のポイントやピットフォール,④検査後のフォロー間隔,精査・紹介のタイミングなど,臨床医が日頃診療で苦心していることについても言及しており,プライマリ・ケアの現場で実践的に活用できるように書かれていることである.
本書のタイトルにある『プライマリ・エコー』は,“プライマリ・ケア”の現場で“まず最初に”行ってほしい“重要な”検査がエコーである,という“primary”元来の意味を込めて提言させていただいた.プライマリ・ケアの現場で気軽に,しかも適切に超音波検査を使用していただき,診断の補助のみならず,専門機関へ紹介する際の目安や自施設でフォローしていく際の判断材料として,そしてこれからの外来における方向性を決める道標として本書を大いに活用していただければ幸いである.
2018年5月吉日
尾本 きよか
1 超音波装置の設定と探触子の選択
2 超音波報告書の作成~表示方法・超音波用語・記載項目~
I.循環器系疾患
1 二次性高血圧
2 腹部大動脈瘤
3 動脈硬化性疾患
II.消化器系疾患
1 慢性肝炎・肝硬変
2 検診で指摘された肝機能異常
3 検診で指摘された肝腫瘤精査
4 胆囊ポリープ
5 胆囊腺筋症
6 膵囊胞性腫瘤
III.内分泌・代謝系疾患
1 バセドウ病
2 橋本病
3 副腎疾患
4 糖尿病とその合併症
5 脂質異常症
IV.膠原病・免疫疾患
1 関節リウマチ
2 高安動脈炎(大動脈炎症候群,高安病)
V.運動器疾患
1 ガングリオン
2 ベーカー囊胞(囊腫)
VI.皮膚・皮下組織疾患
1 浮腫
2 血管腫(皮膚領域)
3 粉瘤
4 蜂窩織炎
5 脂肪腫
6 下肢静脈瘤
7 リンパ節腫大
VII.頭頸部疾患
1 甲状腺結節の取り扱い
2 唾液腺(耳下腺・顎下腺)
3 正中頸囊胞・側頸囊胞
VIII.泌尿器疾患
1 腎・尿管結石
2 水腎症
3 腎囊胞性疾患
4 腎腫瘍
5 前立腺腫大
IX.女性生殖器疾患
1 子宮筋腫
2 卵巣腫瘍
索 引
コラム
背景が脂肪肝のとき,肝腫瘤は何でも低エコーになる!?
腎動脈観察時の注意点
肝臓の硬さを定量的に評価!~超音波エラストグラフィ~
アミロイド沈着・インスリンボール