「運動のつながり」に着目すれば,肩の運動機能の理解がより深まる!臨床手技の幅が広がる!!
運動のつながりから導く肩の理学療法
内容
序文
主要目次
すでに皆さんもご承知のように,肩関節の運動は複雑です.そのため,肩関節の運動機能を理解するためには,複数の関節の機能や各関節間の「運動のつながり」を理解する必要があります.私自身は1992年に昭和大学藤が丘リハビリテーション病院に入職した時に,「運動のつながり」という考え方をはじめて知りました.当時の昭和大学藤が丘リハビリテーション病院は技士長である山嵜勉先生のもと,入谷誠先生は足,福井勉先生は膝,山口光國先生は肩の分野でそれぞれ活躍されている時で,私は入谷先生のもとで足底板を学ばせて頂くことになりました.私は入谷先生の足底板療法を通して,足から膝,股関節,腰,肩甲帯というような,下から上に遡っていく「下肢から見た運動のつながり」の概念を学びました.この時期の経験が,今現在でも私の理学療法に対する考え方の基本となっています.
私は1998年からは山口先生のもとで肩関節を学ばせて頂き,今現在に至っております.その頃の山口先生の肩関節疾患に対する治療は,肩関節に対するアプローチは当然ですが,下肢や体幹のストレッチや前腕の運動など,肩関節以外の部分に対するアプローチを盛んに行っておりました.「肩関節の治療のために下肢や体幹のストレッチをする」,このような考えは今では当たり前のことになっておりますが,当時は一風変わったやり方として捉えられていました.しかし,多くの患者さんが山口先生の治療で良くなっていく場面を見ていく中で,私は「なぜ,体幹をストレッチすると肩が挙がるようになるのか?」「なぜ,下肢をストレッチすると肩が挙がるようになるのか?」など,それらの理由を追及するようになりました.その作業結果の蓄積が「上肢から見た運動のつながり」という考え方となりました.したがって,「上肢から見た運動のつながり」の考え方は決して私のオリジナルというわけではなく,「下肢から見た運動のつながり」の概念をベースに,沢山の先生方の文献を参考にさせて頂いた内容を私なりの解釈でまとめたものです.
今回,編集させて頂いた本書『運動のつながりから導く肩の理学療法』では「上肢から見た運動のつながり」という考え方を,「運動のつながり」という概念を共有する昭和大学藤が丘リハビリテーション病院の理学療法士,作業療法士,医師の方々,そして私が「上肢から見た運動のつながり」の考え方をまとめる際に特に参考にさせて頂いた方々に,それぞれが得意とする立場から肩関節について書いて頂きました.著者の皆様方のおかげで,様々な視点から肩関節をより深く考えるための材料になる本を作ることができたと感じております.この場をお借りして心より感謝申し上げます.
「運動のつながり」という考え方は最近,「運動連鎖」という言葉で広く認知されるようになりました.しかし,臨床現場では,まだ十分に応用できていないのが現状だと思います.本書が肩関節疾患の治療に携わる方々の悩みを解決する糸口となれば幸いです.
2017年4月吉日
千葉 慎一
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索 引
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