「ピロ研」編集の,X線と内視鏡による背景胃粘膜診断テキストの決定版!
X線と内視鏡の比較で学ぶ
H.pylori胃炎診断
新時代の胃がん検診を目指して
内容
序文
主要目次
ヘリコバクター・ピロリ(Hp)が胃がんの主因として認識され,「Hp 感染を考慮した胃がん検診を行うべき」との考えから,全国から有志が集い,2013年「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会(略称:ピロ研)」が誕生した(ピロ研ホームページ参照).同年Hp感染性胃炎に対しても除菌が保険適用になり,除菌により胃がんの一次予防の道が開けた.あとは感染者を発見して除菌に誘導することと,過去の感染者に定期的胃がん検診を受けてもらえれば効率的な二次予防になる.
しかし,感染があるにもかかわらず,自分が感染者だとは知らされず,除菌せずに毎年検診を受けているだけの人がまだ多くいる.幸い除菌療法を受けたとしても,胃がんリスクが残っていると知らされず検診を定期的に受けていない人もいると思われる.また,そもそも胃がん検診を受けていない人が50〜70%ぐらいいるという(国民生活基礎調査では,30〜50%の人が1年以内に胃の検査を受けたという).一方,Hpに一度も感染したことのない未感染者が増加している.このような人は胃がん低リスクなので毎年検診を受けなくてよいかもしれない.
このように,世の中には定期的検診を積極的に受けるべき人とあまり頻繁に受けなくてもよいかもしれない人がいる.それなら対象者を2つの集団に分ければかなり効率的な胃がん検診・胃がん死予防システムが構築できるであろう.しかも,胃がん低リスクの人に毎年検診を受けなくてよいとすると不要なX 線被曝や内視鏡検査の機会を減らし,検診にかかる費用を減らすことも可能で,医療経済的にもメリットがある.
そこでピロ研は,発足以来「Hp感染を考慮した胃がん検診と効率的な胃がん死予防システムの構築」を目標に研究および教育活動を続けてきた(表1).2016年に胃がん検診として内視鏡検診が認められたこともあり,今回,これまでの知見をまとめ,X線と内視鏡,および血液検査などの所見を総合し,「Hp感染を考慮した背景胃粘膜診断」の啓発本を作成することにした.この本の基本コンセプト(表2)をぜひご覧いただきたい.本書を読み,それぞれの場面で活用し,少しでも多くの胃がん死を減らすよう活動していただけたらありがたい.
本書の企画に賛同し寄稿してくれたピロ研世話人各位,文光堂さん,そして忙しい中たいへんな編集の労をお取りいただいた寺尾秀一先生と山道信毅先生に深謝する.
2018年2月
ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 代表世話人
中島滋美
巻頭言
1章 診断法
1.血清Hp抗体,ペプシノゲン法の概要
2.X線によるHp感染状態(未・現・既感染)の判定方法
1)対策型胃X線検診のためのHp感染診断の基礎
2)胃がんリスクとHp感染状態(未・現・既感染)の判定法
3.内視鏡によるHp感染状態(未・現・既感染)の判定方法
2章 症例提示
1.Hp関連の胃炎
Case 01
Case 02
Case 03
Case 04
Case 05
Case 06
Case 07
Case 08
Case 09
Case 10
2.Hp以外の胃炎
Case 01
Case 02
Case 03
Memo Non-Helicobacter pylori Helicobacter(NHPH)胃炎
Memo 好酸球性胃腸炎
コラム アンサーパッドを用いた胃粘膜診断の学習効果
背景胃粘膜診断の学習効果を高めるオンライン補充問題
3章 今後の展開
1.リスクを考慮した胃がん検診の現状と課題
1)対策型X線検診の現状と課題
2)対策型内視鏡検診の現状と課題
2.Hp画像診断と検診の今後
1)Hp画像診断と対策型検診の今後
2)Hp画像診断と任意型検診の今後
3.胃がん予防,胃がん死撲滅の戦略
コラム 機能性ディスペプシアとHp
編集あとがき
索引