ACL診療で必要となる知識・技術のエッセンスを徹底解説!長年にわたりACLと向き合い,挑み続けた著者渾身の書!!
ACLのエッセンス
膝前十字靭帯のエビデンスと臨床
内容
序文
主要目次
筆者の整形外科医としての人生は,ACLとの格闘が大半を占めていた,と言っても過言ではない.20歳代後半で生地の大阪に戻り,整形外科医としてのキャリアが始まった.先輩が全く手をつけていない分野が,ACL損傷をはじめとする“膝内障”といわれた外傷性膝疾患であった(ちなみに,“膝内障”とは,病態診断不能な膝関節内軟部組織病変のことであり,病態診断を放棄し付けられた病名であり,現在では死語とすべきである).本邦における先人が,後述のごとく診断すらできない分野であったので,以前から米国好きであった小生が,米国に範を求めたのは自然の成り行きであった.その後,米国かぶれが高じて二十数年にわたり,50歳過ぎまで米国人の猿真似人生を送ることになった.
猿真似人生に疑問を感じ出したのは遅く,20世紀末のことであった.その頃,大阪府立大学に転勤となり,比較的時間に余裕ができたので,解剖書と向き合う時間が増えた.ようやく,米国人の提唱する手術術式がほとんど非解剖学的であることや,文献記載が不正確であることに気づき,全てを再起動することにした.したがって,筆者の真のスポーツ整形外科医としてのキャリアは,20年間ほどとなる.
解剖の知識が増えると,従前のACL再建術が非解剖学的であり,その成績不良に直結していると感じざるを得なくなった.いかに解剖学的な再建術とするか熟考し,新しく解剖学的術式を考案した.しかしながら,この新術式を裏付ける科学的根拠は少なく,学会においても異端を唱える孤高の存在となってしまった.その後,熱心な後輩たちに恵まれ,解剖学的/生体力学的研究が進み,筆者の仮説/新術式の有用性が徐々に裏付けられることになった.また,医療機器会社との共同開発/研究が進み,考えた通りの手術治療が,無駄なく正確に施行できるようになった.これに伴い,治療成績は飛躍的に向上した.
小著は,猿真似から脱した筆者が,この 20年間ほどで蓄積したACL学の進捗を記載したものである.読者のお役に立つことを願うばかりである.
2022年2月
行岡病院スポーツ整形外科センター長/札幌医科大学客員教授
史野根生
第2章 解剖・生体力学
第3章 ACL損傷の発生機序,疫学
第4章 ACL損傷の症状,自然経過
第5章 ACL損傷の診断
第6章 ACL損傷に対する治療の進め方
第7章 ACL再建術の基礎
第8章 解剖学的ACL再建術
第9章 リハビリテーション
第10章 ACL再建術後膝の成績評価
第11章 再ACL再建術
第12章 より良い手術後成績を得るために
索 引