感染制御を本格的に学ぶ!
感染制御学(電子版のみ)
内容
序文
主要目次
☆図版76点,表組68点,モノクロ写真11点,イラスト・線画40点
医学系分野における感染制御学infection control scienceは,日常のあらゆる医療の場において病原微生物の伝播を防止するための最善の方策を探求する学問であるといえます.臨床医学の1分野ですが,医療関連感染対策という用語からも連想されるように,医療管理学や予防医学の性格を色濃く併せ持っており,また,感染症学(診断・治療学)や臨床微生物学の領域とも不可分に連関することが特徴です.さらに別の視点から,すべての診療科・部門の医師および看護師をはじめ,薬剤師,臨床検査技師,そして,栄養管理部門,中央材料部門,臨床工学部門,リハビリテーション部門,診療放射線部門などのさまざまな部署の医療従事者が接する学問であり,チーム医療体制のもとでの発展が期待される学問でもあります.そこには,病院長をはじめとする病院管理部門の支援が欠かせません.
今や,チーム医療体制はさまざまな領域に導入されており,より良い医療を患者に提供する仕組みとして機能しています.感染制御の領域では,成熟段階を迎えつつあることから,平素の自己啓発や人材育成はもちろんのこと,チーム医療体制として健全に機能していることについても客観的な自己点検を重ねることが必要になってきているように思います.
近年,多くの大学において「感染制御学」を冠した講座や分野が誕生しています.この潮流は,学問としてこれを研究し,科学的に実践することの必要性を物語っているものと理解されます.確かに,実地臨床で経験的にノウハウを蓄積して継承しているだけでは学問としての発展は期待できません.学問としての蓄積があってこそ,新興再興感染症に的確に立ち向かうことができ,また,抗菌薬耐性への対策として処方医に適切な抗菌薬使用を求めることができます.本書は,卒前学習をはじめ,卒後の自己啓発や自己点検にお役立ていただくとともに,感染制御学を学問として捉えるきっかけとなる書を目指し,臨床の場でご活躍されている執筆陣により書き下ろされました.医療を学ぶ学生,研修医,感染制御に関わる医療従事者の皆様に幅広くご活用いただくことができれば幸いに思います.
最後になりますが,本書を世に送り出すにあたり,執筆にご協力くださった諸氏に心から感謝の意を表します.また,本書の出版にご尽力くださった文光堂の佐藤真二氏と日野水邦之氏に深謝の意を表します.
2015年9月
編者を代表して
浜松医科大学 教授 堀井俊伸
第1章 医療関連感染対策の基本
1 . 医療関連感染症と対策
2 . 手指衛生
3 . 個人防護具の選択と使用
4 . 感染経路
5 . 標準予防策
6 . 感染経路別予防策
7 . 環境の清掃と消毒
8 . 医療廃棄物
9 . 医療関連感染対策のための診療ガイドライン
第2章 医療関連感染対策の実践
1 . 医療関連感染対策のためのサーベイランス
2 . 抗菌薬耐性への対策
3 . 医療器材の微生物汚染対策
4 . 医薬品類の微生物汚染対策
5 . 検査材料の採取と取扱い(保存・輸送)
6 . 医療従事者へのワクチン接種
7 . 感染した医療従事者への対策
8 . 面会者への対策
9 . 医療従事者の無関心層への対策
10 . 身体障害者補助犬
II 各 論
第1章 感染症別の医療関連感染対策
1 . 細菌感染症
2 . ウイルス感染症
3 . 真菌症
4 . その他
第2章 医療器材別の医療関連感染対策
1 . 血管内留置カテーテル由来血流感染症
2 . 人工呼吸器関連肺炎
3 . 尿道留置カテーテル関連尿路感染症
第3章 手術部位感染症への対策
1 . 手術部位感染症
2 . 手術部位感染症の予防策
第4章 血液体液曝露対策
1 . 曝露予防
2 . 曝露後のウイルス別対応
第5章 部門別の医療関連感染対策
1 . 一般病棟
2 . 集中治療室
3 . 新生児集中治療室
4 . 小児病棟
5 . 産科病棟および外来部門
6 . 空気感染隔離室
7 . 防護環境(無菌室・移植病室)
8 . 手術室
9 . 透析室
10 . リハビリテーション室
11 . 内視鏡室
12 . 血管造影室
13 . 放射線部門
14 . 検査部門
15 . 剖検室
16 . 中央材料室
17 . 無菌調剤室
18 . 大量調理室
19 . 外来部門
20 . 療養型施設・介護施設
第6章 アウトブレイク対策
アウトブレイク対策
付 録
感染症と病態に必要な予防策の様式と期間
●索 引