日本ペインクリニック学会が総力を挙げて編集!疼痛緩和に関わるすべての医療従事者必見の一冊
インターベンショナル痛みの治療ガイドライン
非がん性疼痛とがん性疼痛
内容
序文
主要目次
疼痛緩和のためにインターベンショナル治療を有用に活用することの重要性は,厚生労働省HPの「がんの緩和ケアに関する資材―痛みへの対応について―」をはじめ,国内外のガイドラインに掲載されています.本学会では,2014年に「インターベンショナル痛み治療ガイドライン」と「がん性痛に対するインターベンショナル治療ガイドライン」を発行しておりますが,本ガイドラインは,さらなる進化版として,すべての痛みに対応した「インターベンショナル痛みの治療ガイドライン~非がん性疼痛とがん性疼痛~」として総合的な観点から作成されています.したがってエビデンスや推奨だけではなく,治療の概要や方法なども記載されています.そのため,学会員が治療の参考にするだけではなく,様々な分野の臨床医や多職種にも広く普及することで,インターベンショナル治療への理解が深まり,医療連携や社会貢献に繋がることが期待されます.本ガイドラインはワーキンググループ長の高雄由美子先生を中心に,メンバー全員が幾度も会議や協議を重ね,かなりの労力を費やして完成に至っております.ワーキンググループメンバー・協力者には,心より感謝申し上げます.
令和6年6月吉日
井関 雅子
一般社団法人日本ペインクリニック学会 代表理事
がん性疼痛に対するインターベンショナル治療に関するガイドラインは,2014年に日本ペインクリニック学会から「がん性痛に対するインターベンショナル治療ガイドライン」ががんの痛みのみに特化した単独のガイドラインとして発刊された.このガイドラインでは,ペインクリニック医師以外にどのような治療かを紹介するために,手技に関しても独立してある程度詳しく説明している.今回は,非がん性疼痛に対するインターベンショナル治療と統合し,「インターベンショナル痛みの治療ガイドライン~非がん性疼痛とがん性疼痛~」として発刊することになった.非がん性疼痛に対してよく行われるインターベンショナル治療の項目の最後にがん性疼痛に対する適応とCQを追記する形式となり,がん性疼痛に対してメインに行われる腹腔神経叢ブロックなどの内臓痛に対する神経ブロックやくも膜下鎮痛法などは独立して詳細に記載している.非がん性疼痛と同様な方法で評価している.がん性疼痛に対するインターベンショナル治療に関しては,他に有効な鎮痛手段がないがん性疼痛に行われることが多く,RCTなどの研究が難しいためにエビデンスレベルがどうしても低くなってしまう傾向にある.それを補完する目的で,推奨度での評価も行った.その結果,エビデンスレベルは低いが推奨度は高くなったインターベンショナル治療もある.
本ガイドライン作成に携わったワーキンググループメンバー・協力者の先生方に感謝いたします.
令和6年6月吉日
平川奈緒美
一般社団法人日本ペインクリニック学会
インターベンショナル痛み治療ガイドライン作成ワーキンググループ
副ワーキンググループ長
高雄由美子ワーキンググループ長のもと,本学会のガイドライン作成ワーキンググループのメンバーにより,「インターベンショナル痛みの治療ガイドライン」が発刊,改訂された.
まずはワーキンググループのメンバー,協力者の先生方に対して,その大変な尽力と努力に敬意を表し,深謝する.
本学会のガイドラインは,厚生労働省,文部科学省などの大きな事業や助成金によるものではなく,すべて学会員の志でできている.メンバーがお忙しい中,ご自分の診療・教育・研究の時間を割いて,たくさんの関連論文を読んで,ワーキンググループで推奨度とエビデンスレベルを決めていく繰り返しの作業で成り立っているものである.
医療は,EBM(Evidence Based Medicine)とNBM(Narrative Based Medicine),サイエンスとアートの部分で成り立っている.どちらかが欠けてもどちらかに偏っても,病をもった人間を診る医療として,信頼性に欠けたものになる.
ペインクリニック診療は,神経ブロックを軸に始まり,もともとアートの部分で成り立っていたところが多い.これらのテクニックを基にした医療は,先達の先生方の治療法の開発や長年の経験,アートで成り立っていたが,日本や世界中のペインクリニシャンの努力と志のもと,X 線透視,超音波,医療機器の進歩もあいまって,EBMとNBM,サイエンスとアートのバランスのよい医療に進化してきている.
現在においても高齢化社会で痛み患者の人口が増えるとともに,インターベンショナル治療が必要とされる状況がますます増えてきている.急性痛の医療,慢性疼痛の医療,がんの痛みの医療においても,がん患者の慢性疼痛医療においても,術後痛医療においても同じである.
世界各国で保険制度や社会保障制度が異なり,そのため,低侵襲のペインクリニックでのインターベンショナル治療が医療の中で高く評価されているかどうかは各国で異なっている.日本では,世界と比較すると,薬剤費・手術費に比較して,医療技術がとても安くなっている特徴があるが,逆にどんな人でもその治療の恩恵にあずかれることにつながっている.
今後は個々の患者さんの身体の状況,心理社会的評価,機能的な評価の把握も大切にして,このガイドラインを参考にしていただきながら,痛み診療を行っていただきたい.
日本のペインクリニック診療は,世界の中でみても,細かいテクニックが最も上手で細やかな配慮がすぐれたドクターが中心に行っていることは間違いない.
医療者も患者さんも,診療科を超えて,専門や立場を超えて,お互いのリスペクトの上,診療に関するエビデンスやアートの評価を共有しながら,共に治療方法を決めていく時代にも入りつつある.
また時代・医療の変化とともに,エビデンスもサイエンスも進化,変化しており,その変化とともにさらに新しいガイドラインが作られ,改訂されることになる.
このメンバーが,多診療科にわたる痛み医療の中のインターベンショナル治療をリードし,さらに本学会のみならず痛み医療が発展することを祈念している.
令和6年6月吉日
福井 聖
一般社団法人日本ペインクリニック学会
インターベンショナル痛み治療ガイドライン作成ワーキンググループ オブザーバー
目次
作成メンバー
利益相反(COI)
はじめに
第1章 総論 非がん性疼痛とがん性疼痛に対するインターベンショナル治療法
Ⅰ 非がん性疼痛
1.頭部・顔面の痛み
2.頸部・肩・上肢の痛み
3.体幹部の痛み(体性痛・内臓痛)
4.腰部・下肢の痛み
5.肛門部・会陰部の痛み
Ⅱ がん性疼痛
1.頭部・顔面・頸部の痛み
2.上肢の痛み
3.胸背部の痛み
4.腹部の痛み
5.腰下肢の痛み
第2章 部位別のインターベンショナル治療法
Ⅰ 共通
1―1.硬膜外ブロック
1―2.がん性疼痛に対する硬膜外ブロック
2―1.神経根ブロック・経椎間孔ブロック
2―2.がん性疼痛に対する神経根ブロック
3.椎間関節ブロック
4―1.後枝内側枝ブロック
4―2.がん性疼痛に対する後枝内側枝ブロック
5―1.トリガーポイント注射
5―2.がん性疼痛に対するトリガーポイント注射
6.関節内注射
7.高周波熱凝固法
8.パルス高周波法
9.ハイドロリリース
10.ボツリヌス療法
Ⅱ 頭部・顔面
1.星状神経節ブロック
2―1.舌咽神経ブロック
2―2.がん性疼痛に対する舌咽神経ブロック
3―1.後頭神経ブロック
3―2.がん性疼痛に対する後頭神経ブロック
4.耳介側頭神経ブロック
5.C2神経根ブロック
6―1.三叉神経節ブロック(ガッセル神経節ブロック)
6―2.がん性疼痛に対する三叉神経節ブロック(ガッセル神経節ブロック)
7―1.三叉神経末梢枝ブロック
7‒2.がん性疼痛に対する三叉神経末梢枝ブロック
8.翼口蓋神経節ブロック
9―1.硬膜外自家血注入(硬膜外自家血パッチ)
9―2.がん患者に対する硬膜外自家血注入(硬膜外自家血パッチ)
Ⅲ 頸部・肩・上肢
1.頸神経叢ブロック
2―1.腕神経叢ブロック
2―2.がん性疼痛に対する腕神経叢ブロック
3.肩甲上神経ブロック
4.肩甲背神経ブロック
5.肩峰下滑液包注射
6―1.上肢の末梢神経ブロック
6―2.がん性疼痛に対する上肢の末梢神経ブロック
7.頸椎椎間板注入
Ⅳ 体幹部
1.胸部交感神経節ブロック
2.胸部傍脊椎神経ブロック
3―1.腹横筋膜面ブロック
3―2.がん性疼痛に対する腹横筋膜面ブロック
4―1.腹直筋鞘ブロック
4―2.がん性疼痛に対する腹直筋鞘ブロック
5―1.腰神経叢ブロック(大腰筋筋溝ブロック)
5―2.がん性疼痛に対する腰神経叢ブロック(大腰筋筋溝ブロック)
6―1.肋間神経ブロック
6―2.がん性疼痛に対する肋間神経ブロック
Ⅴ 腰下肢
1.腰部交感神経節ブロック
2―1.下肢の末梢神経ブロック
2―1―1.外側大腿皮神経ブロック
2―1―2.上臀皮神経ブロック
2―1―3.伏在神経ブロック
2―1―4.坐骨神経ブロック
2―1―5.後脛骨・腓骨神経ブロック
2―2.がん性疼痛に対する下肢の末梢神経ブロック
3.椎間板内治療
4.仙腸関節ブロック
Ⅵ 肛門部・会陰部
1.仙骨(硬膜外)ブロック
2―1.不対神経節ブロック
2―2.がん性疼痛に対する不対神経節ブロック
3.陰部神経ブロック
Ⅶ がん性疼痛
1.腹腔神経叢(内臓神経)ブロック
2.下腸間膜動脈神経叢ブロック
3.上下腹神経叢ブロック
4.くも膜下フェノールブロック
5.くも膜下鎮痛法
6.経皮的コルドトミー
Ⅷ ペインクリニックで行われる手術手技
1.脊髄刺激療法
2.硬膜外腔癒着剥離術(スプリングガイドカテーテル)
3.エピドラスコピー
4―1.椎体形成術
4―2.がん性疼痛に対する椎体形成術
5.胸腔鏡下交感神経節切除術
6.経皮的椎間板摘出術(経皮的髄核摘出術)
7.植え込み型薬物送達システム
索 引