リハビリをちょっとだけ知って,「さらなる名医」になる!
一般内科医のための
そうだったんだ!リハビリテーション(電子版のみ)
治療にリハビリを取り入れる方法を教えます
内容
序文
主要目次
わが国は歴史上で世界のどの国も経験したことのない超高齢社会となった.患者の様相が激変し,内科治療で何とか内臓機能を維持できても,足腰が弱って生活範囲が狭くなってくる患者.内科疾患による障害に加えて,変形性関節症など運動器疾患による重複障害を抱えた患者.内科治療を行っても,家族の介護負担が増えたり施設転院を余儀なくされたりする患者.運動指導をしても体力がどんどん低下する患者.このような患者がかかりつけ医のもとを訪れる時代になってきた.
筆者は大学卒業後,母校の内科学教室に入局し,その後,御礼奉公として25年前に地方病院の内科医のトップとして勤務した.そこで,肺炎や心不全が治っても,筋力低下のために歩けなくなる高齢患者を多く目の当たりにした.わが国での現在の大きな問題を,高齢化が進んでいた東北の病院で先んじて身をもって体験したわけである.
筆者はその後,内科の患者にもっと何かしてあげるための技術を学ぶため,医師になって15年目の38歳のときに,志願して内科からリハビリ科に移籍した.そこで得たものは,患者がもっといきいき・長生きできる技術であった.その後,筆者は思いがけなくリハビリ科教授になり現在に至っている.
わが国ではリハビリが必要な患者は山ほどいるにもかかわらず,リハビリ科専門医は2,000名足らずにすぎず,リハビリの普及に手が回っていない.超高齢社会で障害を有する人が激増し,リハビリのニーズがますます高まっている状況では,リハビリの普及のカギは,リハビリに馴染みのないかかりつけ医にリハビリを少しずつでも導入していただくことにあると考え,筆者は「一般医家に役立つリハビリテーション医療研修会」の提案者として2012年から活動を始め,卒後研修医向けの医学雑誌に,「内科医のためのリハビリテーションセミナー」を2012〜2013年にかけて連載してきた.こうして今回,文光堂編集部から,これらの活動をもとにしたリハビリ技術の書籍化を強く勧められた次第である.
本書は,リハビリに馴染みのない一般の医師向けに作られたリハビリ技術の指南本である.リハビリを全く知らない方でも容易に理解でき,読後ただちに患者に実践できるように構成してある.しかも特別な器具も使わず,診察室や往診先で思い立ったらすぐ指導できる内容にもなっている.
日常診療では慢性疾患患者が大半で,外来でも入院でも患者との付き合いは長く続く.「禁煙,減塩,減量」などの生活習慣の修正を勧めるのは正論ではあるが,何度も勧められると患者自身は辟易するものである.たまに,息切れのしなくなる歩き方や膝が痛まない立ち上がり方などを伝授すると,患者・家族にとても喜ばれる.「内科外来に何十年もせっせと来ているが,そんなことを教えてくれたのは先生が初めてだ.」と通院患者にとても喜ばれたことなど,筆者にとっての嬉しい体験も本書には随所に盛り込んだ.
かかりつけ医の先生方にリハビリをちょっとだけ知っていただき,少しずつでも診療に生かしていただければ,わが国の医療・介護は劇的に好転する.患者をもっといきいき・長生きさせること,すなわち,患者の“生活機能・生活の質の改善と寿命の延長(adding life to years and years to life)”を達成できるのである.病院から地域までのシームレスなリハビリシステムをわが国全体に広げることもできるのである.
本書を一読していただければ,読者諸兄は患者の生活機能や運動機能を改善できる「さらなる名医」になれる.読者諸兄のお力をお借りして,本書が質・量ともに優れたリハビリの普及と発展に貢献する一助となれば,筆者としてこれに勝る喜びはない.そして,リハビリに興味を持たれたら,ぜひ「日本リハビリテーション医学会をはじめとするリハビリ関連学会へも入会し,さらに知識を広げていただくことをお願いしたい.
2016年12月
上月正博
A 内科を受診している患者の本音とは
B 内科治療にリハビリを加えよう
第2章 内科疾患におけるリハビリの重要性
A 内科での「安静が治療」の時代は終わった
B 安静・運動制限から運動療法へ
C 1日の安静で1〜2歳も老化してしまう
D これだけ劇的なリハビリの効果
E 「自宅で過ごせればリハビリはもういらない」は大誤解
F リハビリで生活がいきいき
G リハビリで寿命も延ばせる
1 脳卒中
2 COPD
3 冠動脈疾患・心不全
4 CKD
コラム「 日本腎臓リハビリテーション学会」設立の背景
コラム 超肥満の患者がリハビリで体重244kgが119㎏に!
コラム 運動療法の基礎知識
コラム 運動で脳細胞を増やせる
コラム 認知症を予防する
コラム 運動の敵は過度なダイエットと飲酒
コラム 強い運動は身体に悪い
コラム スポーツ選手は寿命が長い,という報告はない
第3章 内科医にもリハビリの知識が必要な理由
A 主治医が患者へのリハビリ導入を妨げていないか?
B 医学部学生教育・研修医研修内容の問題
C かかりつけ医が動けば予防・医療・リハビリ・介護の連関は大きく好転する
D ほんの少しのリハビリ知識でさらに名医になれる
E リハビリは運動療法だけではない―包括的リハビリではかかりつけ医が主役
F 複雑かつ重度な障害者はリハビリ科専門医に相談を
G わが国の人口構成
H 国民の6.7%は障害者
コラム 膝痛を治す(膝が傷まない立ち上がり方)
コラム 腰痛を治す
コラム おなかポッコリを直す
コラム 顔が若返る「らくらく運動」のやり方
コラム しわ・シミを増やさない
コラム 重複障害とリハビリ
第4章 リハビリの評価から処方まで
A リハビリの評価はこれだけでよい
第1ステップ:基本事項
第2ステップ:日常生活動作(ADL)・認知機能・ロコモティブシンドローム
B 詳細に検査を行うだけで満足してはいけない
第3ステップ:国際生活機能分類(ICF)を用いてのリハビリ的考え方
C 生活機能・運動機能はリハビリで劇的に改善できる!
D 介護保険制度
E 介護保険における主治医意見書の書き方
1 傷病に関する意見
(1)診断名
(2)症状としての安定性
(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療内容
2 特別な医療
3 心身の状態に関する意見
(1)日常生活の自立度等について
(2)認知症の中核症状
(3)認知症の周辺症状
(4)その他の精神・神経症状
(5)身体の状態
4 生活機能とサービスに関する意見
(1)移動
(2)栄養・食生活
(3) 現在あるかまたは今後発生する可能性が高い状態とその対処方針
(4)サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し
(5)医学的管理の必要性
(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
(7)感染症の有無
5 特記すべき事項
F 身体障害者診断書・意見書の書き方
G 身体障害者診断書の記載についての留意点
1 発症から6ヵ月経過しなくても診断書を作成できる場合がある
2 ROMやMMTをすベて記載する必要はない
3 非麻痺側の上下肢にも廃用性の障害がみられる場合は認定される場合がある
H リハビリ実施計画書の書き方
コラム サルコペニア,フレイル
コラム ロコトレとロコトレプラス
コラム 転倒防止のダイナミックフラミンゴ療法
コラム 患者の介助の仕方
コラム 患者のやる気の育て方
コラム 運動療法を長く継続させるためのコツ
コラム Brunnstrom stage
第5章 リハビリ科専門医・コメディカルとの連携の仕方
A リハビリ関連職種の紹介
B 各リハビリ関連職種との付き合い方
C リハビリ科の医師との付き合い方
1 リハビリとリハビリ科医,リハビリ科専門医,リハビリ科認定臨床医との関係
2 リハビリ科医の専門を知る
D 「複雑かつ重度」なリハビリはリハビリ科専門医に任せればよい
E リハビリに関する診療報酬制度の概要
コラム チームワークをよくするコツ
コラム スタッフの教育のコツ
コラム よいリハビリ病院・施設の選び方
第6章 各疾患のリハビリの実際とかかりつけ医がすべきこと
A 脳卒中リハビリ
1 脳卒中リハビリの目的
2 脳卒中リハビリの構成要素
3 脳卒中リハビリの対象・適応・禁忌
4 脳卒中リハビリの時期的区分
5 脳卒中リハビリの効果
6 脳卒中リハビリの実際
(1)急性期リハビリ
(2)回復期リハビリ
(3)維持期リハビリ
症 例 片麻痺(脳梗塞)①入院:急性期の場合
症 例 片麻痺(脳梗塞)②外来:維持期の場合
症 例 嚥下障害①入院の場合
症 例 嚥下障害②外来の場合
症 例 廃用症候群①脳卒中後遺症のある入院患者の場合
症 例 廃用症候群②外来がん患者の場合
B 生活習慣病のリハビリ
1 疾患別運動療法ガイドライン
症 例 糖尿病・重度肥満の患者の場合
C 心臓リハビリ
1 心臓リハビリの目的
2 心臓リハビリの構成要素
3 心臓リハビリの適応・禁忌
4 心臓リハビリの時期的区分
(1)急性期心臓リハビリ(第I相)
(2)前期回復期心臓リハビリ(前期第II相:入院中)
(3)後期回復期心臓リハビリ(後期第II相:外来・通院)
(4)維持期心臓リハビリ(第III相)
5 心臓リハビリの効果
6 運動療法プログラムおよび運動処方
症 例 ①急性心筋梗塞後患者の場合
症 例 ②心不全患者の場合
D 呼吸リハビリ
1 呼吸リハビリの目的
2 呼吸リハビリの構成要素
3 呼吸リハビリの対象・適応・禁忌
4 呼吸リハビリの時期的区分
5 呼吸リハビリの効果
6 呼吸リハビリの実際
症 例 ①入院:人工呼吸器離脱のためのリハビリの場合
症 例 ②外来:COPDのリハビリの場合
症 例 ③呼吸リハビリにより移植を回避できた例
E 腎臓リハビリ
1 腎臓リハビリの目的
2 腎臓リハビリの構成要素
3 腎臓リハビリの対象・適応・禁忌
4 腎臓リハビリの時期的区分
5 腎臓リハビリの効果
6 運動処方
7 診療報酬
(1)糖尿病透析予防指導管理料
(2)腎不全期患者指導加算
症 例 保存期CKD患者の場合
症 例 CKD透析患者の場合
付 録
付録1 ロコモ度テスト
付録2 ロコモ度テストの臨床判断
付録3 Hugh-Jones分類
付録4 MRC息切れスケール(ATS/ERS 2004)
付録5 NR-ADL(旧千住らのADL評価表)
付録6 P-ADL(後藤らの評価表)
付録7 Minnesota Living With Heart Failure® questionnaire
付録8 EQ-5D日本語版
付録9 介護保険制度における在宅の要介護者等へのサービス
付録10 介護保険制度における施設サービス
付録11 関節可動域表示・測定法
付録12 身体にある筋肉とその役割
付録13 METs換算表
参考文献・図書
索引
あとがき