視能訓練士養成校の学生を対象とし,座学から実習への橋渡しとなることを意図した画期的なテキスト
ケースで学ぶ視能矯正臨床思考
POSの活用
内容
序文
主要目次
本書のテーマである問題指向型診療システム(POS)および問題指向型診療記録(POMR)は,川崎医科大学開学時(1970年)より使用され,同 眼科学教室 名誉教授 川崎医療福祉大学感覚矯正学科 初代学科長 故 筒井 純先生によって視能矯正に導入され,同 元教授 深井小久子先生とともに,active learning(問題点を発見して自ら解決する学習方法)において活用されてきました.
POSによる視能矯正は,第1に,主観的情報や客観的データを基に問題抽出と解決法を立
案する過程で論理的思考力を促します.第2に,多職種間での情報共有を可能にします.問
題「指向力」は,「思考力」「志向力」と言い換えることができます.POSによる視能矯正指導法は視能訓練士の質が重視される今こそ必要であり,これが本書を企画する契機となりました.筒井先生と深井先生の先見の明に敬意を表しますとともに,感謝申し上げます.
本書の構成は,視能矯正でのdecision making(指針)となるようケーススタディを目指しました.視能訓練士は,眼科検査のほぼ全般を担当しますが,流れ作業の検査では質の高い視能矯正を提供することはできません.患者の主訴や病歴から疾患を想起し,患者のニーズに応じた視能検査の立案と実施,評価,そして視能訓練士として問題解決のためにできることは何かを考える一連の思考活動が求められます.
そこで,本書では,症例提示に続いてquestionを設け,思考を促すことを心がけました.本書の前半には,弱視,斜視など視能矯正領野のケースを挙げました.これらは視能訓練士の専門性が発揮される領野です.後半には,白内障や緑内障などの代表的な眼科疾患を挙げました.眼科医療においては検査機器が日進月歩の発展を遂げており,視能訓練士が最新機器を駆使して視能評価をすることはますます重要となっています.
本学感覚矯正学科のモットーはsurvival with excellence-輝きをもって生き残る-です.本書がactive learningによって視能訓練士の臨床力をアップさせ,生涯発展し続けるための一助になれば幸いです.
最後になりましたが,本書の発刊に導いてくださいました,文光堂 嵩 恭子氏に心より御礼申し上げます.
2017年6月
執筆者一同
視能矯正 編
症例1 小児の視能評価
症例2 不同視弱視
症例3 斜視1)屈折性調節性内斜視
症例4 斜視2)間欠性外斜視
症例5 斜視3)先天上斜筋麻痺
症例6 斜視4)外転神経麻痺
症例7 斜視5)滑車神経麻痺
症例8 筋性眼精疲労
視能障害 編
症例1 円錐角膜
症例2 白内障
症例3 糖尿病網膜症
症例4 加齢黄斑変性
症例5 正常眼圧緑内障
症例6 緑内障発作
症例7 視神経炎
症例8 脳下垂体腫瘍による視野障害
医療面接実習
客観的臨床能力試験
索 引