診断エラーを学んで診断力を身につけよう!
主訴別診断エラー症例44(電子版のみ)
誤診症例に学ぶ確定診断術
内容
序文
主要目次
ケースカンファレンスでは,美しい診断推論が展開され,なるほどと感じることばかりですが,実際の現場ではどうでしょう.診断を「これだ!」と思いこみ,その後痛い目に遭うことは少なくないのではないでしょうか.
この本では,実際に診断をエラーした症例を44例掲載しています.特に救急外来でよく遭遇する主訴15を選び,それぞれについて診断エラー症例3例(「喘鳴」のみ2例)を記載しています.そして1例ずつ,どこで問診,診察,検査指針の方向性を間違ってしまったか,その時点での思考過程を示しました.さらになぜエラーに至ったかを解説し,誤診しないためのポイントをまとめました.次に15主訴において誤診しないためのアプローチを問診,診察,検査に分けて述べています.特に,問診に重点をおいて記載しています.検査や画像は確かに早期診断に欠かせませんが,どうしても目立つもの(検査,画像)に我々は引き寄せられてしまいます.例えば,「2週間前からの発熱」であるにもかかわらず,検尿に膿尿があるから「急性腎盂腎炎」,X線写真に影があるから「市中肺炎」と,検査や画像を診断に直結させてはいないでしょうか.2週間の経過なら,亜急性の経過であるわけですから,感染症なら感染性心外膜炎や結核,非感染性疾患であれば,血管炎や悪性腫瘍に伴う発熱などを考えるべきであると思います.もちろん経過だけでなく,発症形式,増悪・寛解因子,性質,関連する症状,重症度にこだわった病歴と,その後に展開される診察,検査,画像に「整合性」があるかどうかを都度都度に振り返っていくことが,診断エラーを回避する近道であると考えています.なぜこの時にわからなかったのかと指摘されることがしばしばありますが,後から見れば簡単に診断できる,「後医は名医」です.現場では,真っ白なキャンバスから診断は始まります.この本では,こだわるべき問診をキーワード化し提示し,診察,検査では,教科書のように網羅的な記載はせず,注目すべきポイントをピックアップして記載しています.これらのアイテムを使い,「整合性」を考えながら,診断という「絵」を描いていただければと思います.
この本が,診療の場でいかに診断エラーを減らすか,日々苦悩している初期研修医や若手医師の皆さんの少しでもお役に立てればと考え,序文としました.
最後に,執筆期間が長期間になるなか,筆者のわがままに辛抱強く対応していただいた文光堂の佐藤真二氏と編集スタッフの皆様にこの場をお借りして深謝いたします.
平成29年3月
塩尻 俊明
「脱水症」と誤診した症例①
「橋梗塞」と誤診した症例②
「高血糖高浸透圧症候群,細菌感染症」と誤診した症例③
02 けいれん
「てんかん発作」と誤診した症例①
「症候性てんかん」と誤診した症例②
「低ナトリウム血症によるミオクローヌス発作」と誤診した症例③
03 頭痛
「片頭痛」と誤診した症例①
「片頭痛」と誤診した症例②
「片頭痛」と誤診した症例③
04 しびれ
「圧迫性ニューロパチー」と誤診した症例①
「腰椎症」と誤診した症例②
「心因性のしびれ」と誤診した症例③
05 片麻痺
「脳塞栓」と誤診した症例①
「脳梗塞」と誤診した症例②
「脳梗塞」と誤診した症例③
06 咽頭痛
「急性咽後膿瘍」と誤診した症例①
「薬剤によるアナフィラキシーショック」と誤診した症例②
「細菌性咽頭炎」と誤診した症例③
07 腰痛
「腰椎椎間板ヘルニア」と誤診した症例①
「腎囊胞感染」と誤診した症例②
「腎盂腎炎」と誤診した症例③
08 呼吸困難
「貧血による心不全」と誤診した症例①
「レジオネラ肺炎」と誤診した症例②
「市中肺炎を合併したCOPD」と誤診した症例③
09 胸痛
「異型狭心症」と誤診した症例①
「縦隔気腫」と誤診した症例②
「腎盂腎炎」と誤診した症例③
10 喘鳴
「感冒で増悪した喘息」と誤診した症例①
「喀痰による気道閉塞」と誤診した症例②
11 失神
「排尿失神」と誤診した症例①
「排尿失神」と誤診した症例②
「感冒に伴う脱水」と誤診した症例③
12 嘔気・嘔吐
「急性胃炎」と誤診した症例①
「熱疲労」と誤診した症例②
「急性胃炎」と誤診した症例③
13 腹痛
「急性胃腸炎」と誤診した症例①
「急性胃炎」と誤診した症例②
「ウイルス性胃腸炎」と誤診した症例③
14 下痢
「ウイルス性胃腸炎」と誤診した症例①
「過敏性腸症候群」と誤診した症例②
「ノロウイルス感染症」と誤診した症例③
15 発熱
「腎盂腎炎」と誤診した症例①
「腎盂腎炎」と誤診した症例②
「尿管結石による腎盂腎炎」と誤診した症例③
索引