世界標準の実践心理職に必要な知識と技法を体系的に網羅.実践に必要な専門技能を第一線の臨床家によりレクチャー!
公認心理師技法ガイド
臨床の場で役立つ実践のすべて
内容
序文
主要目次
最初に本書の狙いについて,簡単に説明をさせていただきます.
本書は,公認心理師になるための教科書ではなく,専門職として優れた仕事をするための実践ガイドブックです.あなたの目標が,より専門的な実践心理職(practitioner psychologist)として活躍できるようになることであれば,本書はベストなテキストです.現場で必要となる専門技能がすべて網羅されているからです.
公認心理師の資格取得は,実践心理職としてスタート台に立つということです.現場で適切な実践を行うためには,さらに専門的知識を学び,さまざまな技法を習得し,実践し,見直して自らの技能を磨いていくことになります.
すでに心理職として働いてきた経験のある皆さんにとっても,同様のことがいえます.公認心理師の時代となり,心理職に求められる知識や技法は基本的に変わりました.社会的責任を担う専門職として,有効性が実証されている技法を用い,他職と連携して活動することが実践の基本となっています.公認心理師は,多職種協働チームにおいて信頼される心理職としてエビデンス・ベイスト・プラクティスを実践することが求められているのです.
本書は,まさにそのための知識と技法を体系的に解説しています.実践心理職としての成長をきめ細やかにガイドするのが本書なのです.現場での実践で困ったときにひも解くガイドとして,さらにはご自身の専門職としての成長を見守るガイドとして,本書を傍らに置いていただければ幸いです.
編集にあたっては,心理職をめぐる日本の事情も考慮しました.現代社会は,様々なメンタルヘルス問題を抱えています.多くの先進国では,心理職はメンタルヘルス問題の解決のリーダーの役割を担っています.そのため心理職資格を得るには,高度な専門知識と臨床技法を習得しなければなりません.
そこで本書では,世界標準の実践心理職の専門技能を提供することを目標としました.編集会議において議論に議論を重ねたことで,その目標を達成する内容となったと自負しております.ですから,本書をしっかりとマスターしておけば,どのような現場でも,どのような地域(海外も含めて)でも専門的な実践心理職として自信をもって働くことができます.
まさに「この一冊があれば安心!」という,心強いガイドブックになっています.ぜひ,メンタルヘルスの活動に携わる,多くの皆様にご活用をいただければと願っております.
2019年2月 草青むのを待ちつつ
編者を代表して
下山 晴彦
1 臨床心理技能
2 科学者―実践者モデル
1)エビデンス・ベイスト・プラクティスとは
2)臨床研究の方法
3)ランダム化比較試験
4)メタアナリシスとシステマティックレビュー
3 倫理実践
1)スキルとしての職業倫理
2)倫理の基本的枠組み
3)倫理の実践技法
4 多職種連携
1)コーディネーション
2)チームワーク
3)リーダーシップ
4)ケースマネジメント
5 教育訓練のプロセス
1)ケースカンファレンス
2)インターンシップ
3)スーパーヴィジョン
第2章 アセスメント技法
1 アセスメントの基本
2 基本情報の収集
1)コミュニケーションの基本技能
2)予診面接
3)初回面接
4)関係者との面接
5)一般的な行動観察
6)行動の機能アセスメント
3 基盤特性の検査
A 知能・認知機能検査
1)WISC
2)WAIS
3)田中ビネー
4)KABC-II 日本版KABC-II心理・教育アセスメントバッテリー
5)DN-CAS
B 発達検査
1)新版K式発達検査
2)Bayley-III乳幼児発達検査
C 適応行動検査
1)Vineland-II適応行動尺度
2)ASEBA行動チェックリスト
D パーソナリティ検査
4 発達障害の評価
A 自閉スペクトラム症の検査
1)ADOS-2自閉症診断観察検査 日本語版 第2版
2)ADI-R自閉症診断面接改訂版 日本語版
3)PARS-TR
4)M-CHATとAQ
B ADHD(注意欠如多動症)の検査
1)ADHD-RS
2)Conners 3
3)CAARS・CAADID
C SLD(特異的学習症)の検査
1)LDI-R
2)ディスレクシアの検査
D その他の発達障害の検査
1)発達障害の特性別評価法
2)感覚プロファイル・シリーズ
3)発達性協調運動障害の検査
5 症状評価
1)症状評価尺度
2)認知症の評価
3)神経心理学的検査
4)脳画像検査
5)操作的診断マニュアルの活用法
6 ケースフォーミュレーションとフィードバック
1)ケースフォーミュレーションの基本
2)心理教育とセラピーの動機づけ
3)報告書の書き方
第3章 介入技法
1 理論・モデル・アプローチ
A カウンセリング
1)カウンセリングの理論
B 認知行動療法
1)レスポンデント学習の理論モデル
2)レスポンデント学習の理論に基づくケースフォーミュレーション
3)オペラント学習の理論モデル
4)オペラント学習の理論モデルに基づくケースフォーミュレーション
5)認知療法の理論モデル
6)認知療法の理論モデルに基づくケースフォーミュレーション
7)臨床行動分析の理論モデル
8)マインドフルネスの理論モデル
C その他の心理療法
1)精神分析のアプローチ
2)対人関係療法のアプローチ
3)ブリーフセラピーのアプローチ
4)グループ療法のアプローチ
5)家族療法のアプローチ
6)森田療法のアプローチ
7)内観療法のアプローチ
2 各種技法
A カウンセリング
1)カウンセリングの基本技法
2)フォーカシング
3)ナラティヴ・アプローチ
4)動機づけ面接
B 認知行動療法
1)エクスポージャー療法
2)応用行動分析
3)ソーシャルスキルトレーニング
4)行動活性化療法
5)セルフモニタリング
6)認知再構成法
7)問題解決療法
8)スキーマ療法
9)ACT
10)マインドフルネス
C その他の心理療法
1)リラクセーション
2)催眠法
3)イメージ療法
4)プレイセラピー
第4章 コニュニティ・アプローチ技法
1 コンサルテーション
2 リエゾン
3 リファー
4 危機介入
5 ネットワーキング
6 アウトリーチ
7 包括型地域生活支援
8 予防啓発
9 アドボカシー
10 政策立案
第5章 疾患・問題別の専門技法
1 うつ病
1)うつ病の認知行動療法
2)うつ病の行動活性化療法
3)うつ病の対人関係療法
4)うつ病のマインドフルネス認知療法
2 不安関連障害
1)パニック症の認知行動療法
2)社交不安症の認知行動療法
3)強迫症の認知行動療法
4)PTSDの持続エクスポージャー療法
5)PTSDのEMDR
3 統合失調症
1)幻聴の認知行動療法
2)妄想の認知行動療法
3)陰性症状の認知行動療法
4 摂食障害
1)摂食障害の認知行動療法
5 睡眠障害
6 アディクション
7 性に関する障害
8 パーソナリティ障害
1)パーソナリティ障害の弁証法的行動療法
2)パーソナリティ障害のスキーマ療法
9 身体疾患
1)痛みの緩和
2)生活習慣病へのアプローチ
3)心疾患へのアプローチ
4)がん患者に対する心理的適応支援
5)がん患者の家族支援
6)SHAREプロトコール
10発達障害
1)応用行動分析による早期高密度行動介入プログラム
2)TEACCHプログラム
3)発達障害の認知行動療法
4)ペアレント・トレーニング
5)ペアレント・プログラム
6)不連続試行法(DTT)と自然な発達的行動介入法(NDBI)の統合
7)ESDM:自閉スペクトラム症
8)自閉スペクトラム症の早期支援:JASPERプログラム
9)ソーシャルストーリーとコミック会話
11 認知症
1)回想法
2)認知活性化療法
3)リアリティ・オリエンテーション
4)認知症の応用行動分析
5)認知症者の家族支援
6)認知症ケアスタッフに対する支援
12 高次脳機能障害
1)記憶障害のリハビリテーション
2)注意障害のリハビリテーション
3)実行機能/遂行機能障害のリハビリテーション
4)社会的行動障害のリハビリテーション
5)言語・コミュニケーション障害のリハビリテーション
6)視覚―運動機能障害のリハビリテーション
7)高次脳機能障害患者の家族支援
第6章 公認心理師の諸領域
1 チーム医療における心理師の役割
2 学校における心理師の役割
3 児童福祉における心理師の役割
4 高齢者福祉における心理師の役割
5 産業における心理師の役割
6 司法における心理師の役割
7 行動医学
8 サイコオンコロジー
9 アドヒアランス
10 精神科デイケア
11 ひきこもり支援
索引