リスクがわかると内視鏡の“みかた”がわかる!上部消化管内視鏡の「必携書」
リスク層別化に基づく
上部消化管内視鏡スクリーニング
内容
序文
主要目次
H.pylori の発見とその後の研究により,胃癌を含む胃疾患の概念と対策が大きく変わりました.2013年のヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療の保険適用,2014年に改訂された胃がん検診のガイドラインで内視鏡検査が認められたことにより,胃癌対策はH.pylori 除菌による一次予防と胃がん内視鏡検診による二次予防が可能となりました.また,H.pylori が未感染か否か,胃粘膜萎縮の程度,肥厚性胃炎の有無などにより,胃癌リスク層別化が可能となりました.
「胃炎の京都分類」によるH.pylori 感染診断とリスク層別化による内視鏡スクリーニング検査についての講演をすることが多くなり,実地医療家の先生からためになったと嬉しい言葉をいただくことがありました.この内容を全国の実地医療,内視鏡検診を支える先生に伝えたいと思うものの全国,津津浦浦で講演を行うことはできません.そこで,講演を聴くように,1ページ目から最後まで読んで考え方を理解いただけるような本を作れないか?筆不精な私の,夢のような話でしたが,2019年11月,文光堂編集企画部部長の佐藤真二氏に思いをお話したところ,すぐに社内で検討いただき,具体的な企画が始まりました.企画から3年の月日を要してしまいました.その間,担当の黒添勢津子氏には根気強く,丁寧に対応をいただきました.文光堂と同社の佐藤氏,黒添氏には感謝してもしきれない思いでいっぱいです.
企画段階で執筆者は講演と同様に最少人数でと決まりました.そこでオリンパス社の座談会“上部消化管癌スクリーニングUPDATE:リスク層別化と内視鏡の進歩がもたらす検査の効率と質の向上”で,ご一緒していただいた堅田親利先生,青木利佳先生にお願いしたところ,趣旨に賛同いただき,日常の多忙な業務の中で執筆いただきました.堅田先生,青木先生に深謝致します.また,八木一芳先生,西川 潤先生,丸山保彦先生,久保公利先生,遠藤昌樹先生,田中聖人先生,加藤勝章先生,井上和彦先生,春間 賢先生にはそれぞれご専門の分野について執筆いただきました.そして,日本消化器内視鏡学会の内視鏡検診・健診あり方検討委員会,その後の消化管内視鏡スクリーニング認定制度委員会の前担当理事である恩師の加藤元嗣先生,委員長であり大学の先輩である松田尚久先生にお言葉を寄せていただきました.
この本の作成に携わっていただいたすべての方々に,心よりお礼申し上げます.本書を手に取っていただいた皆様の日々の内視鏡スクリーニング検査の一助となれば幸いです.
2022年9月
淳風会健康管理センター倉敷 センター長
間部 克裕
Ⅱ.問診で決まる内視鏡観察―すべては問診から
Ⅲ.胃カメラは苦しい??―苦しくない,安全で高精度の内視鏡検査のために
[1]前処置―局所麻酔,経鼻内視鏡のスティック法
[2]内視鏡スコープの患者間洗浄
[3]次回も受けたくなる安全で楽な内視鏡検査とは?
[4]内視鏡検査に必要な機器
[5]上部消化管内視鏡スクリーニング検査における適切な検査時間
Ⅳ.リスク因子からみた内視鏡観察のポイントは?
Ⅴ.リスク別にみる内視鏡観察のコツ―咽喉頭・食道
[1]「ピロリ未感染」でも忘れてはならない咽喉頭・食道癌のリスク
[2]リスク別にみる咽喉頭・食道観察のコツと実際
[3]咽喉頭・食道癌の一次予防,二次予防
Ⅵ.リスク別にみる内視鏡観察のコツ―胃
[1]H.pylori 感染状態と背景粘膜からみる胃癌のリスク
[2]リスク別にみる胃観察の実際とコツ
[3]胃癌の一次予防,二次予防
column
H.pylori 除菌後の再感染率,成人の新規感染
胃がん検診で除菌後胃癌を発見するために
EBウイルス関連胃癌の特徴と意義
non-Helicobacter pylori-Helicobacter(NHPH)胃炎とは?
好酸球性胃炎の特徴と診断のコツ
A型胃炎の診断と関連腫瘍
十二指腸スクリーニング・観察法と十二指腸腫瘍(SNADET)
特別寄稿
JEDとスクリーニングにおけるJEDの重要性
「胃炎の京都分類」の立場から
血液検査によるリスク層別化について
胃癌罹患リスクを考慮した胃内視鏡観察の重要性
略語一覧
索 引