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運動器疼痛や身体の不調の原因はfasciaにある!Fasciaに対するより正しい知識を得て,リハビリテーションで活用する!!

運動器リハビリテーションに役立つ

Fasciaのみかた・とらえかた

  • 編集:今北英高(埼玉県立大学教授)
  • B5判・228頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-4708-6
  • 2023年11月1日発行
定価 6,050 円 (本体 5,500円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

ICD-11に体組成の基本構造物として追加され注目されているfasciaをリハビリテーションにおける総論・病態・臨床の観点で詳解.Part ⅠではFasciaの基礎,Part Ⅱでは痛みのリハビリテーション,Part Ⅲでは運動器の病態・適応・リハビリテーション,Part ⅣではFasciaに対する評価とリハビリテーション,Part ⅤではFasciaに対する代表的な評価方法,Part ⅥではFasciaにおける代表的な治療方法を解説している.Fascia研究の世界的権威であるPadova大学教授のCarla Stecco氏の講演を再構成し翻訳した2項目も掲載.これからの運動器リハビリテーションに欠かせない知識と実践のための一冊.


 「筋膜」から「fascia」へ,医療関係者の間で認識が変化しています.
 Fasciaとは,いわゆる全身の組織間結合や組織自体を包み込んでいる結合組織(connective tissue)の一種で,全身にある臓器を覆い,接続し,情報伝達を担う線維性の立体網目構造状の組織です.Fasciaは臓器の動きを滑らかにし,これを支え,保護して位置を保つシステムであり,“保護” と“伝達” という機能を有しています.それだけではありません.本書中にも記載していますが,適度な固定とともに筋収縮による動きの伝達を生み出しています.筋張力の伝達は,通常腱を介して行われますが,そのうち30%は筋張力に並行した結合構造―いわゆるfasciaなどによって伝達されるという報告もあります.
 さまざまな構造や機能をもっているfasciaは,今まで特定の臓器,いわゆる骨格筋や心臓・肺などに付随し,邪魔なものもしくは不要なものとして扱われており,研究対象にもなりませんでした.
 しかし,最近注目されています.なぜでしょうか.
 それは,fasciaが“痛み” と密接に関係しているからではないでしょうか.
 2016年に行われた第一三共ヘルスケア株式会社によるインターネット調査では,30代・40代男女の多くが肩こりや腰痛に悩まされ(肩こり54.6%,腰痛46.8%),ほぼ毎日痛みを感じていると報告されています.いずれも皮下の組織で感じることが多いのですが,そこにはfasciaが存在します.superficial fascia(浅筋膜)やdeep fascia(深筋膜)は皮下に存在するfasciaですが,その中を末梢神経や毛細血管が方向を誘導され走行しています.また,痛みの受容器である自由神経終末やさまざまなメカノレセプターもfasciaに局在します.
 Fasciaの異常により,筋張力の伝達が阻害されたり,関節可動域が制限されたり,微小循環が障害されたりすることで,痛みが発生します.そこにはfascia間に存在する線維芽細胞や肥満細胞,平滑筋細胞の活性化,血流を部分的に阻害されることによる側副血行路の形成,痛みの神経線維であるC線維やAδ線維の誘導,炎症性サイトカインの集積など,さまざまな生体反応が複雑に生じていると考えられています.
 本書は,このfasciaに焦点を当て,総論として,解剖学的・生理学的・分子生物学的な基礎知見,痛みのリハビリテーション,病態,そして臨床に活かせるfasciaに対する評価から代表的な治療方法までをそれぞれの専門家にご執筆いただきました.
 Fasciaに関しては,医学的に体系化されてはおらず,今後も新しい知見が発表されると思われます.しかし,現時点におけるfasciaと運動器リハビリテーションに特化した書籍は,本書が日本初であり,多くの治療家のご参考になれば幸いに思います.

2023年10月
今北英高
総 論
 Part Ⅰ Fasciaの基礎
  1 Fasciaの解剖学的見地
  2 胸腰背部fasciaの機能解剖
  3 Fasciaの生理学的見地
  4 ホルモンやウィメンズヘルスに関連するfascia研究
  5 Fasciaの分子生物学的見地
 Part Ⅱ 痛みのリハビリテーション
  1 痛みとfasciaの関係
  2 Fasciaに対する発痛源評価の概念
  3 デルマトーム・ファシアトーム・アンギオソームを含む発痛源評価
  4 スクレロトームを用いた評価

病 態
 Part Ⅲ 運動器の病態・適応・リハビリテーション
  1 骨格筋とfascia
  2 関節運動のリハビリテーション
  3 低酸素とfascia

臨 床
 Part Ⅳ Fasciaに対する評価とリハビリテーション
  1 ICFとリハビリテーション
  2 Fasciaに対する専門職間連携協働のための独自性と共通言語
  3 Fascia異常が原因のスポーツ傷害に対するリハビリテーション
  4 Fasciaと術後リハビリテーション
  5 高齢者に対するfascia異常とリハビリテーション
  6 ウィメンズヘルスに対するfasciaとリハビリテーション
  7 Fasciaに対する作業療法
  8 セルフケア・生活指導
 Part Ⅴ Fasciaに対する代表的な評価方法
  1 Fasciaに関連する運動器疾患の評価
  2 Fascia異常が原因の整形外科疾患に対する評価と治療
  3 Fasciaに対する悪化因子の評価
  4 Fasciaのエコー解剖とエコー下触診
 Part Ⅵ Fasciaに対する代表的な治療方法
  1 Fascial painに対する各種運動療法
  2 Fasciaの病態仮説から考案したfascial stimulation concept
  3 Fasciaに対する組織間リリース
  4 Fascial painに対する物理療法
  5 Fasciaを考慮した外傷後の機能解剖学的運動療法
  6 Fasciaと皮膚テーピング
  7 Fasciaに対する鍼灸療法

Column Fasciaハイドロリリースの基礎
Column Fasciaとボツリヌス毒素療法

索引