TOPページへ

門脈圧亢進症の治療適応・治療法選択について具体的に解説したガイドブック!

門脈圧亢進症の診療ガイド2022

  • 編集:日本肝臓学会・日本門脈圧亢進症学会
  • B5判・136頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2112-3
  • 2022年10月4日発行
定価 3,300 円 (本体 3,000円 + 税10%)
あり
在庫
電子版販売サイト

上記の電子版販売サイトのボタンをクリックすると,外部のサイトに移動します.電子版の購入方法は各販売サイトにてご確認ください.

内容

序文

主要目次

非代償性肝硬変の主要な死因の一つである門脈圧亢進症.本疾患をよく理解し,対応することは全ての肝臓専門医に求められている重要事項といえる.本書は,肝硬変などによる門脈圧亢進症の治療に肝臓専門医が対峙する際の,“より具体的な治療適応の指針”を示すことを目的としている.「肝硬変診療ガイドライン」や「門脈圧亢進症取扱い規約」,「門脈圧亢進症診療マニュアル」では記載しきれなかった診療上の重要事項が満載の実践的1冊.
序 文

 門脈は肝臓と消化管(および脾臓)をつなぐ特異な血管系であり,消化管で吸収された栄養素を肝臓に運ぶ役割を担っています.門脈圧は動脈圧よりも低く,正常では静脈圧よりわずかに高い(5mmHg以内)低圧系ですが,肝硬変や門脈の閉塞,バッド・キアリ症候群などにより門脈圧が上昇します.門脈圧の亢進は,腸管の浮腫や脾腫,あるいは腹水の原因になるとともに,門脈大循環シャントが形成され,静脈瘤の発生や肝性脳症を引き起こします.いずれの症候も,生活の質を大きく損ない,また時に致死的な合併症となります.門脈圧亢進症を起こす最も頻度の高い疾患は肝硬変ですが,非代償性肝硬変の主要な死因は,肝癌を除くと,門脈圧亢進症の合併症によるものです.門脈圧亢進症をよく理解し,対応することは,全ての肝臓専門医に求められている重要な事項と言えます.
 日本肝臓学会は「肝硬変診療ガイドライン」を,2020年に日本消化器病学会と合同で改訂しました.そして,ここに新たに「門脈圧亢進症の診療ガイド2022」を,日本門脈圧亢進症学会と合同で作成し,出版することにしました.門脈圧亢進症に関するエビデンスに基づく診療については「ガイドライン」を参照していただきたいのですが,門脈圧亢進症をよりよく理解するために,ぜひこの「ガイド」を参考にしていただきたいと思います.ガイドラインには収載できなかった診療上の重要事項について,エキスパートの先生方に丁寧に解説いただいています.門脈圧亢進症の診断と治療には,観血的な処置を伴う専門性の高いものもあり,施設によっては日頃ご経験の少ない領域もあるかもしれません.本書を通読していただくことにより,門脈圧亢進症の全体像をより見通しの良いものにしていただくことができるのではないかと思います.
 本書が,皆様方の,日々の診療に役立つことを祈念しております.

2022年8月
一般社団法人日本肝臓学会理事長
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
竹原徹郎


序 文

 本書作成の第一義は,肝臓学会の専門医が,肝硬変症などにおける門脈圧亢進症の治療に実際に対峙する際の“より具体的な治療適応の指針”を日本肝臓学会・日本門脈圧亢進症学会の共同で作成し,ガイドすることにある.
 その背景としては,2020年11月に日本消化器病学会と日本肝臓学会の共同で改訂した「肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版)」が発刊され,その内容はCQ,BQ,FRQの形式で主に病態の診断および主な治療法が紹介され,EBMに基づいた個々の成績からの推奨を行うものであったことにある.
 また日本門脈圧亢進症学会では,1997年から病態・診断を中心とした「門脈圧亢進症取扱い規約」を刊行しており,また2015年より治療に特化した「門脈圧亢進症診療マニュアル」が発刊されていた.
 そこで,今回は,実際に症状と検査所見を有する症例に遭遇したときに,治療を行う側から次に行うべき必要な(具体的な)検査法を指示し,これに立ち向かうための診療手順,すなわち治療適応の具現化をガイドとして示すべきではないか?と考按した.言い換えれば,適応となる症状・所見を診た場合に,次に何の検査を行えば治療法を決定できるのか?ということである.
 時代的背景としては,2017年に西欧から,食道胃静脈瘤が存在するC 型代償性肝硬変ではDAAによりSVRとなっても4割近くの症例では肝不全への進展を回避できない,とする報告が相次ぎ発信され,その“Point of no return”は門脈圧亢進症の存在にある,という趨勢のなか,遂にわが国では非代償性肝硬変に対するDAAが保険適応となり,EIS/EVLに止まらずshunt occlusionやPSEはDAAの前か後か?という議論が活発であった.
 思い起こせば,本書作成の契機は,2018〜19年当時,日本消化器病学会・日本肝臓学会双方の理事であり日本門脈圧亢進症学会の副理事長でもあった佐々木裕先生(熊本大学教授)が軸となり,当方から,日本肝臓学会新理事長になられたばかりの竹原徹郎先生に今回の目的(門脈圧亢進症治療適応の具現化)を提案しご理解いただき,本領域の治療の必要性を肌で感じておられた日本肝臓学会企画広報委員長の持田智副理事長との検討から,両学会による門脈圧亢進症診療ガイド作成に至った.
 以上,本書は日本肝臓学会・日本門脈圧亢進症学会の精鋭が集結し,病態診断から単なる治療法の紹介にとどまらず,具体的な治療適応に至る手順を示したものがほとんどである.是非,実際に手に取って,電子カルテに対峙していただければ幸いである.
 なお,日本門脈圧亢進症学会では,次回「門脈圧亢進症診療マニュアル」改訂時に治療適応の項を増設し,本項をそのまま「日本肝臓学会とのコンセンサス(共同制作)あり」とうたい記載する予定である.

2022年8月
一般社団法人日本門脈圧亢進症学会理事長
新百合ヶ丘総合病院肝疾患低侵襲治療センター長/内視鏡センター長
國分茂博
第1章 門脈圧亢進症の概要と分類
 概要と分類

第2章 門脈圧亢進症の診断
 1.血液生化学(血小板・総胆汁酸・アンモニア/M2BPGi/オートタキシン)
 2.内視鏡検査
 3.超音波(エラストグラフィを除く)
 4.造影CT
 5.門脈圧測定
 6.エラストグラフィ(超音波エラストグラフィ/MRエラストグラフィ)

第3章 門脈圧亢進症の治療適応と治療法の選択
 1.消化管静脈瘤
  ①食道胃噴門部静脈瘤治療の適応と選択
  ②孤立性胃静脈瘤治療の適応と選択
  ③異所性静脈瘤治療の適応と選択
  ④再発時薬物療法
 2.門脈血栓症
 3.肝性脳症
 4.難治性腹水
 5.門脈圧亢進症性胃症(PHG)
 6.血小板減少
 7.PoPH
 8.門脈圧亢進症の背景肝硬変への原因治療
 9.門脈圧亢進症に対する肝移植の適応

第4章 各種原因における門脈圧亢進症への対策
 1.バッド・キアリ症候群
 2.チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の門脈圧亢進症への影響
 3.オキサリプラチンによる肝中心静脈閉塞症(VOD)/肝類洞閉塞性症候群(SOS)
 4.造血幹細胞移植後のVOD/SOSとデフィブロチド 

第5章 今後の課題-Where is “Point of no return”を求めて
 SVR後肝硬変のPoint of no returnは門脈圧亢進症の存在か?

索 引