分子病理専門医試験受験者必携!資格取得後も役立つ分子病理学の決定版テキスト!!
がんゲノム病理学
内容
序文
主要目次
1858年にRudolf Virchowが細胞病理学を著わし,以来病理学は形態学に基づき進歩し医学研究の基盤分野の1つとなった.また20世紀後半には,診断学の面でも発展し,現代医療において病理診断は必要不可欠な分野となっている.歴史的に,光学顕微鏡に加えて電子顕微鏡,免疫染色,遺伝子検査などその時代の技術とともに病理学は発展してきた.2001年にはヒト全ゲノムが解読され,次世代シークエンサーの登場とともに,短時間で膨大なゲノム情報を得ることが可能となり,ゲノム診断時代が到来した.
今後一層,形態診断とゲノムの診断を融合した次世代型の病理診断が進化すると思われる.このような中,日本病理学会は分子病理専門医制度を開始し,2020年には第1回の試験が開始された.当面,分子病理専門医は2019年から我が国ではじまったがん遺伝子パネル検査において,治療方針を議論するエキスパートパネルの場で活躍することが期待される.さらに将来はがんに限らずさまざまな診療分野にも活躍の場が広がると思われる.がん遺伝子パネル検査を中心とする分子病理専門医試験については,日本病理学会主催の講習会の受講が受験の要件となっており,講習会では,ゲノム医療に関する法的事項,検体の管理,がんゲノム異常,遺伝子プロファイリング検査,分子標的治療薬等の項目について,それぞれの基礎知識を学ぶ.また,実際の試験は,がんゲノム医療の基礎知識を問う問題と症例問題が出題される.このような状況の中,がんゲノム医療について基礎から臨床までを幅広くカバーした参考書に対する要望が多く寄せられたため,分子病理専門医にとって知っておくべき知識をまとめたテキストを構想するに至った.本テキストでは,各執筆者にそれぞれのパートで,知識を確認するための仮想問題も作成していただいたので活用されたい.
本テキストが分子病理専門医の受験のみならず,がんゲノム医療にかかわる臨床医,臨床検査技師,遺伝カウンセラーなど多職種の皆様が業務を進める上での道標となり,我が国のがんゲノム医療の発展に寄与できることを祈念する.
2021年11月
田中伸哉・西原広史
Ⅰ.がんゲノム病理学の歴史と現状
Ⅱ.分子病理学的解析手法
Ⅲ.分子病理診断における検査の品質保証
COLUMN がん遺伝子物語 がん遺伝子の研究で明らかになったチロシンリン酸化の役割
練習問題
第2章 ゲノム医学の基礎知識
Ⅰ.分子生物学
Ⅱ.分子腫瘍学
Ⅲ.遺伝性腫瘍
練習問題
第3章 ゲノム医学における解析手法
Ⅰ.DNAシークエンス
Ⅱ.RNAシークエンス
Ⅲ.エピゲノム解析
Ⅳ.FISH
Ⅴ.リキッドバイオプシー
COLUMN シークエンサーの開発競争とコストの変遷
練習問題
第4章 病理検体に基づくゲノム解析
Ⅰ.病理検体の処理と核酸抽出
Ⅱ.核酸品質とシークエンス
Ⅲ.バイオインフォマティクス解析
Ⅳ.組織診断とゲノム解析
COLUMN 腫瘍細胞含有割合の判定
練習問題
第5章 がんゲノム医療の臨床
Ⅰ.コンパニオン診断薬・診断システム
Ⅱ.がんゲノムプロファイリング検査
Ⅲ.エキスパートパネルにおける病理医の役割
Ⅳ.エキスパートパネルにおける治療選択
COLUMN がんゲノムプロファイリング検査を支えるチーム力
練習問題
第6章 バイオバンクと医療ビッグデータ
Ⅰ.ゲノム医療とバイオバンク
Ⅱ.デジタル病理画像とAI
Ⅲ.ゲノム診断・研究における個人情報の保護・倫理に関わる知識
COLUMN デジタル病理の未来図
練習問題
第7章 症例問題
症例1 腹膜がん
症例2 上行結腸がん
症例3 皮膚腫瘍
症例4 子宮体がん
症例5 脳腫瘍
索 引