これから心臓MRIを始めたい・勉強したい人に向けた一冊!
循環器医・放射線科医のための
ゼロからわかる心臓MRI
内容
序文
主要目次
KCMR(Kansai Cardiac Magnetic Resonance)は大阪市立大学,神戸市立医療センター中央市民病院,兵庫県立姫路循環器病センター,国立循環器病研究センター,和歌山県立医科大学が中心になって2010年に立ち上げられた.
「関西における循環器医のための心臓血管磁気共鳴像magnetic resonance imaging(MRI)の臨床,および研究上の位置を確立し,その普及・発展に向けて,臨床での立ち上げから研究応用まで企画・実践すること」を目的とし,当初は年2回,現在では年1回研究会が開催されている.KCMR研究会ではテーマを決め,複数の施設から実臨床での心臓MRIの有効例,失敗例を持ち寄り,実際の臨床現場での疑問を気取らず,包み隠さず,ざっくばらんに議論してきた.またテーマに則した専門家を招聘し,循環器内科医,放射線科医のみならず,放射線技師,各企業のアプリケーションとともに議論を深めるよう工夫してきた.
KCMR立ち上げ当初には,上記目的達成のために研究会の開催のみならず,症例の蓄積,ひいてはテキスト作成が念願であった.
「これから心臓MRIを始めたい,勉強したいが,何か読みやすいテキストはないか?」との質問を多く受ける.MRI専門書の1ページ目を開けてみる.「T1緩和」,「T2緩和」,「フーリエ変換」……がんばって2時間黙々と読んでみる.どの用語も難解で,ハードルが高すぎる.当然である.MRIの原理はBlochとPurcellらにより発見されたノーベル賞をとるほどの物理化学現象なのである.それをわれわれ循環器医が理解するには無理がある.これではいつまで経っても心臓MRIが循環器医に普及しないのである.
そこで本書は,心臓MRIが実臨床でどのような場面に必要となり役立つのかを「日本循環器学会ガイドライン」に準拠した形で解説している.「MRI知識ゼロの循環器医」,あるいは「MRIには慣れているが,心臓は初めての放射線科医」が明日からすぐにでも始められ,臨床に活用できるよう「シネMRI」,「T2強調black blood」,「遅延造影」の3つの基本撮像法にしぼり,シンプル,かつクリニカルパールがちりばめられたテキスト作りを目指した.
本書は症例集としても使用できるよう,できるだけ多くの画像を整理し掲載した.心臓MRIは各施設だけでは症例数が少なく,またゴールドスタンダードとなる答えがないのも読影を難解にしている一因である.ある症例では心臓MRIだけでは意見が分かれたり,どちらとも判断のつかないグレーゾーンが多く存在する.それでも臨床家はあらゆる臨床情報を統合し,一定の答えを導き出すのである.ここに掲載された症例は決して「これが正解である」という画像ではなく,臨床判断したものも数多く存在することを踏まえて参考にしてほしい.
本書がMRI室の片隅で新品のまま眠るのではなく,実臨床で心臓MRI検査を施行する際の「携帯本」としてボロボロになるまで活用されることを切に望む.
最後に,本書執筆にあたり,多くの画像を撮像いただいた放射線技師の皆様,多くの助言をいただいた各MRI機器メーカーのアプリケーション,初心者でも読みやすい本書の構成にアドバイスをいただいた大阪市立大学循環器内科 松本健嗣先生,出版にあたって終始ご努力いただいた文光堂の阿部柚香,佐藤真二両氏に心から御礼申し上げたい.
2020年10月
江原省一
Ⅰ 心臓MRIは循環器臨床に不可欠か?
Ⅱ どんな場面で心臓MRIを撮像するのか?─循環器ガイドラインから考える
Ⅲ 実際の撮像
1 撮像するにあたって
2 心臓MRIのオーダーの仕方とMRI禁忌症例・ガドリニウム造影剤禁忌症例のスクリーニング
3 ベクトル心電図とポジショニング
4 明日から使える3つの基本撮像法
①はじめに
②シネMRI
[Topics]心機能解析
③T2強調black blood
④遅延造影
[Coffee Break]大阪市立大学での実際の撮像風景
[Topics]遅延造影早期相の有用性
5 3T vs 1.5T ─心臓MRIにおける現状
6 レポートの書き方と保険収載
Ⅳ まずは虚血性心疾患,そして心筋症へ
各 論
Ⅰ 心臓サルコイドーシス
Ⅱ 拡大心
1 拡張型心筋症
2 虚血性心筋症
Ⅲ 肥大心
1 肥大型心筋症
2 その他の心肥大を呈する疾患
[Topics]T1 mappingの撮像・解析
Ⅳ 心膜疾患
Ⅴ 心筋炎
Ⅵ 不整脈原性右室心筋症
Ⅶ 心臓腫瘍
最後のお願い
索引