「認知症=もの忘れ」じゃない!見逃しを防いで適切な治療・ケアをしよう
そうだったんだ!認知症(電子版のみ)
治療・ケアがうまくいかないのは認知症のせい?
内容
序文
主要目次
社会の高齢化を反映して,外来でも入院でも,高齢者が治療を受ける場面が増えてきました.歩調を合わせて,認知症を合併している事例も増えてきています.しかし,急性期・一般病院では,認知症の人のイメージがピンとこない,ということも一方で聞きます.
たとえば,
「認知症っていうと新しいことを覚えられないのですよね.であれば,覚えられれば問題ないのですよね?」
「新聞では,認知症の対応というと徘徊とかで介護が大変と取り上げていますよね.徘徊がなければ特に治療やケアで心配することもないのでは?」
のように.
たしかに,認知症が体の治療の場面でどのような姿となって現れてくるのか,ほとんど情報が出ていませんので,イメージをもちにくいのももっともなことです.
実際に認知症をもつ患者は急性期・一般病院ではすでに当たり前のようにいます.しかし,認知症ケアの本が解くような,「何度も同じ話を繰り返す」とか「迷子になった」とかのいかにも認知症らしいエピソードで現れることは少ないのも事実です.では,どこに潜むのでしょうか.
実は,
「特に消化器の問題はないのに食事が進まない」とか
「元気に退院をしたのに一週間も経たずに脱水になって再入院をしてきた」
などのちょっとしたトラブルの背景に,潜んでいることが多いのです.
また,認知症の治療・ケアというと,特殊な治療・ケアであったり,徘徊にずっと付き添うことのように思われがちです.しかし,急性期病院での認知症治療・ケアの主たる場面は,低栄養を防ぐための食事の観察と介助であったり,確実に退院支援で引き継ぐことであったりもします.
本書は,このようにイメージがもちにくい急性期・一般病院での認知症への対応について,
・どのようなところが認知症がからむ問題なのか
・どのようにすることが認知症の治療・ケアなのか
について,具体的にお伝えすることを意図して作成しました.具体的に想像しやすいように,「よくある」エピソードを中心に編んでいます.気楽に読んでいただき,認知症治療・ケアのイメージを持つお役にたてればこれに勝る喜びはございません.
また,お忙しい中,執筆の労を取ってくださった先生方にはこの場を借りまして篤く御礼申し上げます.先生方のお力添えなくして本書はできませんでした.
2016年7月吉日
国立がん研究センター東病院精神腫瘍科
小川朝生
II 見過ごさないで! 認知症
① 認知症に気付く(初診・入院時)
② 認知症に気付く(慢性疾患でかかりながら)
③ 認知症に気付く(同居者に尋ねる)
④ BPSDとは?
III 認知症と認知症でないものを区別する
(認知機能障害の鑑別)
① 身体疾患を鑑別せずに認知症と診断しないこと
② せん妄との鑑別
③ うつ病との鑑別
④ 薬剤による認知機能低下
⑤ 3大認知症
IV こんなときどうする?
一般病院で認知症が問題になるケース
① 軽度の認知症(認知症の人が抱える困難感)
② 中等度以上の認知症(認知症の人のコミュニケーション)
③ 食事を摂らない
④ 疼痛にまつわる問題
⑤ 薬の内服
⑥ セルフケア
V BPSD(認知症に伴う様々な行動心理学的症状behavioral and psychological symptoms of dementia)
① 怒り,暴言への対応
② 拒薬への対応
③ ケアに対する抵抗への対応
VI 認知症患者・家族のためにすぐに始められる工夫
① 環境調整
② 退院支援
③ 社会資源の導入
④ 家族へのケア(家族の苦痛と介護の負担)
VII 薬物治療
① 薬物治療をめぐって(抗精神病薬)
② 薬物治療をめぐって(認知機能改善薬)
索引