術中迅速病理診断でもう迷わない!実践のコツとポイントを分かりやすく解説した,そなえて役立つ現場の指南書
新刊術中迅速病理診断スタンダード
検体の取扱いから診断の実際まで
内容
序文
主要目次
術中迅速診断は病理医にとって最も緊張する業務の一つである.しかし,癌取扱い規約や診療ガイドライン,病理組織検体取扱い規程などをみても,実地診療上の術中迅速診断業務における検体処理法や,その適応と限界について具体的に記載されたものは少なく,検体処理・標本作製から臨床医との対峙を含む迅速診断,そして固定後診断まで,各施設の“我流”で行われているのが実状ではないだろうか.私たちは『病理と臨床』39巻1号(2021年)で「術中迅速診断─ どこまで答えるべきか?─ 」という特集を編集し,好評を得た.このたび,これをベースとし,日本の術中迅速診断業務に即した新たなスタンダードになることを目指して本書を企画した.
本書は第1部と第2部から構成され,第1部では総論,検体の取扱いと美麗な標本の作製法,遠隔術中迅速診断,術中迅速免疫染色,術中迅速細胞診,報告の仕方,感染対策,精度管理を取り上げた.第2部では各論として,乳腺,脳,肺,リンパ系,消化管,膵,胆道系,頭頸部,泌尿器,婦人科,骨軟部,小児腫瘍の各検体についての術中迅速診断の実際を取り上げた.また全編に興味深いコラムを散りばめた.
編者として本書の全体像にいち早く接する機会に恵まれた立場から申し上げると,本書には一般的な病理学の教科書とは少し趣きの異なる点がある.著者の方々に原稿を依頼した際,臨床情報収集,検体処理から診断の実際まで,他項との重複を恐れずに解説していただくことを敢えてお願いした.その結果,基本的事項は臓器が異なっても共通したところが多く,同じようなことが繰り返し言及されている点もある一方で,各臓器の固有事項,施設ごとの特性や工夫,各著者の見方や考え方が随所に披露されたものとなった.言葉を換えれば,術中迅速診断における正解は必ずしも一つではなく,様々な改善の余地があり,未開拓領域が広く残されていることを物語っているともいえる.
本書はこうした術中迅速診断の実像が漸層的な話法で語りかけるような形として仕上がっており,通読してこそ読者に伝わる良さがあると確信している.また,臓器を問わず,細胞診を併用することの有用性や,病理医,臨床検査技師,臨床医が密接に連携することの重要性が繰り返し述べられていたことも印象的だった.本書が病理医や臨床検査技師だけでなく,術中迅速診断を依頼する臨床医にもご活用いただけることを願っている.
2024年9月
九嶋亮治
笹島ゆう子
横尾英明
Ⅰ 術中迅速診断総論
Ⅱ 術中迅速検体の取扱いと美麗な凍結標本の作製
1.総論
2.乳腺,リンパ節
3.脳
4.呼吸器
5.頭頸部
6.骨軟部
COLUMN ラマン組織学を用いた術中迅速診断の可能性
Ⅲ 遠隔術中迅速診断
Ⅳ 術中迅速免疫染色
Ⅴ 術中迅速細胞診
Ⅵ 術中迅速診断の報告の仕方
COLUMN 迅速診断当番のある一日
Ⅶ 術中迅速診断における感染対策─肺病変を主体として─
Ⅷ 術中迅速診断の精度管理
COLUMN その迅速診断,いるの?
第2部 各 論
I 乳腺腫瘍
1.断端チェックをしていない施設
2.断端チェックをしている施設
Topics OSNATM法
Ⅱ 脳腫瘍
Ⅲ 肺腫瘍
Ⅳ リンパ増殖性疾患
Ⅴ 消化管腫瘍
1.消化管腫瘍
Topics Hirschsprung病の病理診断と術中迅速診断
Ⅵ 膵腫瘍
Ⅶ 胆道腫瘍
Ⅷ 頭頸部腫瘍
Ⅸ 泌尿器腫瘍
Ⅹ 婦人科腫瘍
1.子宮腫瘍
2.卵巣腫瘍
Ⅺ 骨軟部腫瘍
Ⅻ 小児腫瘍
COLUMN 迅速診断ってかっこいい!─学生実習における迅速病理診断見学の効用─
索 引