スポーツ外傷・障害の急性期理学療法を極める!
スポーツ理学療法プラクティス
急性期治療とその技法
内容
序文
主要目次
我が国のスポーツは,ここ数年間で大きく様変わりをしています.2011年に施行されたスポーツ基本法には,スポーツに関する施策が国の責務であると明記され,競技力の向上とともに,障がい者スポーツ,地域スポーツ,生涯スポーツなど,実施目的と対象者層が拡がる契機となりました.同法では競技水準の向上,国民のスポーツ機会の確保などとともに,スポーツ外傷・障害の予防や科学的研究の推進についても強調されています.
スポーツ理学療法も,医療機関のみでなくスポーツフィールドなどにも実践の場を拡げながら,さまざまな対象者からのスポーツ復帰,外傷・疾病予防,パフォーマンス向上などに関する要望に応えつつあります.
さらに,2019年ラグビーワールドカップ,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会,2021 年関西マスターズゲーム等々の世界的な大イベントを控えることからも,提供する内容を一層充実させるべく,付加しておくべき知識や技能は少なくないと感じています.
このような背景の中,スポーツ理学療法に長く関わってきた我々編者が,スポーツ理学療法の現状を踏まえて,「これから」と「国際基準」を見据えて議論を進めてきました.そこから,早急な実施内容の補完とレベルの向上を要する事柄について整理し,スポーツ理学療法プラクティスシリーズとして企画しました.
本巻で取り上げた急性期治療も,その重要なテーマのひとつになります.
急性期治療とは,受傷直後の評価から導く救急処置と急性期理学療法を包括したものと捉えています.受傷後早期から治癒促進をはかるための積極的なアプローチの実践を指すものになり,これは,通常の救急処置や術後管理をさらに進めた概念であるといえます.急性期のヒーリングプロセスの促進に,スポーツ理学療法の知識や技能が貢献できるところは多々あります.しかし,我が国の医療機関やスポーツフィールドにおいて,それらが認識,活用されているとはいえない現状です.
本書は,日頃から急性期治療を実践されている著者の方々に,具体的な働きかけと,そのベースともなる損傷組織のヒーリングプロセスの知識に至るまで,スポーツ理学療法における急性期治療の「幹」を記していただきました.的確な急性期治療に欠かせない充実した内容の一冊になっていることは間違いありません.日常の業務でご多忙の中,本書の執筆にご協力いただいた37名の先生方,企画・編集に携わっていただいた中村
晴彦氏,増谷亮太氏に感謝の意を表します.
この一冊を通じて,リハビリテーション,外傷予防,パフォーマンス向上などに加えて,急性期治療がスポーツ理学療法の主要な位置づけとなり,スポーツに取り組む方々の早期の円滑なスポーツ復帰,より良いスポーツ活動の一助となっていくことを願います.
2017年8月
日本福祉大学 小林寛和
スポーツ理学療法における急性期治療の位置付け
II 理学療法の基礎科学
1 組織のヒーリングプロセス
1)骨・軟骨
2)成長軟骨
3)筋
4)靱帯
5)半月板
6)皮膚・皮下組織
7)腱・筋腱移行部
2 RICEの科学
III 急性期における部位・病態別理学療法のポイント
1 体幹
1)頭頚部−外傷
2)脊椎脊柱−ヘルニア・腰椎分離症
3)脊椎脊柱−機能性腰痛
2 上肢
1)肩関節−外傷
2)肘関節−外傷
3)手関節−外傷
4)上肢スポーツ障害
3 下肢
1)股関節−外傷
2)股関節−グローインペイン
3)大腿部−肉離れ
4)膝関節−膝関節靱帯損傷
5)膝関節−半月板単独損傷(縫合術後)
6)足関節−捻挫
7)足関節−アキレス腱断裂
8)下肢スポーツ障害
索 引