筋持久力増強運動の知識・技術を,的確に深く理解できる1冊!
明日の運動療法を磨く理学療法プラクティス
こだわり抜く筋持久力増強運動
内容
序文
主要目次
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例)p.132,図3B 股関節外転筋の静的筋持久力評価(動画2)
街を歩いていると,ちょっとした段差につま先が引っかかる(躓く)ことを体験する年齢になってきた.“ヤバイ!ロコモ(シンドローム)の到来か?”と不安が募る.この経験を顧みると,歩行という繰り返す連続動作の中で内的な“運動イメージ”とは異なった動作エラー(誤認識)によって躓いたのではないかと考えられる.このような現象は,高齢者における転倒やスポーツ選手に発症する腰痛などの慢性痛にも通じるものがあるのではないだろうか?言い換えると,繰り返す持続的な筋収縮力によって“運動イメージ”と実際の現象との間に誤認識が生じて転倒や慢性スポーツ外傷(スポーツ障害)を引き起こしている可能性があるのではないか?このような疑問をもっていた私にとって,“筋持久力”をテーマとした本書の編集作業は,重大な責務を感じつつも非常に有意義な挑戦の機会をいただくこととなった.
一般的に持久力は,心肺機能に依存した有酸素性エネルギー供給系による全身の運動能力(全身持久力)である.一方,末梢器官では筋を持続的に収縮し続ける局所の運動能力(局所持久力)が求められ,日常生活活動に大きな影響を与えており,理学療法プログラムを考慮するうえでも重要な要因の1つである.しかしながら全身持久力と比較して局所の筋持久力に関する研究報告は少なく,臨床現場における理学療法評価法とその治療法に関するエビデンスもまだまだ確立されていない現状にある.
このような中で本書「こだわり抜く筋持久力増強運動」において「筋持久力とは,持続的に筋収縮を繰り返すことができる能力」と定義し,運動生理学に関する基礎知識から疾患別の実践的理学療法にわたって最新の情報を網羅できるように創意工夫を試みた.特に筋生理学的観点は,筋持久力に関連する筋・神経・血管など末梢器官に生じる変化を理解しておくことが重要であることから,この領域のトップランナーである研究者の先生方にもお力添えいただいたことは,本書の強みである.さらには理学療法評価および治療プログラムに関して,関節部位別やライフスタイルに合わせたトレーニングやエクササイズ法について,具体策を提示しながら解説していただいた.またトピックスとして,筋持久力改善につながる方法をミニレクチャーとして紹介した.このように“筋持久力”をキーワードとして,多角的な情報を集約した内容になっている.
本書に目を通していただく皆様にとって,日常生活活動に結びつく理学療法を実践するうえで,筋持久力に関する理学療法を再考するキッカケを提供する一冊になることと期待している.
本テーマの編集にあたって,西九州大学の管原正志先生には多大なご支援・ご協力をいただいた.この場をもって厚く感謝の意を申し上げたい.
2023年5月
ゲスト編集 横山茂樹
1 筋持久力増強運動とは
2 筋持久力増強運動と筋(骨格)系
3 筋持久力増強運動と神経系
MINI LECTURE 電気治療機器を利用した筋持久力増強運動
4 筋持久力増強運動と循環系
MINI LECTURE 加圧トレーニングによる筋持久力増強運動
PARTⅡ 筋持久力の評価
1 筋出力を指標とした評価法
2 筋活動を指標とした評価法
3 筋血流を指標とした評価法
4 パフォーマンスを指標とした評価法
MINI LECTURE 筋持久力増強運動と疼痛
PARTⅢ 筋持久力増強運動の方法論
1 単関節運動における筋持久力増強運動
MINI LECTURE 筋持久力増強運動と疲労
2 多関節運動における筋持久力増強運動
MINI LECTURE スロートレーニングによる筋持久力増強運動
PARTⅣ 部位別の筋持久力増強運動
1 肩関節における筋持久力増強運動
2 体幹における筋持久力増強運動
MINI LECTURE 筋持久力増強運動と姿勢
3 股関節における筋持久力増強運動
4 膝関節における筋持久力増強運動
5 足関節における筋持久力増強運動
PARTⅤ ライフサイクルにおける筋持久力増強運動
1 青少年者を対象とした筋持久力増強運動
MINI LECTURE ランニングによる筋持久力増強運動
2 虚弱高齢者を対象とした筋持久力増強運動
MINI LECTURE 筋持久力増強運動と認知機能
3 妊産婦を対象とした筋持久力増強運動
MINI LECTURE 水中運動による筋持久力増強運動
索 引