医療系学生向け生理学教科書の定本,5年ぶりの大改訂!
生理学テキスト第9版
内容
序文
主要目次
本書は,初版の序に記したように,容易に通読できるわかりやすい教科書として出版されている.これまで3年から5年毎に改訂されてきたが,第9版は第8版発行後6年目の改訂となったので新しい知見が多い.また内容の全面的な見直しも行った.
冒頭の1章は一般生理学General Physiologyの章である.入門的に,ホメオスタシス,細胞の構造,信号伝達などを説明した.本書で最初に目を通してもらいたい章である.2章は興奮すなわち活動電位とそれをもたらす(イオン)チャネルについての章である.興奮はダイナミックで複雑である.チャネル開閉の機序やチャネルの種類についても学ぶ.チャネルは感覚,脳やホメオスタシスにも関係し,ほとんどすべての章の機能にあずかる.3章の骨格筋の収縮では収縮のメカニズムを学ぶ.この収縮機序には平滑筋とも共通点がある.4章 シナプス伝達ではニューロン間の情報伝達の基礎を学ぶ.5章 自律神経系では新図を作成しこの系の構成や役割をわかりやすくした.6章 運動系は第8版と同様に種々の神経系を含む大きな章であり,それに倣って7章に感覚機能をすべてまとめた.8章 脳の統合機能は大きな章で複雑であるため,理解しやすいように新図を作成し,記述順序を変えた.
9章 血液では赤血球だけでなく免疫を含む白血球の機能も扱っている.10章 心臓の電気現象にはチャネルが関与する.11章 循環では循環系のマクロな機能と平滑筋の収縮・弛緩の制御をもたらす多くの調節機序を学ぶ.12章 呼吸では呼吸のマクロな機能,気管支収縮の調節や肺胞機能を学ぶ.13章 消化と吸収では消化運動の調節や栄養素の分解を学ぶ.14章 内分泌では内分泌腺の構造や機能とホルモンの作用を学ぶ.15章 生殖は14章と密接に関連している.16章 腎機能も大きな章である.腎臓は多数の細胞が直列に結合されたネフロンから構成され,ネフロンの機能からその集合である腎臓の機能が説明される.17章は日常の生理学で,ここには体温調節,概日リズムやトレーニングなど多くの項目を並べた.
新しい内容を取り入れながら全体のページ数を増やさないように,前版から削除した項目もある.復活は可能であるが,9版はこれで出発する.最後に改訂で大変お世話になった文光堂編集企画部の山口由美子さん,制作担当の和田建さんに感謝します.
2022年10月
大地陸男
1.細胞の環境
2.細胞の構造と構造機能相関
3.細胞膜を通過する物質移動
4.細胞機能調節のメカニズム
5.遅い時間経過の調節
2章 活動電位およびイオンチャネル
1.刺激と興奮
2.膜電位
3.興奮発生と膜電流
4.興奮伝導
5.イオンチャネルの構造と機能
3章 骨格筋の収縮
1.骨格筋の種類と構造
2.筋線維の構造
3.筋収縮
4.興奮収縮連関
5.筋収縮力学
6.筋のエネルギー発生
7.骨格筋の分類:速筋と遅筋
4章 シナプス伝達
1.神経筋伝達
2.中枢神経系のシナプス伝達
3.神経伝達物質
4.中枢のシナプス伝達
5.シナプス伝達の可塑性
5章 自律神経系
1.自律神経系の構成と作用
2.自律神経系の受容体
6章 運動系
1.脊 髄
2.脳 幹
3.小 脳
4.大脳基底核
5.大脳皮質
7章 感覚系
1.体性感覚
2.味 覚
3.嗅 覚
4.聴 覚
5.前庭感覚
6.視 覚
8章 脳の統合機能
1.大脳皮質の構造と機能
2.大脳辺縁系と視床下部
3.上行性覚醒系
4.睡眠と覚醒
5.脳 波
6.学習と記憶
9章 血 液
Ⅰ.血漿および血漿タンパク質
1.アルブミン
2.グロブリン
Ⅱ.赤血球
1.赤血球の数,容積,Hb量
2.赤血球の産生
3.赤血球形成に必要なビタミン
4.ヘモグロビンの構造と機能
5.溶 血
6.ビリルビンの生成と排出
7.鉄代謝
Ⅲ.白血球
1.白血球の種類
2.白血球の産生
3.好中球とマクロファージの働き
4.免 疫
Ⅳ.血液型
1.ABO式血液型
2.Rh式血液型
3.輸 血
Ⅴ.血小板による止血
1.血小板の起源,形態,数
2.血小板血栓の形成
Ⅵ.血液凝固
1.血液凝固機序
2.凝固阻止作用
3.血友病
4.線維素溶解
10章 心 臓
1.心臓の構造
2.心臓内興奮伝播と自動性
3.心筋細胞の膜電位
4.心筋細胞の膜電流
5.自律神経による調節
6.心臓の異常電気活動
7.心電図
8.心筋の収縮
9.心臓の収縮
11章 循 環
1.全身各部の血流量
2.血管系の機能的区分
3.血行力学
4.静脈還流
5.動脈血圧
6.微小循環
7.血管平滑筋
8.循環調節
9.特殊部位の循環
10.リンパ循環
12章 呼 吸
1.肺の構造
2.気道の機能
3.呼吸運動
4.肺容量
5.呼吸力学
6.肺のガス交換
7.換気と血流の適合
8.血液による呼吸ガスの運搬
9.呼吸運動の調節
13章 消化と吸収
1.消化管の構造と神経支配
2.消化管のペプチド性修飾物質
3.消化管の運動
4.消化液の分泌
5.食物の消化と吸収
14章 内分泌
1.ホルモン
2.ホルモンの生成と放出
3.ホルモンの作用機序
4.視床下部による内分泌制御
5.下垂体
6.松果体
7.副腎髄質と副腎皮質
8.甲状腺
9.膵臓の内分泌機能
10.カルシウムおよび骨の生理学
11.性ホルモン
15章 生 殖
1.性の分化と発達
2.男性生殖生理
3.女性生殖生理
16章 腎機能
1.腎臓の機能的構造
2.糸球体濾過の機序
3.クリアランスによる腎機能の評価
4.尿細管における再吸収と分泌
5.尿の濃縮と希釈
6.体液の浸透圧・量および組成の調節
7.排 尿
8.酸塩基平衡
17章 日常の生理学:代謝,体温,運動
Ⅰ.栄養素の代謝
1.栄養素の摂取
2.栄養素の物質代謝
Ⅱ.エネルギー代謝
1.エネルギーの単位
2.エネルギー平衡
3.熱量測定
4.呼吸商
5.代謝率
Ⅲ.体 温
1.体温の分布と周期的変化
2.熱放散
3.熱産生
Ⅳ.サーカディアンリズム
1.サーカディアンリズムと光
2.生物時計の分子メカニズム
3.時計遺伝子と物質代謝および代謝性疾患
Ⅴ.運動の生理学
1.運動と筋肉
2.運動時人体機能
索 引