アルコール性肝障害診療のポイントを具体的・実践的にまとめた全臨床医向けのガイドブック!
アルコール性肝障害(アルコール関連肝疾患)診療ガイド2022
内容
序文
主要目次
肝硬変や肝癌の背景疾患として,非ウイルス性肝疾患の頻度が急増しています.そのなかで最多のものがアルコール性肝障害です.日本人のアルコール消費量は漸減しているというデータもありますが,残念ながら肝疾患という疾患ベースでみるとアルコールによる臓器障害は増加しているといえます.
日本肝臓学会では,これまでにウイルス肝炎,肝硬変,肝癌,非アルコール性脂肪性肝疾患などに関する診療ガイドラインや診療ガイドを出版し,疾患の啓発や診療の標準化に努めてまいりました.此度,非ウイルス性肝疾患のなかで最も疾患ボリュームの大きいアルコール性肝障害を取り上げ,診療ガイドを発刊することになりました.疾患概念から,疫学,病態生理,診断/治療にいたるまで,包括的で最新の情報を盛り込んでいます.
アルコール性肝障害の患者さんの発生や疾患の進行を抑制し,そして患者さんの生活の質を向上させ,アルコールによる肝疾患関連死を抑制していくためには,アルコール性肝障害をよく理解し,その診断/治療に精通することが必要です.
本書が,日本のアルコール性肝障害の診療の一助になることを祈念しております.
2022年10月吉日
一般社団法人日本肝臓学会理事長
竹原徹郎
1. アルコールによる健康被害と肝障害
2. アルコール依存症とアルコール使用障害─その概念と診断
[1]アルコール依存症の概念
[2]アルコール依存症の診断
[3]アルコール依存症とアルコール使用障害の概念の相違と問題点
3. わが国におけるアルコール性肝障害(ALD)の診断基準─その変遷と現状
4. ALDの病型分類と進展様式
5. 重症アルコール性肝炎の問題
6. ALDの概念の国際動向
7. ALDと非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
8. 飲酒量低減治療とハームリダクション
第2章 疫学的側面
1. わが国のアルコール消費の実態
2. わが国のアルコール使用障害の実態
3. アルコール性肝障害(ALD)の国際的動向とわが国における実態
4. ALDの予後
第3章 病態生理
1. 概論
2. 肝細胞障害機序
[1]肝細胞におけるエタノール代謝とミトコンドリア障害
[2]酸化ストレスや小胞体(ER)ストレスを介した肝細胞死
[3]腸内細菌叢の肝細胞障害への関与
[4]肝微小循環障害の肝細胞障害への関与
3. 肝細胞内脂肪滴貯留機序
4. 肝線維化進展機序
5. 肝発癌機序
6. 炎症による他臓器を介した肝臓との連関
7. アルコール性肝障害(ALD)と性差
第4章 診断
1. 病理診断(肝生検)
[1]肝生検
[2]病理所見
2. 臨床診断(バイオマーカー・非侵襲的診断の活用)
[1]飲酒マーカー
[2]肝線維化マーカー
[3]重症度スコア
第5章 マネジメント・治療
1. 脂肪肝・脂肪肝炎への対応
[1]代謝異常の頻度
[2]肥満
[3]糖尿病
2. 重症アルコール性肝炎,acute-on-chronic liver failure(ACLF)の治療
[1]治療の概要
[2]内科的治療の各論
[3]全国集計からみた治療の実態
3. アルコール性肝硬変のマネジメント
[1]栄養サポート
[2]合併症対策
4. アルコール性肝癌の対策
5. 非代償性肝硬変,アルコール性肝炎/ACLF,肝細胞癌合併例に対する肝移植
[1]アルコール性の非代償性肝硬変
[2]重症アルコール性肝炎/ACLF
[3]肝細胞癌合併例
6. 臓器障害に対する断酒と飲酒量低減治療
[1]アルコール関連臓器障害に対する断酒
[2]アルコール関連臓器障害に対する飲酒量低減治療