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言語聴覚療法の土台と魅力を楽しく深く学べる!

新刊

言語聴覚障害学

言語聴覚療法のサイエンス&アート

  • 編集:吉畑博代(上智大学教授)
  • 編集 中村 光(岡山県立大学教授)
  • B5判・224頁
  • ISBN 978-4-8306-4717-8
  • 2025年3月18日発行
定価 3,850 円 (本体 3,500円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

言語聴覚療法は,科学的根拠のサイエンスと,柔軟に対応するアートの部分を併せ持つ.双方を学ぶための基礎知識(成り立ちや構成,身体的・社会的発達など)やコミュニケーション障害とリハビリテーションなどを取り上げた.単なる知識の羅列でなく,STの魅力ややりがいについても記述.Ⅲ章内の「印象に残る患者さん」やコラムでは,実際の臨床場面などにも触れられる.学生や若いSTのほか,PT・OTにも活用できる一冊.
序 文

 言語聴覚障害学およびその臨床(言語聴覚療法)では,サイエンスとアートの両方が求められます.エビデンスのある知識や情報をもとに,言語聴覚士の誰もが同じように,科学的根拠のある臨床を行うことが重要です.ですが,言語聴覚士が関わるのは,様々な問題や困りごとを抱えるコミュニケーション障害がある「個人」です.コミュニケーション障害児者の症状は多様ですし,その時々の反応も異なります.また生活歴や人生,ニーズや価値観も人それぞれです.したがって言語聴覚士には,コミュニケーション障害児者の様子をみて,想像力を発揮して,即座に柔軟に対応するといったアートの部分も必要です.このような考えのもとで,「言語聴覚障害学-言語聴覚療法のサイエンス&アート」というタイトルをつけて,この度,本書の出版に至りました.
 私たちが普段何気なく行っているコミュニケーションが障害されると,社会生活にどのような影響があるのでしょうか.例えば,子どもたちが何気なく行っている挨拶には,表情や身振りとともに,ことばが用いられています.学校の授業でも,話しことばや書きことばが重要な役割を果たしています.職場では色々な経験や知識をもとに,様々なことばを使って仕事が進められています.このように社会生活を送るにあたって,ことばは不可欠です.常にそばにあることばが障害されると,ことばそのものの問題だけでなく,心理面の問題も生じ,社会参加にも甚大な影響がもたらされます.言語聴覚士は,コミュニケーション障害児者のことばへの支援や,必要に応じてことばの土台となる認知機能への支援を行います.加えて,多職種でチームを組んで,心理的な問題や社会参加の問題に対応することも必要です.
 言語聴覚士には,上述したように幅広い知識が求められ,言語聴覚士養成校のカリキュラムは密になっています.ですが,言語聴覚士としてコミュニケーション障害児者と関わると,ことばの不思議さ,人がもっている潜在的な力,回復力,たくましさを実感します.コミュニケーション障害児者を支援するというよりも,コミュニケーション障害児者から教わることの方が多いかもしれません.言語聴覚士の仕事は,このようにとても魅力的です.
 本書は主に,言語聴覚士養成校の学生の皆様に,授業の教科書や副読本として活用していただくことを目的としました.構成としては,「Ⅰ章 ことばとは」,「Ⅱ章 ことばの成り立ちと障害―基礎編―」,「Ⅲ章 ことばの障害とリハビリテーション―応用編―」という3つの章立てにしました.また,実際の臨床場面や最新のトピックを知ってもらうために,多くの「コラム」を設けました.
 本書の出版にあたっては,その一部に「福迫基金」を使用しました.「福迫基金」とは,故福迫陽子先生のご遺族からのご厚志である基金です.故福迫陽子先生(元東京大学医学部音声言語医学研究施設助教授)は,日本における言語聴覚障害学発展の種を蒔かれたお一人です.福迫先生は,ご自身の研究や臨床に取り組むかたわら,この分野での優れた臨床研究家の育成や研究支援が必要とお考えになっていました.そのような場として,「言語障害臨床学術研究会(言臨研)」を発案され,1991年に第1回言臨研が行われました.言臨研は,福迫先生が逝去された後も,「福迫基金」を活用して,日本の言語聴覚障害学の発展に寄与してきました.そのようななか,1997年に言語聴覚士法が制定され,その後,言語聴覚士の養成校が増え,研究発表を行う場が整備されてきたことなどにより,言臨研は 2017年に解散することにしました.
 言臨研の解散にあたっては,活動の成果を何らかの形で残したいという思いから,当時の実行委員で議論・検討を重ねました.その結果,言語聴覚士の資質を高め,視野を広げることに役立つような書籍を作成することが望ましいという判断に至りました.言語聴覚士という専門的な仕事にチャレンジしようとする若い人たちを勇気づけるような書籍にするという考えのもとで,「福迫基金」の一部を使用しての出版が具体化しました.
 執筆者の方々には,図表を多用して,読みやすい記述にすること,言語聴覚障害領域の魅力や不思議さが伝わるような内容にすることをお願いし,ご快諾いただきました.執筆者の皆様,素晴らしい原稿をお寄せいただき,誠にありがとうございました.また文光堂編集企画部の山口由美子さんには,仕事が滞りがちな私の背中を押していただきました.皆様のご協力のもと,本書を完成させることができました.
 ぜひ,本書を手に取っていただき,言語聴覚障害学および言語聴覚療法の魅力や奥深さを知っていただければと思います.

 2025年2月
 吉畑 博代
Ⅰ章 ことばとは
 1 ことばとコミュニケーション
 2 ことばの発達
 3 ことばとからだ(1)聴 覚
 4 ことばとからだ(2)発声発語
 5 ことばと脳

Ⅱ章 ことばの成り立ちと障害―基礎編―
 1 ことばのかたち
 2 ことばと語用
 3 障害のとらえ方
 4 ことばの障害の見方

Ⅲ章 ことばの障害とリハビリテーション―応用編―
 1 聞こえの障害とリハビリテーション
 2 話すことの障害とリハビリテーション
 3 ことばの障害(子ども)とリハビリテーション
 4 ことばの障害(成人)とリハビリテーション
 5 食べることの障害とリハビリテーション
 6 多職種連携とチーム医療

索引

コラム
 ■A:言語聴覚障害学の歴史と発展
 A-1 言語聴覚障害学と言語聴覚士の歴史と発展
 A-2 世界の言語聴覚障害学
 A-3 IALP参加記
 ■B:言語の構造
 B-1 言語の構造-音声-
 B-2 言語の構造-音韻-
 B-3 言語の構造-統辞法-
 ■C:言語聴覚障害学の広がり
 C-1 これからの言語聴覚障害学-聴覚障害-
 C-2 これからの言語聴覚障害学-言語障害-
 C-3 これからの言語聴覚障害学-摂食嚥下障害-
 C-4 言語聴覚士とAI
 ■D:当事者の視点と言語聴覚士との関わり
 D-1 聞こえの障害と私
 D-2 限局性学習症(発達性ディスレクシア)のあるお子さんと
 D-3 夫は多言語失語症