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肩関節疾患は画像診断ではわからない!? 本書を読めば,診療,診断がシンプルにできるようになること間違いなし!

新刊

シンプル思考で診る肩

4つの安定化機構から考える

  • 著:西中直也(昭和大学大学院教授)
  • B5判・184頁・4色刷
  • ISBN 978-4-8306-2777-4
  • 2024年5月17日発行
定価 5,720 円 (本体 5,200円 + 税10%)
あり
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内容

序文

主要目次

肩関節疾患の代表である五十肩はレントゲン,MRI,超音波でも明らかな所見が見つけられないことも多い.症状がいくら激烈でも客観的データである画像に表れないことがあり,多くの整形外科医が苦手意識を持つ要因となっている.本書では,肩甲骨関節窩と上腕骨頭の関係性を常に良好に保つための4つの安定化機構の仕組みを読み解きながら,診療,診断方針を単純明快に理解できるようになることを目指す.

◉本書では一部の画像・写真にQRコードを配置しております.QRコードから,画像・写真の関連動画を閲覧いただけます.
 例)p23,図4 肩関節外転抵抗運動時の肩甲骨運動(左肩:健常側)
はじめに 本書への思い

 肩関節疾患は多くの整形外科医,特に卒後間もない経験年数の浅い医師から,診療が難しい,苦手だ,という声がよく聞かれます.理由は,症状がいくら激烈でも客観的データである画像に何も表れないことがあるからと考えられます.実際,いわゆる四十肩,五十肩である肩関節周囲炎では,レントゲンでもMRIでも超音波でも何ら明らかな所見が見つけられないことがほとんどでしょう(実際はわかりますが).そんな肩関節疾患の診断と治療が苦手な医師をはじめとした医療従事者に肩関節が身近になり,診察,診断そして治療方針までも単純明快シンプルになることを目指して本書を執筆しようとしたのが始まりでした.
 しかし,肩関節疾患に関わる人は医療従事者だけではありません.医療従事者のほか,野球をはじめとしたスポーツの指導者,選手や肩痛に悩む患者さんまでも含めた肩関節治療に関わることになったすべての人に向けて本書を執筆すると決めました.画像,イラストや表を多く使い,表現も医学専門用語は最低限にする,あるいは用語を解説するようにし,くだけたわかりやすい表現としました.索引を多くして,読者のストレスを減らすようにもしました.肩関節を身近に感じ,興味深い関節であることを伝えるのが本書の目的です.
 肩関節は肩甲骨関節窩と上腕骨頭との関係が,いつでもどんなときでもよくないといけません.関係性がよければ,お互いを刺激し傷つけ合うことがありません.それだけです.実にシンプルなことなのです.よい関係とは,神様がくれた見事なまでに完璧な骨同士の適合性を保つことです.この適合性が保たれていれば,人生を終えるまで肩の痛みに悩まされることはないといっても過言ではありません.肩甲骨と上腕骨は,夫婦や恋人同士といった人間関係によく似ています.両者の関係は調子のいいときは常に完璧,しかし常に不安定な状態に陥る可能性をもっています.しかも,いとも簡単に.
 そこで,両者の関係を良好に保つ何かが必要.それが本書で紹介している4つの安定化機構なのです.肩関節の安定化機構が機能していれば肩甲骨と上腕骨は良好な関係を保ち,それによって人体で最も可動域を有する機能を大いに発揮することができるのです.逆に4つの安定化機構のうちいずれか一つでも破綻してしまえば,両者は悪い意味で刺激し合い,お互いを傷つけてしまう関係に変貌してしまいます.様々な組織損傷,病態を引き起こすのです.4つの安定化機構を考えることで肩関節疾患の診察,診断そして治療は実にシンプルになり,そして治療がうまくいくことで患者さんから最高の笑顔を引き出すことができるのです.本書を読むことで,肩関節疾患に向き合うことが苦手から逆に簡単に,そして楽しくなってくるはずです.

 令和6年4月吉日
 西中直也
第1章 肩関節の特徴
 1.特徴1.肩関節は浮遊関節
 2.特徴2.肩関節は複合関節
 3.特徴3.肩関節機能は体幹との共同作業
  Column 1 肩に優しいrestingポジショニング

第2章 肩関節の安定化機構
 1.第1の安定化機構:静的安定化機構
 2.第2の安定化機構:動的安定化機構
 3.第3の安定化機構:肩甲胸郭関節による安定化機構
 4.第4の安定化機構:メカノレセプターの寄与

第3章 肩関節を障害に導く諸悪の根源─肩甲骨の異常運動─
 1.健常肩がもつ最高の肩甲上腕リズム
 2.肩甲骨の異常運動はscapula reverse,シュラッグ,scapula wing
 3.実際の健常肩の肩甲骨機能と障害肩の肩甲骨異常運動
 4.徒手抵抗テストの意義と有用性
 5.テストの結果として観察される肩甲骨異常運動
 6.肩関節は肩以外の体幹からの影響を多大に受ける
 7.諸悪の根源の対処法
  Column 2 肩の外見は一緒でも中身は千差万別
  Column 3 肩こりもちはシュラッグもち

第4章 安定化機構の破綻による病態,代表的疾患
 1.肩峰下インピンジメント
  Column 4 上腕骨頭の前上方偏位
 2. 五十肩
  Column 5 腱板疎部・腱板疎部損傷という言葉はもう使わない?
  Column 6 腱板疎部の拘縮は,徒手授動術では対処不能
 3.腱板断裂
  Column 7 Keegan麻痺がたくさん紹介されてくる
  Column 8 術後腱板断裂が起こるとき
 4.リバース型人工肩関節置換術
 5.上方関節包再建術
 6.投球障害肩
  Column 9 投球すれば関節内インピンジメントは当たり前?
 7.肩関節脱臼
  Column 10 てんかん発作による脱臼のすさまじさ
 8.多方向性肩関節不安定症
 9.肩鎖関節脱臼
 10.石灰性腱炎
 11.胸郭出口症候群

第5章 肩関節の画像診断─画像所見に乏しい肩関節.解剖学的損傷診断とともに機能診断が重要─
 1.レントゲン
 2.MRI
 3.MR関節造影(MRA)

第6章 肩関節リハビリテーション
 1.リハビリテーションプロトコール
 2.リハビリテーションの実際
  Column 11 肩はなぜ夜間に痛いのか⁉
 各病態に対する徒手検査法
 1.肩甲骨(肩甲胸郭関節)機能不全・腱板機能不全のテスト(第3章4)
 2.肩峰下インピンジメントのテスト(第4章1)
 3.関節内インピンジメント・投球障害肩のテスト(第4章6)
 4.不安定性・動揺性のテスト(第4章7,8)
 5.肩鎖関節脱臼のテスト(第4章9)
 6.胸郭出口症候群のテスト(第4章11)
 肩の基本的な動き
 1.肩甲骨の基本的な動き.肩鎖関節,胸鎖関節とともに上腕骨と共同作業で10の動きで人体最大の可動域を実現
 2.(広義の)肩関節の基本的な動き.肩甲骨のおかげで9つの動きを実現

略語一覧
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